日本一周ひとり旅1988 5)死んでも周りは変わらないけれど
●7月24日 5日目
青森ー函館ー札幌 友人宅泊
昨夜寝る前は夜中に包丁を研ぐ音が聞こえるんじゃないかとか色々不安だったが、実際寝たらどうってことはなかった。
気持ちの良い青空に爽やかな風。
青森駅まで同泊の男性と一緒に行った。今日は太宰治の生家を訪れて夜は野宿をするらしい。感じの人だった。
駅前で、美味しいよと教わったにっしょくのモーニングを食べる。
青函トンネルを通る。吉岡海底駅で降りて見学する予定だったが、松尾さんに「何もないで。ただ横に穴があるだけや」と言われていたのでやめた。列車の中からでも見えた。
函館に着いたのはお昼時。駅近のラーメン屋で味噌ラーメンを食べる。
札幌駅に近づくにつれドキドキする。5年来の文通相手と初めて会うからだ。
札幌ー、札幌ーのアナウンスを聞くともういけない。果たして、きゃるは目印の小さなぬいぐるみを持って立っていた。意外と小柄で声の感じの通り可愛かった。会うと何かほっとした。
それからは本当によく話が弾んだ。北海道のこと、職場のこと、本のこと、音楽のこと。ジャズを聴きながら夜中まで話す。タバコを燻らすのも可愛いのに不思議と似合っていた。
一緒に作った夕ご飯も美味しかった(私は切ってあったこんにゃくを煮てご飯をついただけだったが)。
幼い頃姉を亡くした彼女が「死んでも周りは何も変わらないんだよね」。人はいい意味でも悪い意味でも社会の歯車なんかではないということか。ただその言葉とは裏腹に姉のことを今でも大事に思っているようだった。
札幌に来て良かった。(続く)