NothingはAppleに対する究極の逆張り ーNothing製品はなぜ魅力的か
先日Nothing Phone (2)が正式発表されました。
以前から情報が出ていたので驚きはありませんでしたが、価格は噂よりも安かったので食指が動いています。
どうやら日本では、実際の英ポンド/円の為替レートで計算した価格より2万円ほど安い価格に設定されているようです。GoogleもPixel 7シリーズを日本で発売した際に実際の為替レートで計算した価格より安くしていましたよね。
日本でiPhone以外のスマホを根付かせるには値段を下げるくらいのことは必要ということでしょうか。
Phone (2)はPhone (1)との併売になるようですが、日本では価格差が小さすぎる状態で、今から定価でPhone (1)を買う人はほとんどいないでしょう。
さて、Phone (2)の外観はあえてPhone (1)と連続性を持たせつつ、より洗練させたものと位置付けられているようです。
そのため外観はPhone (1)とあまり変わらないと見る向きが多いようです。
もっとも、私自身は最近のiPhoneの変化の小ささに慣れていたので、これでもだいぶ見た目を変えてきたなと感じました。
いわずもがなNothing製品の魅力はやはりその外観にあります。
合理的に考えるなら、別に筐体を透明にする必要はないし,LEDライトを搭載する必要もない。でもこれがかっこいいわけです。
そのかっこいいはどこから来るのか。
今回は、最近リバイバルしつつある90年代透明デザインやApple製品とNothingの製品デザインを比較しながら、Nothing製品がなぜ魅力的なのかを考えてみたいと思います。
スケルトン、トランスルーセント、トランスペアレント、どう違う?
そもそも、透明に関する言葉としては、スケルトンやトランスルーセント、トランスペアレントなど、いろいろな言葉があります。どれも透明という程度の意味で使われているふしがありますが、実際には意味の違いがあります。
まずスケルトンは骨組みのことで、半透明の意味もあります。建築では内装を全部取り払った状態を指したりしていますね。
トランスルーセントは半透明。
トランスペアレントは透明です。
関連語としてシースルーもあります。こちらも洋服の生地が透けていることなどを指すので、半透明に近いものです。
Nothing Phoneは背面が完全に透明なので、トランスペアレントということになりますね。スケルトンやトランスルーセントではありません。シースルーでもありません。
一方で、90年代の透明デザインは、あくまで半透明なのでトランスルーセントということになります。
このトランスルーセントデザインは、Apple傘下のBeatsもBeats Studio Buds +でちゃっかり便乗しています。
日本でもファミリーマートが半透明の充電器を発売していますね。
ここまで読んでいただいて、トランスルーセントだのトランスペアレントだの、分かりにくいし、どうでもいいと思われたかもしれません。
私もそう思います。
ではどうしてこんな話を書いたかというと、Nothing Phoneの紹介記事ではスケルトンやトランスルーセントという表現が使われていることがあるからです。
もちろん、おおざっぱに透明という意味では間違いではありません。実際のところBeats Studio Buds +もカラーリング名は「トランスペアレント」です。
しかしこれらは厳密には誤りということになります。せっかくなのでその点を整理しておこうと思った次第です。
Nothingのデザインは90年代のリバイバルではない
Nothingのデザインに話を戻しましょう。
Nothing製品の登場と時を同じくして90年代の半透明デザインが再流行しつつありますが、実際のところNothingのデザインは90年代の半透明デザインとは異なるものです。
先ほどしつこく論じたように、まず透明と半透明という点が違います。
90年代のデザインはあくまで半透明ですが、Nothingの場合ははっきり透明です。
もちろん、最近登場したガジェットの中には完全に透明なアイテムもありますが、Nothingは透明と言いながら実際には内部のパーツをそのまま見せているわけではないという点も異なります。
Nothingデバイスは、ほかの透明系ガジェットと異なり、外側のガラス部分と内側の基盤類の間に見せてもいい中間層を作っています。
Nothing Phoneの場合、背面から見えているのは純粋な内部構造ではなく、内部構造を覆い隠すカバーパーツであったりするわけです(もちろん内部パーツを純粋に見せている部分もあります)。
ほかにも、ワイヤレス充電用のコイルは本来であれば銅線なので銅色のはずですが、飾り板で他のパーツと馴染ませています。
そういうわけで、Nothingは90年代テイストのリバイバルと思わせつつ、実際にはかなり変えてきているわけです。
Nothingがトランスルーセントでないとすると、90年代のトランスルーセントブーム火付け役のiMacともあまり関係ないということになります。
NothingのデザインはAppleのあの製品に似ている?
しかしNothingとAppleが全く関係ないかというと、そうでもありません。
最近発表されたNothingの充電ケーブルを見てみましょう。
コネクタ付近が透明ですが、基盤のような純粋な内部パーツは見えていません。金属製のカバーの上からさらに透明なパーツで覆ったデザインです。
Nothing Phoneだけ見ているとわかりにくいですが、充電ケーブルのデザインは、Power Mac G4 Cubeなどのデザインを彷彿とさせます。
そういう意味で、Nothingのデザインの話ではiMacが引き合いに出されますが、実際のところはPower Mac G4 Cubeの方が近い気がするんですよね。
今のところApple製品にはこのデザインテイストが復活する気配はありません。
Appleはアルミニウムからステンレススチール、そしてチタニウムという具合に使う素材を変化させていますが、ポリカーボネートに戻ることはないでしょうし、ガラスやサファイアでは、まだ金属素材を代替できるところまで来ていません。
もちろん背面を透明にするだけなら今のiPhoneでもできますが、いくらApple製品の内部構造が美しいからといって、背面を透明にしてそのまま内部を剥き出しにするのがいいかというと違う気がするんですよね。
iMacも半透明で若干内部が見えにくくなっているからいいんです。
ちなみにiPhone 14やiPhone 14 Proの背面を透明に改造しているユーザーがいます。これは面白い試みではあるんですが、なんだかしっくりこない。
NothingはAppleに対する究極の逆張り
Appleが将来的にガラス製の筐体に移行する可能性はあると思いますが、まだまだ時間がかかるでしょう。なによりNothing製品のように内部に見えてもいい中間層を作ることはしないでしょう。
その意味で、Nothingは今のAppleが手を出さない領域を狙い撃ちしていると言えます。まさに逆張りです。
もちろん、Appleに対して逆張りしただけでは、いい製品にはなりません。
その点、Nothing製品のデザインは90年代リバイバルという流行の最先端を行くデザインとして高く評価されています。しかも、実際には90年代のデザインとも違うため、同じく90年代のリバイバルで攻める他の製品に紛れることもないわけです。
Appleの逆張りでありながら、一面においてはトレンドに乗っているというとても難しいことをやっているわけです。
それがAppleを見慣れたユーザーの目に新鮮に感じられ、魅力的に見えたのだと思います。
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