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アメリカン・ポップス・クロニクル 1960年代編 ch.3 (5)

くよくよしないぜ

ルイジアナ州シュリーブポートのラジオ局KWKHが、シュリーブポート市立記念講堂から放送していたライブショーがルイジアナ・ヘイライドといいまして、エルヴィス・プレスリーはデビューして間もない頃、ここに何度も出演して、次第に人気を獲得していき、次のステップへと巣立っていくメモリアルなラジオショーでした。

ヘイライドの主催者側は、エルヴィス・プレスリーの次のスター候補にと、ヘイライドに出演していたカントリー&ポップ歌手のボブ・ルーマンに目を付けます。そして、エルビスにはバックバンドにスコッティ・ムーア(Gt)とビル・ブラック(Ba)がいたように、ボブ・ルーマンにもバックバンドを用意しました。そのギタリストがジェームズ・バートンでした。

ヘイライドに出演していたボブ・ルーマンを見て、契約を申し出たのはインペリアル・レコードの社長ルー・チャッドでした。ルー・チャッドは、新人アーティストを探しにヘイライドによく足を運んでいたようです。

デビューする前からヒットを約束されていた男。そんな歌手はいつの時代にもいるもので、1957年にそんな青年がデビューしました。父親のオジーは、かつてはビッグバンドのリーダーでコンダクター、母親のハリエットはそのバンドの歌手という芸能一家で、彼が10歳になる頃には「オジーとハリエットの冒険」というラジオ番組に家族で出演、2年後にはそのままテレビ番組になりました。青年の名前はリッキー・ネルソン。彼は音楽一家の家庭環境そのままに、10代の頃からクラリネットとドラムを演奏し、ギターも習得、サン・レコードのアーティストが大好きで、カール・パーキンスに深く影響を受けたといっています。

<I'm Walkin' / Ricky Nelson>

デビュー曲はファッツ・ドミノのカバーで、Verve Recordsからリリースされ、全米チャート4位、R&B10位というヒット曲でした。バックにはジャズ・ギタリストのバーニー・ケッセルが参加していました。シングルB面の"A Teenager's Romance"はA面を上回る成績で、全米チャート2位を記録しまして、デビュー曲から両面ヒットと、ティーンエイジ・アイドルの登場となったのです。そしてまた、彼がリリースする曲は新しいメディアであるテレビが生んだヒット曲ともいえますね。

57年初夏、リッキー・ネルソンはインペリアル・レコードに移籍します。5年契約という好条件でした。インペリアルからの最初のシングルは"Be-Bop Baby"、全米3位と幸先良いスタートです。続いてのシングル"Stood Up"はポップ2位、R&B4位、カントリー8位と大ヒットだったのですが、この曲のバックには、ベースがジェームス・カークランド、ギターにはジェームズ・バートンが参加していました。冒頭で紹介したボブ・ルーマンは、インペリアルと契約したのでロサンジェルスに来ていて、マスター・サウンド・スタジオでレコーディングしていました。リッキー・ネルソンは彼らの演奏を3時間ずっと見ていたようで、父親オジーの交渉で彼らが参加することになった訳です。ちなみに、ジェームズ・バートンは2年間ネルソン家で寝食を共にしていたとのことです。

58年6月リリースの"Poor Little Fool"でついに全米No.1を獲得、R&B3位、C&Wも3位とビッグヒットとなりました。バックバンドもドラムにリッチー・フロストが加わり、コーラスにはジョーダネアーズも参加と、一流どころが揃います。更に59年には、またしてもボブ・ルーマンの登場となりますが、ギターとベースの新メンバーとして、ロイ・ブキャナンとジョー・オズボーンをロサンジェルスに呼びました。ここで前回同様父親オジーが交渉に乗り出して、ベースのジョー・オズボーンがジェームス・カークランドに代わり、リッキー・ネルソン・バンドのメンバーとなりました。1960年頃には、ギターにジェームズ・バートン、ベースがジョー・オズボーン、ドラムスがリッチー・フロスト、アレンジャーにはジミー・ハスケルと固定化されました。

61年、両A面として"Travellin' Man" (#1) "Hello Mary Lou" (#9) をリリース、500万枚以上のセールスを記録する特大ヒットとなりました。しかし、当たり前のことですけども、リッキーは徐々に大人になっていました。61年9月リリースの"A Wonder Like You"から表記はRickyからRickに変わります。63年、インペリアル・レコードからデッカ・レコードに移籍して、アルバムのレコーディングを3月と8月に行い、4月には幼馴染のクリスティン・ハーモンと結婚と、明らかにティーンエイジ・アイドルからは卒業の時期になっていました。  デッカに移っても、"String Alone"や"Fools Rush In"といったスマッシュ・ヒットもありました。63年暮れにリリースされた"For You" (#6)がデッカでの最後のTop10ヒットとなりました。  

(2022/02/06)

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