#こんなお話いかがですか

「結婚したんだ。」

君は言う。

私と「結婚する」と言ったその口で。
私へ「愛してる」と誓ったその声で。
君は言った。

時は止まらなかった。

電話特有の電子音の君の声。
表示されてる時間は進む。

「そっか。おめでとう。」

この返事しか私には残されてない。

私も君と別れてからたくさんの恋をした。
君よりいい人の方がたくさん居た。

『突然ごめんね。』

それでも、何度も君を思い出した。

いつも、いつでも君が好きだった。

『最後に君からもらった手紙を見つけて』

大切にされた記憶もないし、記念日だって忘れられてた。

『読んでたら懐かしくなって』

今回のこの電話だって最後に一度交わりたいだけだろう。

『声が聴きたくなった』

友人にはダメな人と罵られ、あまり祝福される恋ではなかったけれど

幸せだった。

過去に一度だけくれたメッセージカード。

手紙と呼べるほどの内容はなかったけれど、

私には大切な手紙だった。

時を超えてなお、私を思い出した君と同じように。

私もまた、

その時の手紙はまだ大切にしまってある。

2019.1.22  縁子🌱