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何不自由なく連れ回された、旅のはなし
久しぶりに文章を書きます。旅の備忘録です。先日、なぜか京都に行ってきました。何なら、帰ってきた今でも、なぜ自分が京都に行ってきたのかよくわかっていません。
「長崎くん、明後日から京都に行くんだけど相席してくれるかな?」、というある人からの一通のメッセージから始まった今回の旅。内心驚きと戸惑いが半々という感じではあったが、連絡をもらった相手が相手。すぐさま可能な限り予定をキャンセルし、何とか4日間の日程を確保。京都への同行が決まった。
連絡をもらったその相手というのが、Huuuuの徳谷柿次郎さん。長野県を拠点にジモコロやSuuHaaなどのメディアに関わりながら、シンカイという場所をつくることにも携わっている方で、実はそれまでに二回しか会ったことがない。そのうち一回は、今回とは逆に僕の方からいきなり連絡をして、突然の連絡にも関わらず、すぐに会ってくれた。緊張しながらも、自分の想いとやりたいことをとにかく羅列して話したところ、会って15分ほどで、どういうわけかシンカイに関わることが決まった。
この人と一緒にいると、今まで数週間、数ヶ月かけて行っていた自分の意思決定・選択が、ものの数分で決まっていく。そして、その理由はよくわからない。ただそこには、自分でも驚くほど違和感がなく、自分がした意思決定を後から悔やんだりすることも、なぜか今のところない。このスピード感が自分には心地よく、そして程よいプレッシャーにもなっている気がする。僕が今の段階で、イメージする柿さんはそんな人である。
当日の朝、どこに行くのか、何をするのか全くわからないまま長野駅で柿さんと合流する。京都までの長い道のり。話したいことや聞きたいことは沢山あったし、この時間で自分自身の想いもできるだけ知ってもらいたいと思いながら助手席に座った。
何となく京都に滞在中の予定もわかって、お互いにそこそこ話ができた頃に、柿さんがこんな言葉を口にした。「連れ回すのが一番の教育だと思うんだよね。」
柿さんの予定は全く変わらないまま、そこにただ僕がいる。僕としてできることはほとんどないし、ただただ僕は柿さんもとにいる。要は”連れ回された”のだ。
色んなところに連れていってもらった。色んな人に会わせてもらった。そこで出会った人たち各々が口にする言葉から、あくまで僕の中で、ではあるが、徳谷柿次郎さんという人の存在が少しずつわかってきた。zoomを使えば簡単に話せるような現代の環境で、わざわざ6時間もかけてその場所に足を運ぶ。移動中の車内では、別のプロジェクトで起きた問題の対応に追われ、次から次へとひっきりなしに会議が続く。なのに、いざ現場に着いたらそんな表情は一切見えないし、スケジュールはギチギチに詰まっているはずなのに、現場で惜しまず時間を贅沢に使う。
色んな空気を感じて、色んな疑問が生まれた。連れ回されはするけれど、僕としての役割も特になく、美味しいご飯は食べれるし、宿にも困らないし、よくわからないけどすごそうな話を盗み聞きできる。
今回の旅、帰ってきた今でも何のための旅だったのかよく分かっていない。ただ、個人的にはそれでいいと思っている節がある。普段の生活の中では行かない場所に行って、出会えない人に会って、食べれないものを食べて、わからない次元の会話が聞けて。今回生まれた沢山の分からないが自分を少しだけ成長させてくれるような気がするし、少しの期間、この分からないを大事にできる自分がいる気がしている(正にどこかの会社の企業理念みたいに)。
「連れ回される教育」。これを体験できた自分が何だか嬉しくあり、連れ回すだけで色んな分からないを生めるような存在に、自分もなりたいような気がしたりした、今回の旅であった。
<備忘録として、行った場所>
京都市京セラ美術館・鉄板28号・大徳寺温泉・喫茶ユニオン・琥珀街・猿鹿狐ビルヂング・すするか、すすらんか・竹の館・変なホテル・ロクメイコーヒー・都野菜賀茂・vou/棒・マガザンキョウト・大鵬