海外大の受かり方 エッセー編
1.エッセーについて
海外大受験の三本の矢のうち二つは前回と前々回の記事にてお話ししました。三本目はエッセーなのですがいかんせん一つの記事にまとめるのが難しく何回かに分かれることになると思います。なぜそんなに難しいのかと言いますと単純に書く内容の個人差と量があまりにも多いからです。しかし、どのようなエッセーも根底は同じで「自分はこういう人間でありこの大学に合格させてほしい」ということを伝えるための文章となります。課外活動の選び方でも少し「大学が欲しがる人材であることを示す」ことの重要さを説明しましたがこのアイデアが光るのはエッセーです。エッセーとは自分のことを自分の言葉で語れる唯一の場です。同じ「数学が好き」な人間でも「ただただ数学ができるだけ」の人と「幼いころから数学の世界に魅力を感じ努力をしてきた」人が違うのはわかると思います。数学の成績や数学オリンピックの結果だけでは見えない違いを見せに行くにはそうエッセーに書くしかありません。どのようなエッセーを書くにせよ成績や課外活動で書かれた輪郭に色を塗る、ということを意識しなければなりません。この記事ではエッセーを書くにあたりどういう進め方をすればいいのかを筆者や同級生の体験、そして多数の生徒を合格に導いたプロの言葉をもとに説明していきます。
2.エッセーの下準備
まずエッセーを書く前にやらなければならないことが複数あります。第一歩としてはエッセーの数の確認です。大学によって書かせるエッセーの数はピンキリで一つしか書けないところから十個前後書くことのできる場合があります。また志願の方法によってもエッセーの数は異なってきます。細かいことはまた別の記事で解説しますが大学によって独自のプラットフォームがあるところやCommon Appのような日本でいうUCAROのような存在から応募するところがあります。Common Appは共通のエッセーと学校ごとのエッセーに分かれ、共通のエッセーだけで受験させられるところから質問が六つ用意されているところなど様々です。University of ChicagoやMITなどの例外を除き話題が似通っている設問が多いため書くエッセーの量は大体15~20くらいになります。基本骨子を作ってそこから各校の設問の細かな違いや文字数制限にあわせて変えていく形になります。また、設問について深く考える前に自分がどういう人物かをとりあえず文章にしてみることをお勧めします。「自分はどんな人間だと思われたいか」を嘘にならない範囲で一度言語化してしまうのが一番早いです。箇条書きでもいいので数学に情熱がある、テニスなら誰にも負けない、など書いくとエッセーのパズルピースがそろっていくので設問に合わせて自分の好きな絵のパズルを組んでいく形でエッセーを書く準備をします。ここまでやってから初めてエッセーに取り掛かります。
3.エッセーの書き方
エッセーの設問は様々あり、「なぜうちの大学を受けることにしたのですか」という普遍的なものから「0で割り切れるものの例を挙げなさい」という変化球(さすがはUChicago)まであり書き方を一概にいうことはできません。よってここでは2021-2022のCommon Appの設問の一部を使ってどういう考え方でエッセーを作ればいいのかを解説していこうと思います。似たようなエッセーであれば同じ考え方でいけます。変化球な設問は型にはまった考え方でなく個人個人の受け取り方や思慮深さを計っているので自分なりの回答を出すことを意識しましょう。例えば「人類の数に比べれば一人というのは限りなくゼロに近いけれど人間はそれぞれにそれぞれの価値があり、個のレベルまで分割できる。だからこそ人ひとりを救うことの価値は計り知れないし人を救える立派な医師になりたい」など最後には自分についてのエッセーにすることが大事です。
1.Some students have a background, identity, interest, or talent that is so meaningful they believe their application would be incomplete without it. If this sounds like you, then please share your story.
