メタリックルージュ感想
前置き~ラーゼフォンの思い出
友人からボンズ×出渕の新作アニメがやるらしい、との情報を得て、最近あまりアニメを見ていなかった私も、さすがにこれは観ないとならん!となりまして。
とはいえ、仕事にかまけていてすっかり忘れていたのですが、先日ようやく全話視聴しました。
ボンズ×出渕といえば、私にとってはやっぱり『ラーゼフォン』なわけです。
『ラーゼフォン』の思い出を語ると長くなってしまうのですが、私がロボットアニメを愛するきっかけになった原点であり、アニメ鑑賞の基礎を作ってくれた、大変恩のある作品です。
少女時代にこの作品に出会った時の衝撃といったら。
後々に勇者ライディーンのオマージュだということは知りましたし、当時はロボットアニメがまだたくさん作られていたもんだから、時代背景的にもいろんな作品の延長線上に見られることは理解できます。
しかし当時、ロボットものなぞほとんど触れたことのない、ただのSF小説好きだった少女には、この作品はとにかく新鮮で。
ラーゼフォンがとにかくかっこいいんだよね。戦うときに顔を包んでいた翼がバサァッと広がる感じとか、白を基調としたしなやかで神々しいデザインとか。
そして何より音楽がいい。音楽と動画が有機的に結びついて、作品の神聖な雰囲気を作り出している。大人な作品だと感じて当時はドキドキしたなあ。
生まれたばかりの雛鳥のごとく、初めて観た大人向けアニメ(?)がこれだと、アニメというのは、当たり前に音楽のレベルが高く、音楽が主題に絡んでおり、次回予告のテーマが洒落ていて、たぶんロボットが出てきて、だいたい最後には世界を調律するものだと思ってしまうわけです。(ファフナー、マクロス、ゼーガペイン……)
不穏で不気味な音楽やデザイン、青い血、無人駅、神殿、卵といった神秘的でSF的なモチーフから、とっつきにくいイメージがあるものの、実際観てみるとそんなに怖くはないです。主人公を取り巻くそれぞれのキャラクターに背景があって、信念が垣間見えるドラマチックな心の動きが好きな作品。
結末は正直よくわかんなかったし、ご都合主義がないわけではない。だけど、独特な世界観に浸りながら、この先どうなるかドキドキしながら、美麗なイラストや音楽に酔いながら、いい時間を過ごせると思います。
身の回りではラーゼフォンを観た人はあまりおらず、「あのエヴァみたいな……」みたいなことを遠回しによく言われますが。あとは「話が難しそう」「ヘミソフィアやtune the rainbowは好き(だけど観てない)」「下野紘のデビュー作ね(でも観てない)」「なんかトラウマなやつだっけ」とか。
そう思ったことがある人も、まだ観ていないなら、一度視聴してみることをお勧めします。確かに「ブルーフレンド」とか有名なトラウマ話はありますが、まあそのあたりも含めて、心を動かされるよくできた演出を楽しめると思います。
違う。今回のメインはラーゼフォンじゃない。
そんなラーゼフォン以来、19年ぶりに(!!)タッグを組むボンズ×出渕の作品であれば、観ないわけにはいかないでしょう! という話でした。
いや、19年て……。時の流れ、早すぎ。
基本情報
TVアニメ『メタリックルージュ』公式サイト (metallicrouge.jp)
ジャンル:アニメ(バトルアクション、テック・ノワールSF)
アニメーション制作:ボンズ
総監修:出渕裕
シリーズ構成:出渕裕、根元歳三
監督:堀元宣
キャラクターデザイン:川元利浩
話数:全13話
放送期間:2024年1月11日 - 4月4日
参考:メタリックルージュ - Wikipedia、出渕裕に聞いた『メタリックルージュ』ができるまで① | Febri
→新しい作品に割にWikipediaが充実しているな。特に各話リスト。感謝。
あらすじ
今回はあらすじ省きます。ちょっとでも文章で書くと、1話の面白さが薄れるかなと。
キーワードは、人造人間、バディ、シスターフッド、格差社会、特撮、ロードムービー、宇宙もの。
ネタバレなし感想
シナリオ:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
デザイン:★★★★★
音楽:★★★★★
演出:★★★★☆
演技:★★★★☆
わかりやすさ:☆☆☆☆☆
独自性:★★★★☆
オシャレ度:★★★★★★★★★★★★★★★
今回ちょっと星つけてみました。気分なので根拠はない適当なやつです。
見てわかるように、この作品は と に か く オシャレ!
