27歳独身女のひとりごと 痔編⑤ 手術編-手術当日-
書き溜めすぎて更新がかなり遅くなってしまった。
多少記憶が薄れているところもあるが、ほぼ鮮明に覚えているので時間がかかっても最後まで走り切ることにする。
病院へ
午前は在宅で仕事をした。
午後は休みをとってある。共有のスケジュール帳にも【休み/病院/対応不可】と記入しており、盤石の体制である。
当日の食事制限はなく、昼は軽く食べておくようにとのことだった。
手術は15:00〜を予定していたため、昼に仕事を終え、家で録画を見つつゆっくりしたあと、美味しいランチを食べて英気を養う。
はずだった。
ここで緊急事態が起こる。
仕事が終わらないのである。
時間は刻一刻と迫ってきており、私の「ゆっくりタイム」がどんどん失われていた。
休む時に限って仕事が舞い込んでくるこの現象、そろそろ名前をつけるべきである。
結局、仕事が終わったのは家を出る時間の30分前でありお昼ご飯もままならない状態であった。
自炊している時間はなかったため、やむを得ず駅前の回転寿司を食べることにした。
爆速で注文が来る上、残り時間次第で食事を切り上げることができるため、時間のない時にはぴったりである。
英気を養うことを理由に、いつもよりいささか食べすぎた気もするが、美味しくいただいて電車に飛び乗った。
さて、この選択についてだが完全に悪手であったと言わざるを得ない。
手術前の寿司は言語道断である。
手術
受付時間ほぼちょうどに病院についた。
しばらくすると名前を呼ばれ、オペ服を着た看護師さんに手術着を渡され着替えるように言われた。
ロッカーの説明をされたのだが、全然頭に入って来ない。着替えの説明もされたのだがこちらも全然入って来ない。
極度の緊張からか恐ろしいほど聞き漏らしていた。
何をどう着替えるんだ…というまま、何度か聞き返し、ようやく全部着ているものを脱いで全裸で手術着に着替えることがわかった。
理解力皆無の私に看護師さんは優しく、これなら私の尻を任せられるぞと親子参観のような気持ちで、術着に着替え、オペ室へと向かった。
手術姿勢はジャックナイフ位というようで、うつ伏せになって尻穴を開く形であった。
色々補助されてジャックナイフ位になった後、看護師さんにお尻を左右から引っ張られ、尻穴が丸見えになった。やはり少し恥ずかしかった。
チラリと見るとガムテープで引っ張って太ももを止められており、無理矢理感とアナログ感にすこし笑ってしまった。
局所麻酔なので下半身は動かしてはいけないが顔や上半身は動かして良いらしい。しんどくなってきたら適宜動かしてね、とのことだった。ADHD傾向のある私にはありがたい話であった。
パシャパシャと何枚か術前写真を撮られているうちに豊本が現れて、何やら軽く看護師さん達と打ち合わせをしたあと
「麻酔するね〜」と注射を打たれた。
痛い。
これが結構痛い。
歯をぐっと食いしばって力んで耐えた。
ンダ!みたいな声は出るので、一応覚悟しておいた方が良い。
少し触診をされたあと、「肛門鏡入れますね〜」とぶすり。
いよいよか〜と思うと同時くらいに、ああああああ待ってくれ死ぬ!!!う○こがでる!!出る出る本当にでる!!!!死ぬ!!え!まじでう◯こがでる!尻穴がちぎれ飛ぶ!!!痛ェ!!!!と心が叫びたがってるんだ状態。
「ちょっとまってください!無理です!ちょっと抜いてください!痛い!ちょっとタイム!」
と、突然苦しみ出した私に、手術室にちょっと微妙な空気が流れたが、すぐに肛門鏡を抜いてもらい一息つく。
私のケツ穴の緊張がすさまじいことになっているようで「うーん…」という微妙な空気が流れる。
緊張をとるためか看護師さんが私の尻を優しく左右に揺らしており、私の尻がだらしなくたぷたぷしている。
もう恥ずかしさなんてとうに消えているので、私も尻の緊張がとれることを祈りながら尻の揺れに身を任せた。
数十秒揺らされたところで、麻酔が追加された。
麻酔がある程度効いていたからか今回は多少の痛みで済んだ。
暫くするとなにかしらされている雰囲気は感じるものの、ほぼ何も感じなくなった。
「ここ痛いですか?」「これはどうですか?」と優しく声をかけてチェックされたが答えは全てNo。
なんとなく触られているような感覚はあるようなないような。
局所麻酔で意識はハッキリしているので、手術中の指示や私への声掛けは聞こえる。
