退職

上司が退職日だというので、ひとり駆けずり回った
というても定年再雇用なので、次の日からも普通に出勤するのだけれど
それでも一つの区切りだろう、と

朝のミーティングで上司自らその話を出し、
「昔、花輪飾ったこともあったよなぁ」とか言うので
あぁ何かしてほしいんだなと汲み取ったが
上司とほぼ同じ期間を共にしたはずの女子社員は動く気配もなく
そのミーティングでたまたま不在だったその上の上司にも話を振るが
「そうだね。教えてくれてありがとう」と言いつつも、
その後忙しくて気が回ってないと思われたので
「お花頼みましたか?」
と直前に訊く

花屋をネットで検索しつつ
「あたし今日暇なんで予算と配達時間指定してもらったら動きますよ」
言うたのだが
その上司は今日休みの総務担当者に問い合わせたらしく
「みんなやってないってさー」
そういう問題じゃない!思ったけど

しょーがないので向かいの席の派遣社員にチャット
「そういう状況なら時間もないし『みんなで』は難しいんじゃない?」
そうよねぇ
じゃあ昼休みにでもひとっ走り行ってくるか
数日前から置きチャリしててよかった

ブツ準備して定時を待つが
いつもあたしと2人になるのが嫌なのか、肝心の上司はどっかに行って帰って来ない
仕方なく机の上に付箋をつけて置いて帰る

勤怠連絡用にと教えてもらった上司のケータイ宛に
ふと思いついてSMS
こういうのやるからあかんのよねぇと思いつつ
(プライベートとビジネス関係をごっちゃにコミュニケーションするから
そのうちビジネス関係までおかしくする)
いつもの話し言葉そのままにメールを打つ

ひとしきり眠った後、着信に気づく
「ありがとうありがとう。スーパーうれしいです」
可愛いわこの人。よかった。やっぱり欲しかったのね
と同時に、
自分が数多ある退職時にどんな気持ちだったかを思い出す
あぁこの子たちを救い出すためにあたしはこれをやったのね
退職なんて「個人的なもの」だから、
ひとりでその思いを抱えないといけない

彼女は「お嬢様」だし
(私にとって「お嬢様」とは、自分と他人に適用する基準が悪気なく違う人のことを指す)
まだ比較的若くてさして退職の経験もないからわからないのね⁉

掴みはオッケー
これで上司はあたしのことを辞めさせられない(笑)
よかった
気を揉んだ甲斐があったわ

向かいの席の派遣のコは
「そうねぇ、一生に一度のことだもんね」
言うたけど、
同時に思う
何だって一生に一度じゃないの?
こうして働いていることさえも
そう、だから
時には伝えたい
ありがとう
私はあなたとこの時を共有しています