『君たちはどう生きるか』考察なんてクソ喰らえという話。

(7/17加筆修正)
ド直球タイトル。
*この先は完全にスタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」のネタバレも交えた記事です。まだ見ていないという方は是非見てから、自分の感想を持ってから読んでください。*


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『君たちはどう生きるか』初日に見にいった人たちの「宮崎駿の濃縮」などの感想と、具体的に流れてこない内容に、先入観を持つ前に観に行ってみようと思って日曜日に観に行った。
観終わった感想としては、本当に久々にこんな王道な古典的ファンタジーを観たな〜という気持ち。
西洋では、はてしない物語やモモ、トムは真夜中の庭で
日本なら、霧の向こうの不思議な町や、裏庭、おしいれのぼうけん
小さい頃に夢中になった本達を思い出した。


冒頭。
母を火事で亡くし、父は義妹と再婚し、そのお腹にはすでに赤子……
戦火を逃れるために疎開した先は田舎。
配慮の足りない父により当時は珍しい車で乗り付け、いかにも都会のボンボンというふうな登場により早速目をつけられ、帰宅途中に農作業をしている同級生に絡まれ、ボコボコにされて
帰る途中に目に入った石で自分のこめかみを殴り、見せつけるように血まみれで帰宅をする。

あまりにも、あまりにもこの間の心情の揺れうごきが苦しかった。
最愛の母を亡くし、父の愛までも生まれてくる赤子に取られるのではという恐怖。
母が死んだのに、似ている母の妹とすぐ再婚した父への蟠り。
戦争中なのに、裕福で何不自由無い自分の家への思い。
子供だけど大人だから、何も言わずに黙って受け入れていたけれど、積もり積もって、自傷という手段に出てしまう。
しかも衝動的なだけではなく、そうすれば父は学校に抗議に行き、自分は学校に行かなくて良くなる。という打算の上での行動。
あまりにも生々しくない……???

その後少年は継母と父のキスを目にしてしまい
より一層継母・夏子へのわだかまりを強めていき、それがのちに夏子の「帰りたくない」「私なんていなければいい」という拒絶に繋がってしまう。

ただこの後、死んだ母からの贈り物だった「君たちはどう生きるか」を読み、自分の言動や母の死、継母への対応をきっと眞人少年は思い返し、消えてしまった夏子を探して異界を巡り、出会いと別れ、友を作り
ペリカンとの対話、継母や大叔父との対面により自分の答えを形にしていく。
冒険の果てに大叔父の「理想の世界を創ってほしい」という異界の創造主になる願い(≒夢想)を拒絶して、取り戻した夏子と、途中に出会った母・ヒミ、キリコ、友になった青鷺とともに悪意に満ちた戦火の現実へと戻っていく。
しかも、その拒絶の理由(≒答え)が「自分もまた、悪意がある人間である」というのがスタジオジブリ作品としては斬新であり、また宮崎駿らしい答えだと思った。
(しかもそれを眞人という、本当の/正しい人間という意味の名前をもった少年に言わせるのがすごい。)

あまりにも率直な、古典的王道ファンタジー 神話の時代から続く冥界下りと現実への帰還という「行きて帰りし物語」
境界線を乗り越え、成長をして戻ってくる少年の話。
いつかその冒険譚は記憶から薄れていくけれど、そこで得た成長は失われず、何でもない現実へと戻っていく。

もちろん大叔父は宮崎駿のメタファーではとか、石の数が駿の作品数だ!とか
インコ大王は鈴木Pだとか、あの世界の崩壊はジブリという帝国の崩壊、眞人の拒絶は吾郎が自分が築いた世界を受け入れなかったことの暗喩だとか
まあわからなくはない。
わからなくは無いけど。

そこじゃ無いだろ!!!!!!

ストーリーがわかりづらかったとかはまだわかる。
確かに、古典的ファンタジーや児童文学に親和性がないと分かりづらいというか、状況や世界に意味や動機を求めてしまって置いてけぼり感を感じるかもしれない。

これは宮崎駿の自伝と言いたくなるのも分かるし
巨匠と言われる人の最新作(何なら遺作になる可能性が高い)である以上深読みや考察をしたくなるのもわかる。

でもね、これは物語なんですよ。

モチーフを探る前に、目の前の少年の気持ちの動きや描かれる世界の美しさや怖さに集中しませんか?
あの巨匠・宮崎駿が込めたメッセージを、宮崎駿の人生を、神話や隠喩考察で当てはめて元ネタを求めで捏ねくり回そうとするの、やめませんか?

今回の作品、深い!ちゃんと考えないとわからない!とか考察が捗る!とかすごい言われているけど、内容に対する言及があまりにも少ない。私の観測範囲だけかもだけど。

もちろん、それも一つの楽しみ方だとは思うし込めている意味は色々あると思うけれど。
誰かと考察バトルをするために映画を観ていませんか?


あなたは、目の前の作品を、ちゃんと観れていますか?


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