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ゆてらじぷれぜんつ vol.0『どらまちっくりーでぃんぐ』を見て

みなさんこんにちは。
noteでは随分とお久しぶりです。

今回はゆてらじぷれぜんつ vo.0『どらまちっくりーでぃんぐ』を見た感想を書いていきたいと思います。

今回の会場はS.H.P. OTOWA FAB STUDIOさん。
倉庫をリノベしたクリエイターさんが利用できる設備を備えたコワーキングスペースとのことで、なんだか今の自分の仕事にも関係そうな場所だなと、別の意味でも興味津々で伺いました。
中に入ると雰囲気のある家具でいっぱいのスペースで、どこに座ろうか迷ってしまいそうでした。※S.H.Pさんでは北欧家具の販売もしているようです

物販ブースではおなじみのおじさんたちが・・・!
なんだかんだで生おじさんずはお初です。
Patyさんにはすぐ気づかれたようですが、他の面子にはちょっとだけ驚かれました。だいぶ感激でここの心情描写だけでおそろしい文量になりそうですが、今回記事の趣旨が違うので割愛します。企画の缶バッジ5個セットを買いました。

ゆえさんにオラオラ営業されて不覚にもきゅん♥としてしまい5個セットの方で購入


・・・で、ペリエをもらい(ワンドリンク制だったので)いざ観劇!
オープニングトークでPatyさんゆえさんのからみからスタート。
この2人の技量がものすんごいことはボイコネ時代から知ってはいたのですが、ここでも「うわー、すげー」ってまたなりました。
話が自然で超聞きやすい。
50人キャパぐらいの小演劇会場での適切な発声ってちょっと特殊だと思っていて、単純に響かせ方を知っていればいいとか声量があればいいというわけでなく、”この広さぐらいだとこんな響かせ方”の中途半端さが求められると考えています。それの最適を出してそうな感じ。
というわけでめっちゃ期待のハードルが上がりました。
やっぱ生Patyさんにゆえさんすごい。。。

客席側から見て右奥が入口ドア、右横に音響PA。ダクトレールの照明がいくつかあるなか、謎の照明?かわからない機械がひとつ。。。たぶん「朗読劇」ではそこまで照明効果を使わないだろうなと(役者がちらつきで文字を追えなくなるので自分が演出するならしない)思いつつ開演。

第一幕 スコーピオ

ダニエル役:ゆえさん
マーク役:えばらさん
ジョージ役:ねすとさん
エリザ役:北 夏央里さん

最初に演じられた作品は09-No.氏の脚本「スコーピオ」です。
ボイコネ時代から結構な人気があり、僕も何度か演じたことのある作品でしたのでどんな風に演じられるかとても楽しみです。