これは割とスタンダードな設問です。自分を自分たらしめる人生の転換点や体験、そして境遇などを書くものです。ベタなやり方でいけば日本人であることに誇りを持っているから子供のころから慣れ親しんだ伝統を海外に伝えたい、みたいなことを書くわけです。しかし、あまりにもベタすぎるエッセーは書く価値がありません。あなたが例えばハーバード大を受けるとして57,000人もの生徒が受験している以上(2020-2021度のデータ)あなたがエッセーが100人に1人のエッセーだとしてもアドミッションオフィサーは似たようなエッセーを570個も読むわけです。こういうエッセーは自分しか体験したことのないものを語り、それがどう自分を変えてきたのか、その証拠に自分はこれまでどういう行動をとってきたか、大学ではどのような人間として成長していくのか、そしてそれが大学の、ひいては社会の役にどう立つのかを書くわけです。オリンピック級の特大の才能を強調する場合や今までにあった類を見ない不幸とそれを乗り越えた体験談を書く場合もこの設問を選んでエッセーを書きましょう。大事なのは自分を形成する要素の紹介に留めずそれを踏み台にどんな人間性がでたのかやどんな役に立つ人間なのかなど、大学にアピールしたい部分を重点的に書きましょう。
2.Reflect on a time when you questioned or challenged a belief or idea. What prompted your thinking? What was the outcome?
アメリカの大学は革新をおこす生徒を求めており我を貫ける鉄の意志と鋼の強さをもちなおかつ周りを引っ張るリーダーシップのある生徒を欲しがっています。というのは半分建前でポリコレに順応していることを証明する機会であるととらえることもできます。アメリカは現在大ポリコレ時代にありそれに反する行いは不祥事とみなされます。最悪の場合生徒を退学させざるを得ず大学としてはなるべく今の時代に沿う人間を入れたいのです。「日本では女性の権利が軽視されがちでそういった発言をした人を改心させた」なんてエピソードでもあれば書きましょう。しかし、おそらく10,000人が同じこと書いてくると思われるので個人的に避けた設問です。もちろん、この設問に沿う自分だけのエピソードがあれば一番目の設問と同じ書き方でいってください。
3.Describe a topic, idea, or concept you find so engaging that it makes you lose all track of time. Why does it captivate you? What or who do you turn to when you want to learn more?
人間趣味や情熱で自分を語る奴が一番信頼できると筆者は考えています。この設問は至極単純に自分の情熱を好きに語るものです。このタイプの設問が一番書きやすく一番書きづらいと思います。誰でもあれが好き、これが好き、など書けはするのですがさてほかの生徒と違うものをかけるかと言ったらこれが難しい。例えば筆者の場合生物が好きであることを書いたのですが生物を専攻したい人間は数多いるなかで個性を出すのは至難の業でありました。だからこそ自分しかやらないような研究や生物オリンピックの成果などや思い出話などを含めることでただの生物好きではなく大学卒業後も見据えた目標を持っていて目的のためなら努力を惜しまない人物像を前面に押したうえで大学で勉強を頑張っていく旨を書きました。個性を出しづらいと感じるなら避けるべき設問でしょう。しかし、この設問で「情熱がある」「大学でやりたいことのビジョンがある」「やりたい理由(継続する理由)がある」「人に頼ることができる(行き詰ったときに潰れない)」ことをすべて言えるのでかなりお得な設問でもあります。
このようにどの設問であっても書くことの根幹は一緒なのでここで書いたことを参考に自分なりのエッセーを書いてください。
4.おわりに
言ってしまえばエッセーに正解はありません。毎年多くの生徒がゴミのようなエッセーを量産しながらああでもないこうでもないと推敲をしそのうち形になったものを提出します。ただ誰にでも当てはまるは二つあります。一つはプロにエッセーを添削してもらうことです。この場合におけるプロとは英語教師のことではなくアメリカ大学受験のエッセーのプロのことを指します。僕の場合は学校にカレッジカウンセラーなるものがいたのでその人に見せるだけで済みましたが人によっては専門職の人に年数百万払って見てもらうこともあります。詐欺に近いものも多くおすすめできるものではないのですが受験戦争がここまで激化するなかどうにか子供を大学に入れたいともがく人が多く、かつプロに添削してもらうエッセーを超えるものを書けるかと言ったら微妙なところです。二つ目はどうせ下書き一発目のエッセーはカスなので最初からいいものを書こうとしないことです。最初から完璧を作ろうとして何時間かけてもエッセーが全く仕上がらないということが多々あります。断言しましょう、最初から良いものが書ける可能性は0です。諦めてとりあえずアイデアを列挙するだけでも違うものです。原石が最初から彫刻になっていないのと同じで下書きは推敲していって初めてクオリティが上がるのです。完璧でないのを思い悩んで推敲にすら至らないというのがカレッジエッセーにおける最大の不正解だと思います。一番時間をかけるべきところは下書きではないということに注意してエッセー作りを頑張ってください。