白ゆき姫殺人事件(2014年)

画像1 白ゆき姫殺人事件は湊かなえ原作のミステリー小説を、中村義洋監督が映画化した作品。
画像2 白ゆき石鹸で有名な日の出化粧品に勤める美人OLが、何者かによってに殺害された。長野県のしぐれ谷の雑木林で見つかった遺体は数カ所を刃物で刺されたのち、火をつけられて黒焦げだった。
画像3 ワイドショー番組「カベミミッ!」の制作を担当する契約ディレクターの赤星雄治は、被害者と同じく日の出化粧品に勤める友人の狩野里沙子(蓮佛美沙子)から事件についての知らせを受ける。野次馬根性丸出しで事件の真相を追う赤星は、Twitterアカウント名:RED☆STARを名乗り、フォロワーの興味を煽る情報をTwitter上で次々と拡散していた。
画像4 捜査線上に上がってきたのは、同僚の城野美姫(井上真央)。地味で目立たない彼女と被害者の三木典子(菜々緒)は同期入社で、何かと比べられることが多かったと言われており、妬み嫉みが昂じて犯行に至ったのではないか…社内ではまことしやかにそう噂されていた。
画像5 日の出化粧品の社員からTV番組用のインタビューを取る赤星。「絶対城野が犯人」と、まるで普段からこのような事件が起こっても不思議ではない動機が城野にあったかのようなコメントが多く見られた。巷では日の出化粧品の看板商品である「白ゆき石鹸」にちなんで白ゆき姫殺人事件などと呼ばれ、拡散され続けたゴシップ情報でSNSは盛り上がりを見せていた。里沙子の同期であり、城野と仕事でパートナーシップを組んでいた満島栄美(小野恵令奈)がある有力な情報を話している。
画像6 係長である篠山(金子ノブアキ)と城野美姫が付き合っていたと言うのである。城野の手作り弁当を食べる篠山の姿が目撃されているし、三木典子と三角関係だったとも言われているが…。
画像7 篠山本人へのインタビューを行ったところ、「付き合ってるわけないだろう!」と強く否定されている。城野を犯人かのように仕立て上げる赤星のツイートに対し、城野の大学時代の友人である前谷みのり(谷村美月)が抗議文を送った。しかし、友人を助けたい気持ちからの行動は新たな問題を引き起こす。それがきっかけとなり、城野の個人情報の一部がネット上に出てしまう。「犯人は城野美姫」という情報は検証されることも、訂正されることもなく広まり続ける。一体誰の発言が真実なのだろうか?ネット社会の闇は深い。
画像8 城野が犯人前提の話が一人歩きして、さらに尾ひれが付き、「城野は魔女」などの新たな人物像が面白おかしく作り上げられた。ついに城野の顔写真まで流出する。
画像9 赤星と同じ映像制作会社の編集マンである長谷川(染谷将太)も、赤星のいち報道人の枠を越えるSNS上での軽はずみな言動についてたびたび疑問視しており、「みんなホントのこと言ってるんですかねー?」と釘を刺している。
画像10 篠山係長を城野から奪ったり、城野が芹沢ブラザーズというバイオリンデュオが好きであるという話を聞くと、三木典子もまるで自分も最初から好きだったかのような態度を取り始め、挙句には芹沢ブラザーズの雅也と交際することになったと宣言する。このような仕打ちは社内のバーベキューパーティーの時に美人ともてはやされた三木典子に対し、城野1人だけが「今まで会った中で最も美人なのは、地元の幼なじみの夕子ちゃん」と答えたことに端を発していた。三木典子は相当なゲス女である笑。
画像11 城野がどう頑張っても手に入れることが出来なかった芹沢ブラザーズのライブチケットを、三木は持っていた。いとも簡単に彼氏から直接一枚だけもらったという。ライブ前日に三木は風邪気味で遠出するのも辛いため、ライブチケットを譲ると言い出した。三木に遠慮しながらも嬉しさを隠せない城野は、翌日小旅行の荷物を持って出社。しかし三木は体調が良くなったからやっぱり行くという。散々振り回された城野が狩野里沙子に経緯を話すと、里沙子はチケットを奪ってライブに行ってしまえばいいですよ!とけしかけるが…果たしてこれが動機なのか???
