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戦略コンサルは役職別にケイパが変わっていくという話

戦略コンサルタントのアップルです。

ここ最近以下の2つのツイートが思いのほか拡散しました。

いずれも、外部から見えるコンサルのイメージと内部の実態とが異なるという点に意外性があって拡散したのではないかと解釈しています。

<一般的なイメージ>
コンサルはロジカルシンキングや定量分析力が重要
<実態>
国語力がとても重要

<一般的なイメージ>
左脳優位(MECEな整理、ロジックでの分析等)
<実態>
(左脳も大事だが)右脳がとても重要

これらのツイートは、文字数の制約もあって、単純化しています。ロジカルシンキングや定量分析が大事、とか、左脳優位というのも決して間違っているわけではありません。正確には役職によって求められるケイパビリティが大きく変わっていくということになります。

今回の記事では、過去の記事も引用しつつ、この点について解説・補足しておきたいと思います。

コンサルのイメージはどう形成されるか?

まず、コンサルの一般的なイメージがどう形成されるかを考えてみます。コンサルティングファームの中にいたことがない人が内情を伺い知るための手段は大きく2つあります。

1.コンサル本を読む
2.現役コンサルタントのブログやTwitterを読む

この2つともバイアスがかかる構造にあるとアップルはみています。

1.コンサル本のバイアス

元コンサルタントや現役コンサルタントが書いた本はたくさん出版されています。様々な本がありますが、その多くは「スキル」について論じています。例えば「マッキンゼー流・・・」という本が何冊もあったりしますが、これは戦略コンサルタントのスキルを紹介したものです。

そして、そこに書かれているスキルは、「形式知化されていて」かつ「万人受けする」ものが多いです。そうでないと文章にして一定部数売ることができないからです。そのような具体的なスキルとは何かと言えば、
・ロジカルシンキング
・フレームワーク
・定量分析
・スライドライティング
に概ね集約されます。

世の中に出るコンサル本に書かれている内容が大概上記のテーマに集約されることから、「戦略コンサルタントとは、左脳を駆使して分析し、きれいなスライドに落とし込んで、切れ味良くクライアントにプレゼンするんだ」という印象が極めて強くなります。そしてこれはコンサルティングの仕事に一定のバイアスをかけることとなります。

2.現役コンサルタントのブログやTwitterのバイアス

もうひとつの情報源がこれです。アップルも最近Twitterを本格的にやりはじめて改めて思いましたが、Twitterでつぶやいたりブログで発信しているコンサルタントの方は実にたくさんいます。こうした情報からファームの仕事の実態、組織の実態をリアルに窺い知れるため、特にコンサル業界志望者にとっては貴重な情報源と言えるでしょう。

ただ、これらの情報も、ややバイアスがかかっているとアップルは考えています。なぜなら役職層が比較的低いジュニア層のツイート量が圧倒的に多いからです。この理由は、3つほど考えられます。

①そもそも、コンサルティングファームにおいてジュニア層の数が多い
②ジュニア層の方が年齢が若いため、Twitter利用率が高い
③ジュニア層の方がストレスフルなため、ストレスのはけ口としてTwitterなどを利用しがち

つまり、ネットに出ているコンサルの中の人の情報は、体感ベースで8~9割方はジュニアの人たちによるものです。そこに開示されている情報はコンサルティングファーム全体を代表した情報ではなく、ジュニアの目線・スコープにバイアスがかかった情報ということになります。

ジュニア(アナリストやコンサルタント)の人たちのメインのミッションは調査や分析です。与えられた論点に対して答えを出すためにロジカルに物事を整理・考察したり、エクセルを回して定量分析をしたりするのがメインの業務となります。そして、そこで使う頭は左脳が中心となります。


以上から、
1.コンサル本を読む
2.現役コンサルタントのブログやTwitterを読む
のいずれの情報源も左脳や定量分析にバイアスがかかるため、コンサルタントとは左脳と数字を駆使する分析マシーンであるというイメージが形成されやすいと言えるでしょう。

では実態はどうなのか?

