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【ジャニーズ問題】SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)債務不存在確認訴訟 元Jr. 田中純弥さん会見

本記事は、「SMILEーUP.(旧ジャニーズ事務所)」が元所属タレントの田中純弥氏に対して提起した債務不存在確認訴訟の第1回口頭弁論後に、田中さん、元所属タレントの野中和久さん、大堀治樹さんが行われた会見の内容をtranscriptで文字起こし後、原文の主旨は変えずに、読みやすいよう編集を加えたものです。

これまでの経緯

現在、田中氏は米国ネバダ州クラーク郡の裁判所において、「SMILEーUP.」や旧ジャニーズ事務所の元幹部らに対し、総額3億ドル(約460億円)以上の賠償を求める訴訟を起こしています。これを受けて、「SMILEーUP.」側が本国内で債務不存在確認訴訟を提起したとされています。

債務不存在確認訴訟とは?

債務不存在確認訴訟とは、債権者(補償金を請求する側)が「あなたは補償金を支払う義務がある」と主張するのに対し、債務者(補償金を請求された側)が「そのような義務は存在しない」として裁判所に確認を求める訴訟です。
この訴訟が使われるケースとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 事故や契約違反に関する補償金請求を受けたが、支払う義務がないと考える場合

  • 保険会社が保険金の支払い義務がないことを確認するために提起する場合

  • 不当な請求や架空請求を受けた場合

裁判で勝訴した場合、正式に「補償金を支払う義務がない」と認められ、請求を拒否することができます。

今回の訴訟の問題点

「SMILEーUP.」は田中氏が米国ネバダ州で訴訟を起こした翌日に今回の訴訟を提起しており、故ジャニー喜多川による性加害事件が米国での裁判へと拡大することを阻止する目的で本訴訟を起こしたのではないかという点が問題視されています。

なお、実際の会見では複数の記者が質問を行っていますが、媒体名・記者名などは省略しています。

ではさっそく会見内容を見ていきましょう。

――今日、田中さんが直接法廷でコメントを読み上げ、その中でジャニーズ側に対して直接呼びかけている点が非常に印象的でした。今日、そのメッセージをどのような思いで伝えたのか、それに対するジャニーズ側の反応、また裁判所や裁判長の反応ついて、どのように感じましたか?
 
田中さん
「今日、いろいろと準備してきた長い文章がありましたが、一番伝えたかったのは『なぜ被害者が訴えられなければならないのか?』ということです。そして二番目に、『被害を受けたネバダ州で正々堂々と戦ってほしい』という思いでした。スマイルアップさんは『適切な管轄地で』とおっしゃっていますが、それは加害者が決めることなのでしょうか? それについて、僕の中で疑問があり、とても主観的な表現をされていると感じましたので、その点を指摘しました。最後に、親のことや本当に心の奥深い部分についても少し話しました。しかし、それを途中で話してしまうと、涙で後半が言えなくなってしまうので、本当に最後に伝えることにしました。親や周囲の人々はどう思っていると思いますか? そして、僕がどう思っていると思いますか? 当時の僕の気持ちを知っていますか? 皆さんの子どもがもし同じ目に遭い、とても苦しんでいるのに、さらに加害者から訴えられたら、どう思いますか? その問いを投げかけました。本心で話しましたが、涙が込み上げてしまい、あまりスマイルアップさんの顔を見ることができませんでした。」
 
――スマイルアップ側の一番右にいたのは、(西村あさひ法律事務所の)木目田さんという弁護士で、ジャニーズの会見にも2度登場した方です。しかし、彼は全く目を合わせず、下を向いて田中さんの方を一切見ませんでした。それについてどう思いますか?
 
田中さん
「悲しい限りですね。」
 
――(木目田弁護士に対して)皆さんに(ジャニーズ事件の)全容をなぜ明らかにしないのかという点について聞いてみましたが、一切コメントせずにタクシーに乗り込んでいきました。今日の態度を見て、改めてスマイルアップに伝えたいことはありますか? なぜ日本では全容解明が難しいのか? それについて(田中さんは)強く望んでいると思いますが、その点についてどうお考えですか?
 
