あなたは変わらないわね
松下友香さんの企画『あなたが言われて嬉しい言葉は何ですか』に応募します。
子どもたちが幼稚園に通っていたころ使っていたバス停の近くに、品の良いおばさまの家があります。猫二匹と一人で暮らしています。
お庭がとても素敵です。広くはないけれど、季節ごとに水仙や牡丹が咲いて、金木犀が香り、紅葉が色付きます。
朝のバスの時間はちょうどゴミ出しと重なるので、おばさまと毎日のように言葉を交わしました。
日本舞踊をされているおばさまは、淡い色の軽自動車を乗り継いでいました。新車で買って車検で乗り換えて。
この15年くらいの間に、おばさまも私も家族を亡くし、お互いに少しだけ、もらい涙をしました。
最近は、飼い猫と庭に出ているところによく会います。
「もう子どもたちも大きいでしょ。」
「上の子は高校生です。」
「まあ、早いわね。バス停を見ると小さかった子どもたちを思い出すのよ。あなたは変わらないわね。」
「マスクでうまく隠れてるからね。」
「うふふ。あたしもうすぐ90よ。立ったり座ったりがけっこう大変。」
90才!おばさまはいつも背筋が伸びていて、10才以上若くみえます。年齢のことを話すことがありませんでした。
でも、そういえば、ずいぶん前に車を降りて、日本舞踊も引退されていたのでした。
「でもね、猫を散歩させたり、ご飯あげたり、けっこう忙しいんだから。じゃあ、またね。」
そんな可愛いおばさまに
「あなたは変わらないわね」
と言われたのが、うれしかったです。
マスクをしていたからだとしても。
松下さん、はじめまして。
企画をありがとうございます。
よろしくお願いいたします。