ラクダの歩き方
このあいだ、ラクダに乗った。
身体全体が下から揺られて、世界と一体化してるような、そんな感覚。
ラクダは、横揺れらしい。
長い髪を一つくくりにしたインストラクターのお兄さんが、そう教えてくれた。
ラクダは歩く時、右前脚と右後ろ足が同時に出る。
まだ歩き方を知らない子どもみたいな、
不格好な歩き方。
知らないことを知るって面白い
とはよく言うけれど、
そこには、面白いという感情では言い表せないものがある気がするな。
世の中にはたくさんの情報が溢れているけれど、
そのすべては大きく二分される。
私の心に残るものと、残らないもの。
なんだかローランドみたい、笑
受験生の時、「人間は7回その情報に触れて始めて記憶できる」と言われた。
なるほど。
確かに、人間が長時間記憶できるのは、
感覚記憶から短期記憶、長期記憶と輸送されてきたものに限る。
思い出も、知人の顔も、英単語も、長い間覚えようと思ったらそれだけ何度も繰り返し覚えようとしなければいけないのである。
と、授業で習った。笑
でも。ラクダの歩き方を、私は覚えてしまった。
自分で乗って、感じて、聞いて、触れて知ったこと。
それは、たった1回で私の心に跡を残した。
ラクダの柔らかさ、大きさ、緩やかなこぶの形、
経験したすべてのことが私の中にある。
だから私は思った。
外に出なきゃだめなんだって、ね。
自分を守るためのふさぎ込みがちな毎日は、きっと、私に何も与えてくれない。
ある程度の安心感と、心の安定と、起伏のない生活はもたらしてくれるかもしれないけど、
ラクダの感触、歩き方を知った時の、
あの時の私の感情のようなものは、きっと湧き出てこない。
だから、私は、いろんなことを経験して、
病気になって出来なくなったことをひとつずつ克服して、私が素敵だと思えるような私を、目指していきたいな。