田中さん
日本では本当にすべてが隠されているんですよね。今回の問題だけでなく、それとは別のことに関しても、すべてが隠されていて、本当はもっと広い範囲で全部報道できればいいのにと思います。しかし、今回の件に関しては少し制限されている部分もあるんです。旧ジャニーズ事務所が行ってきたことは、性被害以外にも多くあります。どこまで明らかになるのか分かりませんが、いろんな大人たちが不当な形で解雇されてきたという現場も見てきました。本当はもっと広い範囲で話したいのですが、今回は僕の話であるネバダ州の件について話しています。今回の性被害やその他の問題に関しては、ネバダやアメリカで(裁判を)行ったほうが隠蔽されることなく、すべてを提示しなければならない状況になるらしいのです。だからこそ、正々堂々と、嘘のない形で向き合ってもらいたいという気持ちが一番強いです。そして、それができるのは日本ではなくアメリカだということです。」
 
――裁判長の反応についてどう思いますか? 頷きながら聞いていましたが……。
 
田中さん
「ああ、そうです。7回ほど目が合いましたが、頷いていただきました。何かしらの反応はありましたね。そうですね、でも僕も感情があふれていたので……それでもしっかりと目を見て聞いてくださっていました。」
 
――あと、お二人(野中さん、大堀さん)ですね。今回出てこられたことで、こうして3人が立ったというのは強いメッセージになったと思います。どういう思いでこの場に来ることを決め、社会に向けてどのようなメッセージを伝えたいですか?
 
野中さん
「そうですね。一緒の気持ちです。やはり加害者が被害者を訴えるということ自体が少しおかしいと感じています。」
 
大堀さん
「僕も当時関西ジュニアの頃、(田中さんは)本当にお世話になった先輩でした。入った時から当時の関西ジュニアを引っ張っていってくれた存在でした。今回、声を上げたことに対していろんな意見があるとは思いますが、やはり事実が明るみに出た上で、それがネバダ州だろうが日本だろうが、適切に向き合っていただきたいと思います。それに、何よりも驚いたのは、被害者が訴えられているということです。今回の状況がどうなっているのか、自分自身もっと知りたいという思いもあり、足を運びました。」
 
~中略~
 
(ここで、法廷で田中氏が裁判長に見せた、当時の自身の写真を取り出す)
 
田中さん
「僕が14歳の時の写真です。」
 
――あれ(法廷で当時の写真を見せること)は自分で考えたんですか?  裁判長たちも聞いていましたし、スマイルアップ側もその瞬間、皆さん見ていたと思いますが。
 
田中さん
「そうですね。やはり、難しい言葉を使って裁判長に伝えるよりも、当時の気持ちを思い出して話すことが、一番心の声が出ると思いました。だからこそ、その方法を選びました。友人たちも見に来てくれていましたし、当時の気持ちを思い出しながら話そうと思いました。(当時の写真では)笑ってはいるけれど、本当はすごく辛かったです。裏ではかなり苦しんでいました。僕は他の友達のことを話せないのが、正直すごく難しい部分ではあります。でも、みんな笑顔でいようとしていたけれど、本当は辛かったと思います」
 
――お二人(野中さん、大堀さん)にお伺いしたいのですが、今日この場に出てくることは決して簡単なことではなかったと思います。それでも、こうして多くのメディアの前に立たれようと思ったのは、どうしてなのでしょうか? 先ほどの話と重なる部分もあるかもしれませんが、改めてお聞かせいただけますか?
 
野中さん
「仲間なんでね。だから、さっきも言いましたけど、『なんかおかしいな』と思って、『なんでなんやろ?』っていう気持ちで来ました。」
 
大堀さん
「僕ももちろん仲間ですし、お世話になった先輩という存在でもあります。当然、その関係性もありますが、それだけではなく、(田中さんは)嘘をついたり、事実ではないことを発信しているわけではありません。もし何か事実と異なることを言っているのであれば、訴えられることもあるかもしれませんが、そうではないのに、被害者と加害者の関係性がなんだかおかしくなっているように感じてしまいます。やっぱり、そこにどうしても違和感を覚えるので、公正にしっかり向き合ってくれているのか? もしそうでないなら、しっかり向き合ってもらいたいという思いで、今日はここに来ました。」
 
――スマイルアップの訴えというのは、自分たちが用意した枠組みの中でのみ被害の訴えを受け付け、それ以外は認めないということだ思うのですが、その主張について、どう思われますか? 田中さんは、スマイルアップが用意した枠組みではない(対応を望んでいるのにも関わらず)、それを押し付けられていると感じているということですよね。
 
大堀さん
「それについては、まず被害者側が『押し付けられている』と感じていること自体が1つの事実だと思います。そして、ネバダ州で被害があったことに対して訴えを起こしているのもまた事実です。日本だけで対応してほしいというのはどうなのか、(日本での加害にも海外での加害にも)どちらに対しても等しく向き合うべきではないかと、今日話を聞いていて個人的に思いました。適切な管轄地についてですが、それはやはり加害者側が自由に決められるものではなく、世界のどこであっても、事実として被害があった場所が適切な場所なのではないかと考えます。」
 
――先ほど誹謗中傷の話もされていましたが、この報道が出た後の世間の反応について、ネット上の反応が中心かと思いますが、そういったものをご覧になったりしましたか?
 
