21歳のヨーロッパひとり旅13_(1989年の夏 45日間)
●朝からドラマ
(1989.7.24)
やはりコンタクトレンズのことが気がかりだったのか、朝早く目が覚めた。
さて、今日はまずどこへ行ったらいいのだろう…。お医者か?眼鏡店か?駅のインフォメーションか?…でも…。テントの中でしばらく考えていた。
小鳥のさえずる天気のいい朝だけに、悲しい気持ちだったが、いつまでもこうしていてもしょうがないと思い、とりあえず起きて、昨夜レンズをなくした洗面所に顔を洗いに行った。で、往生際悪く、もう1度思わず這いつくばってしまう。だって25000円だよ?
隣で歯磨きをしていた女の子も座って探してくれた。
突然その女の子が人差し指を突き出した。なんと、その先にレンズが泥にまみれてついていた。
奇跡だと思った。ゆうべ、ライトでもって二人であれだけ何回も探したのになかったのだ。それにその後よく踏まれなかったものだ。
すぐ洗ってつけてみると、傷もついていなかったらしく、異物感もなかった。
思わず彼女を抱きしめてしまう。
ユーゴスラビアから来た子で、英語がほとんど話せないとただニコニコしていたが、私は泣きたいほど嬉しかった。
レンズを不注意でなくしてしまったことはお金だけの問題ではない。これからの旅の気分にも関わる問題だった。帰ったらまず彼女にお礼を出そう。(※後日談:この何年か後、彼女の夫が音楽の勉強で滞在しているボストンを訪れ感動の再会を果たすことになる)
それからは打って変わって素晴らしい気分だった。やっぱり私は現金だ。
朝食を済ませた後、テルミニ駅でベリエッタや直美さんと別れ、そのまま宿を探そうと、駅構内のインフォメーションに向かった。
(続く)