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【事務局座談会】「APK STUDIES」鋭意準備中!2025年春に戸田建設が京橋で新たにはじめる学びの場(前編)

2024年11月に東京・京橋に新しく誕生する「TODA BUILDING」。ビルの開業と共に、戸田建設はアート事業「ART POWER KYOBASHI」を本格始動します。
APK STUDIES(以下、スタディーズ)」は「ART POWER KYOBASHI」のラーニングプログラムとして、アートでつながる新しいコミュニティ形成を目的とし、自分にとって切実に必要な創造力を育む学びの場です。ファシリテーターにインディペンデントキュレーターの青木彬さんを迎え、よりよく生きるための自分と社会との関係性を捉え直し、再構築するプログラムを目指します。第1期の申込み開始は2025年2月の予定です。
このnoteでは、プログラムのお知らせや事務局による活動レポート、プログラムの裏側をお伝えする記事を発信していきます。初回は第1期の始動に先立ち、戸田建設のアート事業全体の経緯や、どんなコミュニケーションを経てプログラムを構想してきたのかを事務局による座談会からご紹介します。

APK STUDIES事務局

アート事業「ART POWER KYOBASHI」とは?

一般社団法人藝と 宮﨑有里(以下、宮﨑):みなさん今日はよろしくお願いします!事務局の一員で、noteの執筆を担当する宮﨑です。私が聞き手となって、スタディーズのことをお聞きできたらと思います。まずは「ART POWER KYOBASHI」とはなにか、全体の概要を改めてお話しいただけますか。

戸田建設 久木元拓(以下、久木元):ART POWER KYOBASHI(以下、APK)」とは、2024年「TODA BUILDING(以下、TODAビル)」のオープンとともに始まる新たなアートプログラムの総称です。まちの価値が文化の厚みで決まるのならば、そこに必要なのはアートの力。新しいビルを運営するにあたって、アートの力を活用してビルのブランディングや、街の人々との交流や還元を生み出せたらと考えています。

2024年11月にオープンする「TODA BUILDING」(28F建て)。6Fまでの低層階は、ミュージアム・ホール・ギャラリー・ショップで構成される気軽に立ち寄れる芸術文化の複合施設になる。7Fより
上階は戸田建設の本社や、外部の賃貸オフィスとして運用される。(画像:APK WEBサイトより

戸田建設 岩澤夏帆(以下、岩澤):開発するにあたって、街への還元は建設会社としてすごく重要な責務だと思います。なので、誰もが気軽に立ち寄れる低層階にアート作品を展示したり、レクチャーやワークショップを開催するなど、街の人にも参加していただける活動をしていく予定です。また社内にも新たな刺激が広がると良いですよね。社員も作品のあるエントランスロビーを通って出勤するので、アートが身近な存在になることでなにか気分や心境に変化があると嬉しいですね。

戸田建設株式会社 京橋プロジェクト推進部・岩澤夏帆。KYOBASHI ART WALLの展覧会なども担当。前職はフリーランスで神奈川県を中心に、展覧会のコーディネーションやアートスペースの運営に携わる。 

ファシリテーター 青木彬(以下、青木):APKについて、僕は踏み込んだ企業のアート事業だなと感じています。パブリックアートを置いて終わりではなく、キュレーターやアーティストを変えて更新されたり、ビルの共有部がまるで展覧会のような場になるなど、ビルを舞台にした新しいアートビジネスのモデルになりそうですね。

久木元:そうですね。建物を建てたら終わりではなく、建ててから始まる事業のモデルケースになると期待しています。この場所から様々なアーティストが育ち、発信し、評価され、その仕組みの中でアートが人々の生活の生きる源となる。そんなアートによる街のエコシステムの構築を目指し、都市を更新し続けるアートの力を育んでいきたいですね。

事務局メンバーの関心を知ることからはじまったプログラム準備期間

宮﨑:すでにAPKの活動としては、先行プログラムの「KYOBASHI ART WALL」や「Tokyo Dialogue」、トークイベントなども実施されていますよね。より詳しく知りたい方はウェブサイトでチェックしてください。
そして今まさに我々が第1期始動に向けて準備中のスタディーズは、まだ詳しくお伝えできないことも多いと思いますが、APKの中でのスタディーズの位置づけやどのように始まったのかをお話しいただけますか。

画像:APK WEBサイトより

久木元:アートによるエコシステムの構築には、「創作・交流」「発表・発信」「評価・販売」の3つの段階があります。まずは作り、それを皆さんに見せること、発信すること。そして、それを社会にちゃんと還元していくこと。誰かが評価して、それに対してちゃんと価値づけてくれる人がいて、 その価値がまた新しい創作、発表を促していくというような循環を作っていく。
この一番最初の「何かを考えてつくる」人が育つ場所を主力として担う事業を立てるべきと考え、みんなが集い学ぶ場所としてスタディーズを考えたのが始まりでした。

戸田建設株式会社 京橋プロジェクト推進部・久木元拓。シンクタンクでの文化事業のコンサルティング、オルタナティブスペースでの事業企画運営、アーツカウンシル東京シニアプログラムオフィサー等を経て2020年4月より現職。

