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あの怖くて温い二人乗りをもう1度したい。

もうすぐ夏が来る頃、少し暑い夜に私は初めてバイクを二人乗りした。夜遅くまで勉強して、冷蔵庫にあるもので安い野菜炒めを作ってふたりでうまいうまい、と言いながら食べたあとに、思い立ったように。出発は午前1時頃だった。彼がバイクを持っていることも知らなかった。免許を持っていたのか、わからなかった。前に座る彼の腰に掴まるだけで大丈夫だなんて信じられなかった。

「大丈夫だよ」という声がいつもより優しくて、やっぱりこのまま死んでしまうのかな、そんな幸せを一瞬で奪っていきそうな考えが頭をよぎった。

始めに、近くにある24時間営業のスーパーでハーゲンダッツを買った。彼にはおすすめが2つあって、柑橘系の味と甘い味どちらも食べたいと顔で訴えてくる。それが可愛くて私が溶けそうだった。私はバニラがよかったけど、おすすめの柑橘系にすることにした。

それからアイスの袋をぶら下げて、バイクに乗って公園へ向かう。道の途中、カーブが急だったりするとやっぱり落ちそうで、きゃあと小さく叫ぶと「まだこわい?」と聞かれるので、顔では怖いと頷き、口では「少し慣れてきた」と言ってみた。

たどり着いたのは草がぼうぼうに生えている、小さな寂れた公園だった。ベンチでアイスを食べた。風が髪の毛をふわりと吹き流し、草たちの間を通り抜けさわさわと吹いていた。気持ちの良い夜。

お酒がなくても、笑っていられて、くだらない話や大事にしたい話をするすると話せることは、私にとっての幸せだった。3つくらい蚊にくわれてもなんでもなかった。

そこでアイスを食べ終わっても最近のこと、少し嫌だったことなどを話した気がする。

帰り道には暴走族ごっこをした。信号はしっかり守るけど、彼があの家と決めた家の前でぶんぶん鳴らした。その家になにかあったらしいけど聞かなかった。

それ以来二人乗りを私はしていないが、たまに夜遅くにバイクでひゅるひゅると走り、あの不安だけど優しいぬくもりを感じたくなる。

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#恋愛小説  のようなものを書き始めました。

タイトルの最後に「。」がついているのは小説などです。

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yao
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