大堀さん
「正直、僕自身はSNSで情報を追いかけたり、積極的に拾おうとしたわけではありません。ただ、やっぱり『お金目当てだ』とか、そういうことではないと僕は思っています。声を上げることには、すごく勇気が必要だったはずです。(田中さんに対して)いろんな憶測が飛び交い、事実とは異なることが言われたり、(田中)純弥くんが嘘つきかのような文言がSNSに書かれているのを見ると、やはり心が痛みます。」
 
田中さん
「これによってさらに誹謗中傷が増え、裁判で訴えられ、それによってまたさらに誹謗中傷が繰り返される……この負の連鎖がとてもつらいです。それに、スマイルアップ側のファンの子たちが、僕や僕たちに対してひどい言葉を投げかけてくるのも、本当にしんどいです。でも、逃げるわけにもいきません。
 
――今回の件について、時効の問題で補償の枠組みを押し付けられてしまうからこそ訴訟を起こしているというお話をされていたかと思います。この「時効」に関して、こうして訴えを起こさなければならなかった理由について、改めてお考えをお聞かせいただけますか?
 
田中さん
「スマイルアップ側は『法を超えた補償をする』とおっしゃっていますが、そもそもネバダ州には消滅時効の壁がないため、法を超える必要はないと思うのです。法のもとで戦い、向き合っていただければいいのではないでしょうか? 日本では、最終的に『(事件の全容について)これ以上は言えない』とされ、補償の内容や金額の根拠がブラックボックスになってしまっています。しかし、それらの詳細を明らかにするべきです。被害を受けた方々に対して、『これはこういう理由で、あなたにはこういう補償が適用されるのだ』と、しっかり説明するべきではないでしょうか? 僕の友人たちも、『なぜ自分はこの金額なのか?』と疑問に思っています。それについて説明をしっかり行うことこそ、被害者に寄り添うことであり、誠意を示すことだと思います。それができない、あるいはしないのであれば、法のもとですべてを明らかにしてください。それが、僕の求めていることです。
 
――ご自身が受けられた被害についてお話しされるのは、精神的にとても辛いことではないかと推察します。先週の記者会見、そして今日も法廷でお話しされるということで、精神的な負担も大きいかと思いますが、この間、どのようなお気持ちで過ごされているのでしょうか?
 
田中さん
「最初に被害者救済委員会に行くときは、一人では心細かったので、弁護士さんと一緒に行きました。そこで初めて自分の被害について話しました。それから、被害者救済委員会で話し、次に相手側の弁護士さんに話し……と、こうした場面がこれまで何度もありました。そして、今の弁護士さんにも話さなければならないし、アメリカの弁護士さんにも話さなければならない。先日の記者会見のときも、本当は極力話したくなかったですし、正直、聞かれたくもないし、書かれたくもないんです。親がこれを見たらどう思うのかと考えると、やっぱり言いたくないし、思い出したくもないことです。今日も(法廷に)傍聴席がありましたが、『この人たちの前で自分のことを話さなければならないのか』と思うと、とても嫌な気持ちになります。昨日までずっと『嫌だな』と思いながら過ごしていました。でも、言わなければ伝わらないし、何も始まらない。だからこそ、勇気が必要なのかもしれませんが、言わなければ前に進めないし、伝わらないんですよね。ただ、本当にきつい言葉は極力避けてほしいということは、弁護士さんにもお願いしています。『被害』や『性被害』といった表現にしてもらいたいと思っています。もっとひどい言い方もあると思いますが、それは今の自分にとっても抵抗があります。今でも、人前でこうした話をするのは精神的にとてもつらいですし、体が震えることもあります。でも、言わなければならない。

https://www.youtube.com/live/keFTPwI3k3o?si=dNeudgg2g00146Mr

今回の訴訟を取り上げたニュース記事には、被害者を気遣うコメントが寄せられる一方で、批判的なコメントも数多く見受けられました。なお、記載したコメントは内容を要約したものです。

擁護的なコメント

被害者をひとまとめに処理しようとしても、彼らは1人1人心のある人間。それを組織がわかっていない。

加害者側が被害者を訴えるのはおかしい。

批判的なコメント

3億ドルもの賠償を求め、しかもアメリカで訴訟を起こすというのは理解しがたい。

加害者が生きているうちに声をあげて戦わなかったのは、自分にも責任がある。

金銭絡みの揉めごとで同情者も離れていく。この事件で目立つのは人気のないメンバーばかり。

事件発覚当初から、SNS上では被害者に対する批判コメントが多く見受けられますが、本当に罰されるべきは、「子どもの夢を人質にして加害を行ったジャニー喜多川とそれを見逃してきた関係者たち」、「夢を人質にとられて加害を受け入れざるを得なかった子どもたち」、果たしてそのどちらなのでしょう。


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