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天然で悪女の手法を使った話

好きな人がいた。

当時の大学生の嗜み、mixi。
ある日、わたしの日記に見ず知らずの人からコメントがついた。

それがきっかけで真斗とオンラインで数年『マイミク』として
仲良くしていた。

真斗は味のある文章を書くマイミクだった。

noteやるくらいには文章から出てくるものが好きなわたしだ。
真斗に惹かれるのにそう時間はかからなかった。

お互い東京の大学生。
オフ会と言って会おうと思えばすぐに会えたので、会った。

もうその時点で、好きだった。

そしてさらに少しの間、片思いしながら
わたしたちは時々"オフ会"していた。

…そんな初々しい時期は過ぎ。
わたしは在学中に発症した鬱で取り損なった単位を取るための
半年間の留年を終えて卒業し、実家で療養をしていた。

その後わたしが意を決して真斗に告白して、玉砕するのだが
なんと真斗は東京から車で片道一時間ちょっとかかる実家のあたりまで来たのだった。
東京オフ会時代からわたしたちは早朝や深夜にぷらぷらするのが好きだったので
振られた日に振った真斗が来たのもド早朝で、真斗の運転するレンタカーに乗り
わたしが道案内しながら適当な公園に車を停めた。

そこで少し話をした。他愛もない話だったか、付き合えない理由だったか
そんなのは忘れた。
だって。

「杏子さんに出会えてよかった」と真斗がわたしにキスをしたから。

振っておいてキスするなんてどうかしてる。
今ならそう思ってビンタの一発でも喰らわせてるんだけど
当時のわたしにそんな力も発想もなかった。

そしてまんまとわたしはホテルに真斗を案内していて、
そこでわたしたちはセックスをした。

これがセフレ杏子誕生の瞬間である。

セフレとして彼と過ごすのも楽しかった。
もともと好きな人だし、体の相性も良かった。
所謂ソフトマッチョで、見ていると幸せな気分になった。

それに、ただホテルでセックスしてはい終わり、
じゃなかったから。普通に手を繋いで街を歩いたり
おしゃれなカフェに連れて行ってくれたり
旅行が好きな真斗は一緒に旅行したりもしてくれてた。

わたしは束縛もなくて、でもいちゃいちゃしたりできる
そのセフレのポジションが気に入ってしまった。

ただセフレ生活も3年とか続いちゃって、
「杏子もいい加減彼氏作れよ」とか言われることも増えてきた。
「そーじゃないと俺も彼女作れんし」と真斗は言った。
「真斗くんならすぐ彼女できると思うからご自由にどうぞ?」というけど
「そしたら杏子傷つくくせに」とからかう。

どこまでも馬鹿で素直な当時のわたしは、ああそうかと
どこの馬の骨かわからんような野郎にあっさり乗り換えることにしたのだ。
そいつは名前も覚えてない。顔もほとんど覚えてない。
やはりオンラインで知り合って、杏子に好意に見える下心を持って
近寄ってきた男だった。
杏子はまぁ付き合ってみればいっか、というセフレ生活で麻痺した感性で
簡単にその男と付き合うことを決めたのだった。

そして嬉々として真斗に報告した。
「真斗くん!彼氏できたよ!やっと!」

真斗は「へぇー!マジか。どんな奴なの?」と興味津々に聞いてくる。

そして詳細を話す。好意を寄せられていて、実際に会って
カラオケに行った。そこでいちゃいちゃした、と。
悪い気はしなかったから付き合うことにした、と。


数日後。
真斗が言う。「杏子。これ言うかすげぇ悩んだけど」

「その新しい彼氏は、俺が言うのもなんだけど、正直体目当てだ」
「杏子に彼氏ができて良かったはずなのに、バイトにも身が入らなくて
杏子のことばっか考えてんだ、俺。」
「呆れられるかもしれないけど、杏子。」

「俺と付き合ってくれませんか」


これがわたしが振られた女からセフレになり、
セフレから彼女に昇格した話だ。

尽くしちゃうタイプだったわたしは、セフレ期間中も
ここぞとばかりにおもてなしをしていた。

それを急に、自分より明らかにスペックの劣る相手に取られた。

ここで形勢逆転したんだろうと思う。

セフレ沼にハマってる女の子はセックスのあとにさっさと服を着て
別に気持ちよくなかったなー次探そうかなーみたいな空気で
サクッと帰ると相手が追いかけてくる。

みたいなコラムを読んだことがあるけれど。

あながち間違いじゃないなぁと感じる。

いやぁ。わたしも大抵クズいけど、真斗はクズofクズだな。苦笑


倍にして返すくらいの文章を書くよ!!!!!