21歳のヨーロッパひとり旅25_(1989年の夏 45日間)
●オーストリアで友人に再会
(1989.8.8)
It's morning. というわけで、列車の窓から見える景色はもうオーストリアである。
これまで地中海沿岸を周っていたこともあり、全く雨に降られていない。一度だけローマで降ったらしいが、その日私はフィレンツェに出かけていた。
遠くの山々に朝靄がかかり、少し曇っている。
オーストリアの家並はとても可愛い。こじんまりはしているが、几帳面な美しさがある。家々のテラスには小さくて可愛らしい色とりどりの花が咲き乱れている。
エギナ島では水がまずく、アイスコーヒーも飲めたものではなかったが、ユーゴスラビアの水は美味しかったので今ボトルに入れている。
窓から冷たい空気が入ってくる。牛が群れをなして草を食んでいる。空気がとても穏やかだ。
リンツ駅に着くと、アンナさんと彼女の子供ミキオくんが迎えに来てくれていた。
アンナさんはご主人がたまたま私の実家がある町の近くの人で、日本にしばらく住んでいたことがあり、その時に知り合ったオーストリア人である。
当時はまだ生まれていなかったミキオくんが、この9月で小学校1年生になるという。実に7年ぶりの再会ということになる。
今ご主人は日本にいるそうで、彼女と彼女のお母さん、ミキオくん、弟さん夫婦の5人暮らしだった。
駅から車で30分ほど行った家は「アルプスの少女 ハイジ」が住んでいそうな家だった。
牧草のしげったゆるやかな丘の中腹にあり、家までの小道の両脇には野いちごや花々が咲いていた。
あまりににも絵になる風景だったので、感動して「素敵なところですね!」と言うと、「日本の田園風景の方が素敵よ」と言われた。
アンナさんの弟さんは酪農家で、広々とした敷地内には大きな牛小屋や納屋があった。アンナさん自身は、この小さな村の小学校の先生(全校生徒40人、先生3人)をしている敬虔なクリスチャンである。ミキオくんはとても愛くるしい子供だった。
スペインやイタリア、ギリシャではカッという感じで暑かったが、ここは見渡す限り緑で適度に潤っており、夜は寒いくらいである。
なので、寝る前にアンナさんが作ってくれた自家製ホットミルクは嬉しかった。
シャワーを浴びて10時半頃床に着く。
(続く)