21歳のヨーロッパひとり旅22_(1989年の夏 45日間)
●エギナ島のピスタチオ
(1989.8.5)
ギリシャ文字は何だかロシア語のアルファベットに似ている。
ここではビールが安い。350mlで100円しない。旅で疲れたら、アルコールかビタミンをとるに限る(矛盾しているが)。あと、経験で学んだ旅の鉄則は「トイレは行ける時に行っておく」。
今日は自転車を借りて海岸線を走り、ひと気の少ないビーチを見つけて一日中泳いでいた。
荷物が心配だったのでどうしようかと思っていたら、向こうから同い年ぐらいの女の子がやってきたのでちょうどいいと彼女と相談し、交代で泳ぎ荷物の見張り番をすることにした。
彼女の名はアンヌ。私より2歳上でフランス人学生。夏休みを利用してアテネのフランス系会社にアルバイトに来ているという。大学で習ったフランス語会話を試す絶好のチャンスだったのに、最後まで英語で話した。我ながら間抜け。
二人で日光浴しながら、時々おしゃべりをする。暑いが、海からの風が涼しくて気持ちいい。体が火照ってくると、またつま先まで見える透明でエメラルドグリーンの水の中へ入る。
近くには、赤ちゃんに水浴びをさせている母親とおばあさんの3人連れがいるだけで、他には誰もいない。遠くでは白いヨット。時折モーターボートが走っている。
夕方ホテルに戻り、シャワーを浴びて夕食を取りにレストランや土産物店の並ぶ海岸通りに出たが、どこもいっぱいだったので、一本奥の通りを歩いてみた。
すると、青を基調とした陶器の並ぶ美しい陶芸店が目に留まったので入ってみた。その店の店主は30代ぐらいの男性で元船員、日本にも行ったことがあるという。日本についても色々話した。そして、このあたりの安くて美味しいレストランと、そこのおすすめメニューを教えてくれた。
そこで食事をした後、10時に待ち合わせてディスコに行く約束をして別れる。
教えてもらったレストランのポークの煮込み料理は舌がとろけるほど美味しかった。ビールで疲れを癒す。
待ち合わせまでまだ時間があったので、人影まばらな岩場に登り、美しいサンセットを見る。「ギリシャの夕日に照らされると誰でもアイドルになれる」とノートに書いてくれた、シチリアで出会った S 君の言葉を思い出し、なるほどと頷く。気分が上がり、好きな歌でも口ずさんでみたくなる。
一人の少年が、近くでさっきからアミで何か採るのに夢中になっている。また取った。カニだ。私が見ているのに気づくと、もう4匹取ったよと、ニコッと笑って指を4本立てた。10歳前後だろうか、とても可愛い。多分島の子だろう。浅黒い肌が、幼さの中にも海育ちのたくましさを感じさせる。
日が完全に落ちてからもまた趣がある。薄紅色の空が目前に広がり、海の色もそれまで一本のオレンジ色の線を引いていたのが、全体に赤く染まる。線香花火と同じだ。一旦終わってもまだおまけの美しさを見せてくれる。
ようやく暗くなってからデュミトリットの店に行き、二人で車でディスコに行く。観光客がいない地元の店で、なかなか楽しかった。ギリシャ名産の冷たいワインを賞味。
ピスタチオがとても美味しい。時季なのか、至るところでピスタチオの赤い実が咲き乱れてるというかなっている。
島はゆったり時間が流れる。
(続く)
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