文字だけだと見づらいかなと思い昔作った画像をなんとくなく貼っただけで特に意味はない↑

洋画風の雰囲気が漂うこの作品ですが、序盤から北さん演じるエリザの険しい表情が緊迫感を引き立てます。そしてえばらさんが演じるマークは追い込まれている、仕方なくこんな状況になっている、という優しい犯人な印象。
2人のかけあいはじっくり時間を使っているイメージ。動きがない中で聞かせる、というのはすごく難しいと思うのですが、聞かせるのがうまい。
そして、交渉人登場。ダニエル役のゆえさん、とても自然な演技。間のとり方や食って入る感じ、電話でのやりとりなど、全てシュチュエーションにわけて変化をつけていて、経験が活かす技だなと感激です。シナリオを知っているからこそ気になるダニエルの人間性については”ニュートラル”な感じで、何が大事なのか、とか、実は裏があるんじゃないか、などのニュアンスもほとんど入っていない、ほんとのほんとに癖がないニュートラルな感じ。演出でねらっているとしたら他の役者さん含め、バランスがすごくいいなと思いました。
さらにねすとさん登場。不良ねすと氏・人外ねすと氏を彷彿とさせるちょっと怖いverねすとさん。声量つよつよで圧もごりごりです。逆にそれをスルーではなく、押し返すのでもなくうまくちょっと受けつつちゃんとかけあいにしてやりとりできる交渉人がまさに”交渉人”という感じ。
そして中盤から事実の告白やマークの人柄などもあり、エリザが徐々にストックホルム症候群の様相を見せ始めます。ここの切り替えが声だけだととても難しい台本だと思う(1箇所しか気持ちの切り替えポイントがなくて、台詞にはあらわれてないのかな、と思っています)のですが、そこでのエリザの一瞬の表情のゆるみ、がでていて、「おぉ」となりました。
最後の謎解きパートでは悪ねすと氏がご乱心です。ご乱心といえばねすと・ねすとといえばご乱心ということで、安心のご乱心でした。安心のご乱心って安らいでいるのか乱れているのかよく分からないですが、めっちゃねすとさんっぽいからいいとしましょう。声量ももちろんですが、表情もめっっちゃ迫力がありました。そこに交渉人がうまくハマっていくところもうまいところです。絶妙です。交渉人に関しては匂わせがない(私が気づかなかっただけならごめんなさい)のが今回の演出のようで、そこも一貫していて、それぞれの役者さんのいいところが出ていていいなと感じました。
最終的にはマークからは焦燥、エリザからは決意、ジョージからは怨嗟のような強烈な感情が観客席に伝わっていたように思います。
…で、最後のネタバラシで、交渉人が実は署長側の人間だったという電話のやりとりがあり「ダニエルッ!? おそろしい子!」となるのですが、この最後の一台詞のみに濃縮された裏の顔のニュアンスが込められていて、ゆえさんすごいなぁと改めて感じた次第です。

今回、作者の09-No.氏が関わっている舞台ということで、もしかしたら演出プランにも若干関与しているのかなと気になりました。スコーピオの真実とは?という話です。「スコーピオ」はかなり僕もお気に入り台本だったのですが、それに関する考察をボイコネ時代にアーカイブ時間めいいっぱいしたことがありました。そのころ考察していたことが3つあったのですが、そのうちの1つに関して・・・「あれ?これはもしかして本当にありえるか?」とちょっと思ったことがあります。
ズバリ、”ダニエル=スナイパー説”です。スナイパー部隊の発砲に見せかけて確実にターゲットを葬り関係者を減らしつつ任務遂行するため、発砲突入時に警察部隊のスナイパーのしわざに見せかけて、実は裏のスナイパーであるダニエルが発砲に合わせてマークを撃ったのではないか、という妄想をしていました。なんとなくゆえさんの演じられたところを見ているとすべてがニュートラルでとらえどころがなく、感情があるところがどこかあったかなと思い返すと、計算だったのかな?とか考えてしまい、そういうのもありえるのかな?と再び思ってしまった次第です。生舞台だと情報量も多くなりますので、想像が広がりやすいのですが、この「スコーピオ」は考察していくと楽しいところがたくさんあるので観劇された方はいろんなところで感じたことや考えたことを深堀りしたりお話してみても楽しいと思います!