では実態はと言えば、本記事のタイトルにあるとおり役職別にケイパが大きく変わっていくというのが答えになります。その中でジュニアに求められるケイパや実態は、「左脳と数字を駆使する分析マシーン」というイメージで概ね合っています。

戦略ファームの役職をざっくり3つにわけると、次のとおりです。

・アナリスト・コンサルタント(ジュニア)
プロジェクトの中で一つのパート(モジュール)を担い、そのパートの論点に対して調査・分析を通じて答えを出す

・マネージャー(ミドル)
プロジェクトの実行責任者。メンバーであるアナリスト、コンサルタントをマネージし、個々の調査分析結果を一つのストーリーやアウトプットへと統合する

・パートナー(+プリンシパル・シニマネ)(シニア)
プロジェクトの最終責任者であり、アカウント責任者。日常的にクライアントマネジメントを行う中で、プロジェクトを営業する

階層ごとに求められるケイパビリティ(=スキル+マインド)がどう異なるのかについては、半年ほど前の次のエントリーにまとめています。

この記事には次のチャートを挿入しました。

役職別

赤字がスキル、青字がマインドですが、最近Twitterでつぶやいたことも踏まえてこれに「使う頭」「使う基礎科目力」を追加してアップデートすると、次のようになります(縦軸がMECEではないかもですが、ご容赦ください!笑)。

役職別

二段目と三段目が追加した部分ですが、これはシニアになればなるほど右脳優位、国語力優位になっていくことを示しています。

右脳というのは直感です。シニアになるほど、経験も蓄積されているので、愚直に分析をしなくても直感でクライアントの課題や打ち手仮説が思いつくようになります。ジュニアが時間をかけて積み上げで答えを出すプロセスを脳内でショートカットして答えを出してしまうイメージです。その方が手っ取り早いので、ジュニア時代に左脳が強いと評価されていたような人でも、右脳優位に自然となっていきます。実際に、アップルも、役職が上がるにつれてどんどん右脳化してきた感覚があります。たぶん、愚直に積み上げで分析するようなワークは、面倒くさすぎてもうできないと思います笑。

また、シニアになるほど、国語力が優位になっていきます。まず、マネージャーになると国語力の必要性が顕著になります。なぜならプロジェクトの最終報告においてクライアントに対し「要は何を提言するのか」を言語化するミッションを負うことになるからです。これをエグゼクティブサマリーと言ったりしますが、最終報告資料が例えば40枚のスライドで構成されているとしたとき、要はその40枚で何を言いたいのかを1~2枚のワードスライドにきゅっと集約することが求められます。これを書くためには、
・メッセージの幹と枝葉を峻別し、枝葉を削ぎ落す力(クリスタライズ力)
・短く平易な言葉に落とし込む力(語彙力)
・文章を論理的に構成する力(ロジカルライティング力)
が総合的に求められるため、比較的高いレベルの国語力が求められるというというわけです。

さらに、パートナーともなれば、「ノンペーパーでもっともらしいことをしゃべる力」が求められるようになります。具体的には、クライアントとのディスカッションにおいて即興で本質を突いたコメントをする力、提案活動の中でクライアントにハッとさせることを言う力などです。即興で言葉にするための更に高い国語力が求められると言えます。

ケイパが変わっていくことを理解しておくのが大事

戦略ファーム志望者は、往々にして「ジュニアに求められるケイパビリティ」だけを意識して入ってくる人が多いと思いますが、腰掛けではなく本気でこの業界で戦っていきたいと考えるのであれば、上記のようなマネージャーさらにはパートナーになったときに求められるケイパビリティを理解し、それに自身のケイパが合致しているかどうかを想像してみるのが良いのではないかと思います。

例えば、国語力やしゃべり力に自信がある人は、アナリスト・コンサルタントでは苦労したとしても、マネージャー以降では大活躍するかもしれません。実際にそういうタイプの人も中にいます。

以上、ツイートした内容の補足もかねて、戦略ファームの役職別のケイパの変遷についてまとめてみました。コンサル業界志望者の方などにとって、多少なりとも参考になれば幸いです!


今回はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました!

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