私は緊張していたこともありがっつり起きていたが、手術慣れしてる方や極限まで眠い方は寝られる程でないだろうか。
ガッツリ起きていたので
「なんか切れ味悪いな…笑」
という声もばっちり聞こえていた。
そんな不安になるようなことを言うなと心の中で悪態をつきつつ、手術は順調に進んで行った。
限界come on
手術は滞りなく進んでいた。
だがここでふと気づいた。
確実に私の限界が近づいている。
チラッと手術時間を見ると既に40分が経過していた。
先述の通り、私にはADHDの傾向があり長時間大人しくしているにはかなりの心労が伴う。
そして、シンプルに同じ体勢をとり続けることがキツくなってきたのである。
それに加えて昼間の寿司のせいで、体がとてつもない勢いで飲み物を欲していた。
『喉から手が出る』という言葉をこれ程までに体感したことはない。
私は心も体も刻一刻と限界に近づいていた。
「体勢しんどくないですか?」と異常に力んでいる私を心配してか看護師さんが声をかけてくれる。
「上半身とかテキトーに動かしちゃってくださいね〜」
それは存じ上げていたが、大の大人が色々と動くのはちょっと…と思い、ここまで我慢していた。だか、この状況下で上半身を動かす許可は、地獄で仏、渡りに船。
言われたから動かしました風に上半身のポーズチェンジをした。
これだけでもかなりしんどい状態は緩和された。
だが、まだまだ手術は続くのである。
1回体を動かしたからか、体の方も「あ、いいんすか?」てな感じでどんどん動きたくなってくる。
体勢を随時変えていたのだが、その間隔がどんどん短くなってきており、傍目に見ても私が限界ということは分かるようになってきた。
喉も砂漠のようになり、唾液もほぼ出ず、唾を飲み込んで渇きを凌ぐのも限界になっていた。
はじめはチラチラとタイマーを見ていたくらいだったがこの頃にはタイマーをガン見していた。
まだ45分を過ぎたところで、先程の苦悩からまだ5分少々しか経っていないことに絶望。
限界の私を見かねたのか
「もう少しで終わりますからね〜」
と豊本が声をかけてきた。
もう少し…本当にもう少しなんだろうな?
マラソン大会のラスト1kmくらいを『もう少し』と言う、極悪非道の体育教師マインドを持っていないことを切に願いながら、タイマーをガン見して意識をそちらにとばしていた。
その刹那、尻穴から若干の痛みを感じ始めた。
ピリピリというか、チクチクというか、じんじんというか…痛みの感覚が夢から覚めたような。徐々に戻ってきたような感覚。
「あのなんかちょっと痛…えっ痛いかも…しれないです」
という私の告白が手術室に漏れた。
「もう麻酔切れてきたかな?もう少しで終わるからね〜」と豊本。
え?麻酔が切れてきた?そんなことある?
麻酔なしで尻穴をいじられるなんてたまったもんじゃない。
頼むから早く終わってくれと心の中で豊本を急かす。
手術終了
「はい終わりましたよ〜お疲れ様でした〜」
やっと終わったのが手術開始から53分ほど経過したところであった。
この時にはなんとなく痛みの感覚があり、麻酔が切れかかっていることが実感できた。
患部まわりを拭いてもらっている間、オペを担当してくれた看護師さん2人が
「おしり!すごい!筋肉質でした!」
「すっごいキュッと引き締まってて固くて…!ぷりっとされていて女子の理想のおしりっていう感じですよ!」
「ね〜!引き締まってるおしりです!何かスポーツされてました?」
「あー!ダンスされてたんですね!やっぱり〜!すごい女子の理想のおしり〜!」
と散々尻を褒めてくれた。
生憎、私は小尻ではなく、100人中95人が大尻というであろう、デカい尻なのだがここまで尻を褒められたことがなかったため、尻もろとも恐縮しっぱなしであった。
ここまで褒められたのであれば手術で尻を晒した甲斐もあるなと喜びもひとしおであった。
手術台から降り、
「歩けますか?」「大丈夫ですか?」と諸々温かいお声をいただいたが、カラカラの声で
「み…お水をいただけますか…」としか答えられず、大急ぎで水をいただくことになった。
手術前に寿司なんて食べるものではない。
本当に喉の乾きで死ぬかと思った。
水を貰い本当の意味での生還を果たしたところで、手術着から私服に着替え、待合室で待つように促された。
待合室に向かう廊下で私は確信していた。
確実に麻酔はもう切れている。
そしてめちゃくちゃに痛い。
これは長い戦いになりそうだ。
ということを。