画像12 ライブの日は職場の先輩の送別会があったが、三木典子の死亡推定時刻付近に茅野駅に猛ダッシュで駆け込む城野を見たという目撃情報があがった。東京でのライブに間に合うよう、9時過ぎの電車に乗った城野だったが、送別会の解散後に一体何があったのか?
画像13 城野はライブに間に合う時間に会場にたどり着いていた。ところが出待ちをしていた人の波に揉みくちゃとなり、誰かに押された拍子に芹沢ブラザーズの雅也を突き飛ばし、誤って階段から転落させてしまう。頭がパニックになった城野はライブ会場から慌てて逃げ出し、ホテルに戻って部屋に閉じこもってしまう。ネットを開くと自分が犯人というニュースが世間を騒がせている。途方に暮れる城野はどうなってしまうのか?
画像14 制作したワイドショー番組の評判が良かったことで、赤星は上司に褒められる。番組ではあたかも城野が呪いの感情に満ち、人を殺すような人間だと決めてかかる論調を疑問視する声もあったが、城野の地元に足を運んで行ったインタビューも流され、事件に対する関心は高まる一方である。
画像15 城野は好きだったサッカー部の男子生徒が蹴飛ばした雑巾が頭に飛んできたことに憤慨したことや、その直後にその生徒が交通事故に遭ったことを呪いの力だと噂されていた話を、高校時代の同級生が語っている。また、近所の小さな森の中にある社で仲良しだった夕子と呪いの儀式を行い、火事を起こしたことがあったと近隣住民がコメントしている。「呪い」という言葉がまた視聴者やネットユーザーを刺激して、「城野が犯人である」という信憑性を高める材料となっていた。
画像16 呪いの儀式のエピソードで名前が挙がった谷村夕子(貫地谷しほり)は城野の幼なじみで、自宅に引きこもっている。しかし赤星が城野との幼少期の思い出について訊ねると、楽しげに語り出す。昔から内気な性格で、気の強いクラスメイトに夕子という漢字を「タコだ!」とからかわれ、タコちゃんというあだ名をつけられてしまう(小学生あるあるw)。いじめはエスカレートし、学校生活は死にたいくらい憂鬱なものになっていたところに、声をかけてくれて、唯一仲良くしてくれたのが城野美姫だった。また夕子は赤星のツイートに抗議した一人でもある。
画像17 夕子は城野といる時間だけはイジメられる辛い日常から逃れられた。親友となった2人は赤毛のアンの物語に引き込まれていき、お互いをアン⇔ダイアナと呼び合い、共に空想に耽りながら楽しい毎日を過ごしていた。
画像18 火事が起きたこの森の社で白魔術をやってみよう!と提案したのは城野だった。それはイジメた人物を改心させることを目的に、人型に針を刺して燃やすというもの。呪いの儀式を行った直後にに火災が起こり、2人は放火の疑いをかけられ、今後互いに行き来して遊ぶことを禁止されてしまう。
画像19 火事以来会っていなかった2人だが、祖母の葬儀で故郷に帰っていた城野は、かつて夕子と窓際からロウソクの火で互いにサインを送り合っていたことを思い出す。2人はどんな時も自分の味方でいてくれる相手の存在を確認し合っていた。その夜も当時と変わらず2人の心は通い合っていた。誰もが自分を疑う中で、夕子のような存在がいてくれることがどれだけ心強いか。この映画の中でとても重要なシーンだと思います。
画像20 結局真犯人が現れ、SNS上は城野への同情であふれた。今度はガセネタを広めた人物として、赤星の個人情報が晒された。人なんて勝手なものだ。誰かが白いものを黒と言えば、大多数の人間はそれを事実と思い込む。ニ次、三次と伝わった情報は受け手の偏見によって解釈が変わり、尾鰭がつき、拡散される。城野とその家族への謝罪に赴いた赤星は、城野の車に轢かれそうになるが、運転手が城野とは気づかない。城野もまた自分を殺人犯に仕立てた張本人とは知らず、お互いがすれ違っていく。ネット社会の不条理さに警鐘を鳴らした怖い物語である。

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