第二幕 Sunny Rain

ソラ役:Patyさん
レイン役:柚萌さん
紹介屋役:えばらさん

洋画風から若干ミステリ調の怪しい紹介屋が出てくるシーンが始まるSunny Rainに舞台が移りました。
先ほどは誠実そうだけれどちょっと優柔不断そうで気弱そうな青年を演じたえばらさんでしたが、一気に胡散臭い感じに・・・!一気に舞台の雰囲気も変わりました。レイン役の柚萌さんはオンライン上でのお芝居を拝見したことはあったのですが、お見かけしたどの感じとも違っていて、こんなこともできる方なのだと多才さに感動しました(かわいらしい役から落語などもやられていたと記憶していましたので)。
そしてソラ役を演じるPatyさん、もう完全に台本が入ってます。。。あれ〜朗読劇でしたよね?という感じだったんですが、演出のために覚えたのでしょうか?いや、多分これが”普通”なんでしょう。。。登場後の数個の台詞で宙に目が泳いでいる時点で、台詞より前に盲目の青年を演じているのかなというのがばっちり伝わりました。
その時点で感動してニコ・ロビンの「生ぎたい!!!」の顔でちょっと泣きます。積み重ねで研鑽された技術や表現を見てしまうとすぐに感動で泣いちゃう私ですが、とりあえずちゃんと準備してきたハンカチで涙を拭きつつ続きを見ていきます。
この作品はソラとレインの掛け合いが作品の大半なのですが、そのやりとりが本当に見事でした。それについて私が感じたことを書きます(長いけど書かせてくださいね!!!昔苦労した記憶があるから!!!)。
レインがコミュニケーションに難を抱えているか、もしくはギフテッド的なところで孤立しているとか、そんななにかではないかと勝手に想像していたのですが直上的で嘘があまり上手ではない、というところは感じました。後日”30万円の反省”が明るみに出るところも人物像や何不自由ない家庭でひとりっこの3人家族構成じゃないかな(あるいは歳が離れた問題を抱えていない兄がいる)とかそういうイメージにもなんとなく納得がいく解釈が持てそうな気がしてきいていました(これは多分、柚萌さんのお芝居のおかげで広がった視点かもしれません)。コミュニケーションが得意でない人や直情的な人を演じるって結構難しくて、リアルにやってしまうと台詞の入りやテンポが一辺倒になったり、単一の短い台詞の連続になることでながれてしまったり、これまたテンポが崩れたりするため、演出から指示やテコ入れが必要になったりします。
同様にソラのような”盲目の役”に関しても、シュチュエーションによってはテンポが一定になったり、視覚情報がないがためにワンテンポ遅れる台詞入りのシーンが出てくることがポイントで出てきますので、聞いている人が聞きやすい”間をつめる”ことや”話のテンポをつくる”というのが技術的に必要になってきます。芝居の+αだと思うこの部分が本当に見ていて楽しくて、特にソラの表情や、気付いたという首から上の動きや微細な反応で間をつめたりと変化を作っていて、こりゃすごいなぁとまたまた感動しました。客席が平面で後方に座っていたので、残念ながら直接舞台上を見ることは出来ませんでしたが、左横にあるガラスに映る姿が結構はっきり見えましたので音だけではなくそういったところも楽しむことができました。
朗読劇が音だけのコンテンツなのか、身体表現が入ってくるのかについては、僕は後者のほうが好みなので、この作品をより理解することが出来たように感じます。台本としても、告げない本来の名前やちょっと人情味あふれる紹介屋さん(別に対価をもっていくとかではない)とかもすごくハートフルなお話になっていて、当初はHolicみたいなのを想像していたなか、こんなに心温まる感動ストーリーになるとは思いませんでした

