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私が初めて買ったメンズの白いタートルネックをこの冬一番見たかった。
ユニクロへ行く、たしか五反田の駅近くにあった。
「179センチ、Mサイズ」スマホのメモと店内とを交互に見ながら、うわヒートテックだけでもこんなにあるんだ、と困惑と少しのドキドキとを持ちながら自分より背の高い棚の前で立ち止まる。
Vネック、Uネック、半袖、タートルネック、形だけでこんなにあるのにさらに、ネイビー、白、黒、グレーなどと展開されている。しかも、普通のヒートテック、極暖、そして、超極暖と暖かさにも違いがあるなんて、聞いてなかった。
寒さに耐えうるヒートテックをば、と思いながらも、彼に似合うものでなければならないので、肌の色、彼の雰囲気など思い出し得るすべての情報をかき集めれば、白いタートルネックの極暖ヒートテックが、私の中の彼に一番似合った。
それからいくつかもう、いくつかVネックのヒートテックと(私は男性の着るVネックに弱い)、手袋や本などを買い込んだ。
それらをてきとうな段ボールに詰め込み、手紙などを書き、封を締め、彼への小包が出来上がった。
思えば彼に、今読んでいる小説をおすすめしてしまったことがきっかけで、私は小包用意することになった。誕生日が迫っていたこともあり、プレゼントに送ってあげることになったのだ。そうなれば本だけでは物足りないと思い、ほしいものを聞いてみると、「ヒートテックがほしい」と。
あなたのいる海の向こうにはユニクロはないのか、そうか、でもヒートテックは君のいる国で作られているようだ、不思議だ。とか思いながらも、国際郵便を送ることは私は初めてで、なんだかお洒落だし、そういうことを私にやってみたいと思わせる彼であったから、私は「いいよ」と送信した。
出来上がった小包を抱え、いざ送り出そうというとき、私は靴ずれをかばいながら、朝の東京駅を走り回った。朝九時すぎの新幹線に乗る前に、発送できなければ誕生日に間に合わない。予定も詰まっている、そんな状況で朝から国際郵便の送ることができる場所は限られていて、いくつかの運送業者の人に断られながら、靴下は血で染まっていても、私は無事に抱きしめられて汗の染み込んだ小包をやっと送り出すことができた。
一週間ほどすぎ、彼の誕生日に一日遅れて小包は届いた。嬉しそうな彼の声が入った動画が送られてきた。だけど、私はヒートテックが本当に彼に似合っているのか知らない。時差を飛び越えて、彼のもとに行かなければ、自分の目で私がドキドキしながら買った白いタートルネックを見ることができない。触れることもできないのだ。
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