青木:企画が始まった最初の数ヶ月は戸田建設のみなさんと「オルタナティブなアートスクール」や「これまで参加したことがある教育プログラム」などについてブレストを重ねました。戸田建設のみなさんからしたら「そんなことから話すの?」と一体どうなっていくのか見えづらくて心配だったと思うんですけど(笑)。でもそのプロセスによって、みなさんが色々なスクールへの関心や参加の経験があることも分かり、メンバーそれぞれの人となりを知る上でも大事な議論でした。戸田建設の皆さんはたくさん意見を出してくださるので、そうした個人の関心を聞き取ることも大事にしました。
僕はいつもプロジェクトをはじめるときに、そこにいるメンバーでしかできないものを作りたいと思っています。今回も僕がディレクションして決めるのではなく、ファシリテーターとしてまずは戸田建設のみなさんの関心を引き出すことを大切にしています。

スタディーズファシリテーター・青木彬。一般社団法人藝とディレクター。アートを「よりよく生きるための術」と捉え、アーティストや企業、自治体と協同して様々なアートプロジェクトを企画している。

岩澤:青木さんがファシリテートしてくださった打ち合わせの中で、社員同士でそれぞれの知らなかった関心や考えを共有できたのが面白く、重要だったと思います。スクールの先行事例を見ながら、我々独自の学びの場ってなんだろうと何度も考える中で、社員同士で意見を出し合ったことが共通認識を持つことに繋がり、スタディーズ全体の土台づくりになりました。すでにいろんな学びの場があるので、「スタディーズでやる意味とは」「TODAビルで/京橋でやる意味のある学びの場とは」という問いに何度も何度も立ち戻りました。さらにはただ学んで終わりではないコミュニティを育み、他の事業にも参加していただいたり、人と人が繋がっていくことも目標のひとつなので、さまざまな要素を成立させるプログラムを考えることはなかなか大変ですね。

久木元:今はまだ輪郭がぼんやりとしていますが、今後プログラムが成熟していけるように5年10年と続けられる仕組みや体制、資金を維持していきたいですね。実際にスタディーズに関わる我々がちゃんと問題意識を持って、その問題に対して真摯に向き合う。その意識自体がこの事業のコンセプトを形作ると思っていたので、そういったことを考え話し合える場や時間を持つことができたのはすごくありがたかったです。

講座のテーマについてディスカッションしている様子。
「食」や「法務」「メタバース」など、それぞれの興味関心を出し合った。

宮﨑:青木さんにファシリテートされて、社員の皆さんの興味関心を共有をして、 隣の人はこう思っていたんだ!と気づいたり、新たな問題意識を持ったり…まさにスタディーズの原型のようなプロセスを経ていたんですね。

久木元:そうですね。なにか自分が「もやもや」していたり、課題を持っていたりとか、これはどうだろうなと思っていることを、素直に言える場ってありそうでない。それを自分の中で解きほどく方法を考えたり、そのために必要な仲間に出会える場にスタディーズがなると良いなと思っています。

スタディーズのアイデンティティを象徴するロゴを発表!

宮﨑:今回この記事でスタディーズのロゴがお披露目になります!こちらです!青と黄色が映えるかわいいロゴですね。雲のように浮いた文字と黄色い四角形で構成されていますが、このロゴはどんな会話から生まれたものなのでしょうか。

APK STUDIES のロゴ。
デザインはAPK全体のアートディレクションも担当している大西隆介さん率いる directionQ。

岩澤:TODAビル3Fの「APK ROOM」というスペースがスタディーズの活動拠点となる予定で、そこに参加者が集って、自発的に発言したりやりたいことをやったりするイメージがピクニックのような場だと話し合ってきたことから、黄色いレジャーシートのイメージが生まれています。一方で青色のAPKと雲のような要素は、人が集っている様子やキーワードの「もやもや」が表現されています。いろんな人が集い、それぞれの関心を持ち寄って楽しく交流できる場のイメージです。

青木:APK全体はスタイリッシュなデザインですが、スタディーズのロゴは楽しげな雰囲気になりましたね。スタディーズはアートを専門としている方に限らず、色々な方に参加していただきたいので、敷居を下げて親しみやすいイメージが合っていると思いました。また参加者の個人的な関心を扱ううえで、空間やプログラムの中でも「心理的安全性」を大事にしたいと思っています。そして「もやもや」も単に課題や悩みという意味ではなく、まだ言葉になっていない自分の関心ごとや問題意識だったり、自分の想像を超えていく可能性自体を指すものだと考えています。そんな話を大西さんにお伝えしたらすぐに汲み取ってくださって、かわいいロゴにしてくださいました。
あと大事にしたかったのは、集まるのもそうですが、 気軽に出入りできること。ここから旅立っていける風通しの良さも表現されていますね。

久木元:よく見ると隙間があってみんなが集って色々動いているように見えますね。レジャーシートの上に全員が乗り切らなくても、はみ出しても大丈夫な雰囲気もうまく表現してくださっています。青木さんが仰ったように「もやもや」こそが可能性であって、その人の伸びしろであって、社会を変革する入り口に連れてってくれるもので、そこを大事にしていきたいですね。

写真(4枚目以外すべて):川島彩水

<後編につづく>
9月公開予定の後編では、スタディーズのプログラム内容や、参加するとどのような体験ができるのか、より具体的な中身についてお話しします!

執筆:宮﨑有里(スタディーズ事務局)