第三幕 壁の中の少女

紗麓役:北 夏央里さん
邦武役:ねすとさん
神保役:柚萌さん
千代田役:Patyさん
田端役:ゆえさん

休憩でおもしろMC(笑)がはいりまして最後の演目、「壁の中の少女」です。こちらも初めて耳にする作品でした。
学生の紗麓と邦武が楽しくコメディをするところから始まり、最後はねすとさんのコメディが生で聞けるのかと楽しみに聞いていましたら、完全なミステリー(微妙にホラーも)でした。紗麓役の北さんが後ほどXで”ストレートだとできない”という言葉でつぶやかれていましたが、紗麓ちゃんがかなり強烈なパワーを持つキャラクターですごく面白かったです!勢いだけで押していくかと思いきや結構変幻自在でキャラクターが本当に面白くて魅力的です。スコーピオとだいぶ役柄が変わっていたので面食らった方も多いのではないでしょうか。そして台詞外で小声のツッコミぼやきをしてしまう病気を患っているねすとさん。これがめちゃくちゃ見事(褒めています)でした。間を作りすぎず、小声でも舞台後ろまではっきり聞こえるという、技を駆使していました。エネルギー大きめのセリフを自分に当てられた時、その後の間を作りながらリアクションをするのがめちゃくちゃうまいんですよね。それを見ると見ている観客側も笑うか、息を飲んで次の笑いが来るための無音が一瞬できるんですが、そうなったときのぼやきだったり、反応のお芝居が唯一無二な役者さんです。声劇で聞かせていただいているときからすごいとおもっていましたが、生でそれを体感したのはそれ以上でした。お二人のコメディパート、本当に面白くて笑いました。
そして、神保と千代田の先生2人は終盤まで何を考えているか読めない雰囲気。千代田がなんかやっているんだろなーという雰囲気をガンガン出してくる言い回しが何度もあった(スコーピオのダニエルの”匂わせない演出”もあったので尚更)ので、これは千代田が全てを知っていて最終的に何かくだらないことが明かされて終わるコメディかなと見ていたら完全に予想を裏切られてしまいました。田端もなにか過去のことを知っていそうで優しそうないい人の雰囲気を出していたからというのもあるかもしれません。”予想を裏切られる”は創作に僕が求めていることのひとつで、それをこの日丁寧に体験できたのがとても嬉しかったです。
それから全体の雰囲気と別視点の感想なのですが、ちゃんとまとまっていて見やすかったなと改めて感じました。作風として真剣なシーンにちっちゃい笑いが入ってくるのが最近のサブカルチャーに多くなってきたように思います(人が死にそうなシーンで笑いに走る台詞が出たり、生死を問う戦いのシーンでギャグがあったりとか)。そういうところって静と動があって、冷静に整理すると同じシーンに真剣な人とギャグの人が混在しているんですよね。漫画やアニメ(声劇も)だとコマ割りなんかでどうにかなるのですが、舞台だとどうにもならないので、スポットがあたっている側に合わせていくしかないわけで。追い詰められていながら自責の念で贖罪の葛藤もある田端が1対4であの緊迫シーンを演じたのはなかなかすごいなと思って見ていました。ギャグでぶつ切りになった台詞をきちんと連続性を持たせて続いているように告白していったり、逆に、生徒先生側も、切り返しのアイデアや技をいろんなレパートリーで駆使されていて、こちらも全く飽きず、違和感なく見ることが出来ました。
笑いあり涙あり、どんでん返しありの良い作品でした。

そして、閉幕後に作者の09-No.さんと運良くお話する機会がありました(入場後にも少しお話していたのですがその時は全く気づかず💦)。今回提供台本がよく知るスコーピオのみだと思っていたら、3作品とも09-No.氏の脚本とのことで、様々なジャンルを書かれていることに驚きました。同じ脚本でも演技の仕方によって終わりがどうなるのか示唆していくのか、相手を積極的にミスリードしていくのかは演出によると思っています。O9-No.さんの台本は今回朗読劇を観劇していてすごく演出のやりがいがある台本だなと感じました。演者のひとりでもあるねすとさんは「劇やりたくなりましたよ!って思わせるのが目標」という想いを持った舞台(Xでそんなツイートがありました)だったようです。これ自体が通常の舞台ではなかなかないことだと思うのですが、僕もそのマジックにかかったようで、ものすごく”演出やりたいな”という気持ちに舞台を見てから陥っています。そのぐらい良いお芝居で、良い脚本でした。

最後に。”おじさんず”メンバー3人が出る舞台とのことで急遽遠方から赴くことにしたのですが、観劇はもちろん、3人と生で会えたのが本当に嬉しかったです。
そして会場では、なんだか声だけ聞いたことあるなぁみたいな方々の小さい音が幕間にいろんなところから聞こえてきてなんだか面白かったです。もっとちゃんと挨拶した方がよかったかもしれませんが、オンラインだけのつながりというのもエモい気がしたのでこのスタンスは崩さず行こうと思います。

以上です。私は初日の舞台を拝見しましたが、千秋楽をやりきったとのことでネタバレ(?)も含みこちらを書かせていただきました。多くの方が楽しんだ舞台、また次回もありそうとのことで楽しみにしております。あと、舞台花禁止であることを本日見つけてしまい…気づかず持ち込んでしまってごめんなさいでした😭

ではまた。

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