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森の妖精アンゼリカ
アンゼリカは森に住んでいる。アンゼリカには大好きな姉がいる。エレーナはアンゼリカより、6歳年上だ。アンゼリカは11歳、エレーナは17歳だった。
二人には、素敵な両親がいた。二人とも、もう天国にいる。パパは森を出て草原の蜂蜜採取の時に、熊に襲われて亡くなった。ママは病気で、三年後に亡くなった。
二人きりになった姉妹はとても仲良しだったが、ますます、助け合って暮らすようになった。
ブリティッシュコロンビア州のケローナの近郊、ロッキー山脈の麓の森の中に住居はあった。パパが立てた丸木小屋だった。住み心地はとても良かった。ママの手作りのキルトが何枚も壁を彩っていた。
アンゼリカは主に外仕事を受け持った。エレーナは家事が得意だった。料理はお手のものだった。エレーナはよく、アンゼリカの好物を作ってくれた。アンゼリカが楓の木から採取したメープルシロップで、エレーナは素敵なシフォンケーキを作った。アンゼリカの好きなのは、ラズベリージャムを添えたシフォンケーキ。
姉妹はよく、笑いころげた。
時々は、パパやママを思い出して、寂しくなることがあったが、それ以外は元気に暮らした。
ペットとして、ウサギと野鼠を飼っていた。二人はウサギにロイ、野鼠にジャックという名前をつけて、可愛がっていた。野鼠のジャックはお行儀が悪かった。一度、アンゼリカのシフォンケーキを齧った時は、3日も籠に閉じ込められた。アンゼリカは憤慨していた。
家族としてゴールデンレトリバーの雌犬パーティを飼っていた。パーティは、アンゼリカが外仕事する時の頼りになる相棒だ。パーティは熊を寄せつけなかった。
アンゼリカは父親を死なせた熊を憎んでいた。熊という熊が嫌いだった。アンゼリカは熊よけに鈴を身につけていた。パーティーがいるから、熊は近寄らなかったが念の為に。熊は森がどんぐりが豊作なら里に降りないが、アンゼリカたちは森の中に住んでいるのだった。
アンゼリカとエレーナは菜園を持っていた。普段食べる野菜は、菜園で育てていた。エレーナは花も育てていた。チューリップや野薔薇、日々草を育てていた。
アンゼリカは今日、畑の畝おこしをしていた。朝からスパローがたくさん、アンゼリカと遊んでいた。アンゼリカは小鳥が大好きである。小鳥たちもアンゼリカのくれるお米に群がって喜んだ。アンゼリカは、ジャガイモとピーマンを植えるつもりだ。
ほかに、キーウィとトマトの畑もある。
時々は家の修繕もアンゼリカの担当だ。11歳にしては、よく働くし、技能はパパに教わった。
ああ!パパ、あの日、嫌な予感がしていた、グリズリーがパパを襲うなんて、あの優しいパパが死んでしまうなんて、アンゼリカもエレーナもひと月は泣いていた。
その後は、泣くことを諦めたが、心ここにあらず、といった風情で半年を過ごした。
唯一の慰めは、病気で亡くなったママと、パパは天国で一緒だということだ。
悲しくなったら、そのことを考えて、慰めとしているアンゼリカとエレーナ。
エレーナは、ママによく似ていた。アンゼリカにとっては、小さいママのような存在だ。
アンゼリカは、カナダの厳しい冬のために、薪作りをしていた。丸太小屋の家の中には、パパが備え付けた立派な暖炉があった。薪は、まず、森から木の枝を採取する。薪作りはエレーナと一緒に行った。
まず、玉切りをする。一定の長さに切り揃える。生木を玉切りにする。玉切りの幹や枝を斧で割る。これは、エレーナが行った。割った薪をニヵ月程度雨ざらしにする。
雨に当たらない場所に、薪をきれいに積み上げて乾燥させた。二人は小さい斧で沢山の薪を作った。枝木集めは、年間を通して行った。冬の森は、雪が降るし、寒さは厳しかったから。
四月になると、クマニラやクマネギを木々の根元で採れた。ハーブだ。シャキシャキとした食感が特徴だった。アンゼリカはエレーナと一緒に山菜採りを楽しんだ。キッチンでサラダやクリーム系のパスタ、グラタン、パンに塗るスプレッド、スープなど、さまざまな料理に使った。
ドミニクという19歳の男の子がいた。ドミニクは、森の中に薪にする木々を集めに来ていた。アンゼリカとエレーナに出会った。三人は挨拶を交わした。二度三度、出会ったので、エレーナはドミニクをお茶に誘った。ドミニクは礼儀正しい男の子だった。
森で摘んだ花を二人に持って来てくれた。三人は仲良しになった。
二人の生活に、ドミニクが加わって、賑やかになった。
ドミニクは、週に一度は訪ねてアンゼリカの仕事を手伝ったり、エレーナの作る食事を一緒にすることもあった。
ドミニクは、エレーナに恋をした。二人は素敵なカップルだった。
アンゼリカの薪作りに、ドミニクはとても役に立った。
そんな暮らしが四年続いて、ドミニクとエレーナは、婚約した。アンゼリカも嬉しかった。
三人はケローナの町の教会に行って、ささやかな結婚式を挙げた。丸太小屋を建て増しして、三人は家族になった。
ドミニクの男友達も、遊びに来るようになった。
アンゼリカにも、ボーイフレンドができて、エレーナとドミニクは喜んだ。
二人が結婚して二年目にコウノトリがベイビーを運んで来た。エレーナもアンゼリカも大変に幸せだった。
エレーナの料理は益々、磨きがかかった。ドミニクはもう少年ではなかった。
頼もしい一家の大黒柱となった。アンゼリカのボーイフレンドはイーサンといった。
イーサンもよく働いてくれた。
きっとアンゼリカとイーサンも結婚するかもしれないなあ、とエレーナとドミニクは思った。そうしたら、また丸太小屋を建て増ししなければならない。二人ぼっちだったアンゼリカとエレーナは大家族になる。
神よ、アンゼリカとエレーナに幸あれ。二人を見守ってください。