まずOPを観てください。最初から最後までOPを飛ばす気が起きなかったくらい、OP曲がオシャレでとっても素敵です。
EDもよかった。個人的にはOPがダントツだったけども。ああ~後でちゃんと曲買おう。
一方で、わかりやすさは正直皆無です。
星ゼロっていうのも言い過ぎかもしれないが、途中まで何が何やらわからないまま観続けないといけない。
世界情勢や難しい用語、主人公の目的など、いろんなキャラクターの口や出来事から断片的に語られてはいるのだが、序盤からふんだんに散りばめられているせいで理解できないまま話が進む進む。
まあ話数が短いからそれもやむなしだとは思うんだが。
そのあたりの設定の難しさ、またはテック・ノワールと謳っているように、全体的に暗~い雰囲気をポップにしようとする努力がされています。
主人公のルジュと相棒のナオミの女の子同士のバディものなのですが、この二人の会話が結構気の抜けた仕上がりになっています。ベタベタするというよりはさっぱりとしていて、気の置けない女の子同士が、バイトの休み時間に軽口を叩き合うような。かといって、親友というよりは仕事の成り行きで一緒になっただけのような距離感を保っています。
例えば人造人間が壊れてゴミ収集車(のようなもの)に放り込まれるシリアスな場面でも、ナオミは軽い口調で流すように「これも現実よね。」とか言っちゃう(1話)。
もちろん、この辺りのナオミの性格や、ルジュがシリアスな現実の中で無邪気な発言をすることにも、意味づけはされています。
ただ、初見の正直な感想として、私はこの意図された”軽さ”が、どーにも性に合わなかった。
たぶん単にこの2人とは友達になれないな、というところもあったと思う。クラスで違うグループの女子2人のロードムービーを見せられても、イマイチ盛り上がれない。話したことはあるし嫌いじゃないけど、ノリも価値観も違うし、隣の席になったらちょっと気まずいなあ、みたいな感じ。
おそらくこの世界観の中ではありふれていて、それでもグロテスクな現実が目の前にあったときに、軽口をたたきながら、または幼い感情のまま、あるいは冷め切りながら、それでも結果的に正しい行動は起こす。そういうのは「やらない善よりやる偽善」みたいなもんで嫌いじゃないけど、友達にはなれんくない?
あんまりいい例えじゃないが。医者や医療従事者は手術中に談笑するって聞いたことあるけど、それは集中するためにあえてやっているのであって正しいことだが、自分の腹が開かれているときに談笑されてたっていう事実は知りたくない、みたいな。観ていてそんなモヤモヤした気持ちになった。
とはいえ、この軽さは今どきのSFアニメでは絶対に必要だったと思うし、全くシリアスになる必要のない場面では、とてもいいスパイスになっていました。そんなに気にならない人の方が大多数だと思うので、気にせずに観てください。
本当に視覚的なもの、特に動画を評価する目がない自覚があるので、作画については何とも言えないし、他の大多数の作品と比べることは能力的にできないですが、かなりきれいだと思いました。食べ物もおいしそうだしね。
キャラクターは個性豊かだし、メカ(というか戦闘形態)はかっこいいし(ほんっとかっこいい。好き)、声優陣の演技もよかったです。特にバディの二人の自然な会話のやり取りや、人形使いの家弓さんは(当たり前ですが)さすがでした。モブはたまにうーんでしたが。
演出については、主人公が夢を見ているような話の演出があって(5話)、まあ慣れていない人には厳しい感じでした。でも、戦闘シーンはお決まりの技とかもないのに、細かい仕草にまでこだわっていてすごかった。
でもやっぱり、どうしても、時間が足りなかったんじゃないかと思う。
この内容で、そしてこの壮大な世界観で、13話はあんまりじゃないか?
実は後半にあるネタバラシからおもしろくなっていくのだが、前半にもう少し丁寧にわかりやすい伏線を入れるか、ネタバラシまで待てるような人情成長話を入れるとか(これは賛否あるか)して、夢や幻覚などで情報を散りばめるやり方を取らずに、じっくりやった方がよかったと思う。もったいない。
まあこの世界観でまたいくつか作品を作る感じのインタビューもあったし、最後まで観た後にもう一度観るとなかなかまとまった脚本になっているのは理解できたので、これでいいのかもしれない。
以下、どうでもいいおまけ情報です。
主人公のお兄ちゃんのデザインがロン毛眼鏡男子なのでどうしても如月樹がチラつく。好きだねえ。
川田伸司ファンの皆さん。3、4話に出ますよ。しかもよっちんの真似をします。貴重です。
宮内敦士ファンの皆さん。めちゃくちゃ出ますよ。素敵です。
ネタバレあり感想
上記で言い尽くしたところがあって、あまりネタバレで言いたい内容はないのですが、簡単に。
①ルジュがシアンを受け入れるのが謎すぎた。ちょっと妹がなれなれしすぎてキモかったな。。ああいうキャラが好きじゃないのもあると思うが、口調や雰囲気だけじゃなくて、もう少しエピソードから親しみを持たせてくれぃ。。
②ジーンが実はエヴァとエデンの子どもだった! というのは途中でもしやと思って当たったので嬉し驚きだった。しかし名前がまんますぎないか。そしてロン毛が実は子どもでしたみたいなの、好きね。
③アエス-アリスの二重人格がありそうでないキャラで好きだった。人造人間で二重人格ってあんまないよね?
④後半にかけて、来訪者と簒奪者(名前かっこよくて好き)の戦いが気になってしまうし、そっちが壮大すぎて、ネアンの自由とか人形使ったショータイムなんかがちっちゃい戦いに見えちゃったのはあるね。結局、お前は孤独なんだよ。みたいなオチもなんかねえ~。落としどころに新鮮さがない気がする(そこが一番大事なのに)。
⑤結局、話の最後のメンバーに”人間”が1人しかいなかったのも気になる。あえてなんだろうけど、最後までコミットさせてくれない物語だった印象があるな。
以下、どうでもいいおまけ感想です。
エデンはノアールだからいっつも「誰?」って言われてたのか。
ナオミがつけてた時計(2話)、たぶんカルティエのヴァンドームだよね? 金持ち伏線?w
おわり。