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アメリカン・ポップス・クロニクル 1960年代編 ch.4 (1)

ビートにしびれて

60年代初頭のアトランティック・レコード、フィル・スペクターがリーバー&ストーラーに弟子入りしていた頃のアトランティック・レコードは、どのような状況だったのでしょうか。

稼ぎ頭にはドリフターズとソロモン・バークがいましたが、59年で契約切れとなったレイ・チャールズは、ABCレコードに移籍します。コースターズは"Poison Ivy"をヒットさせた後はパッとせず。白人スターのボビー・ダーリンもヒットは出すものの、ややむらがあり、やがてキャピトルに移籍していきます。

リーバー&ストーラーは前例のなかったプロデュース業に対する代金を、アトランティック・レコードに請求しました。アトランティックは一旦それを認めて支払ったのですが、リーバー&ストーラーは更に過去に遡って支払いを要求したのです。これに対してはアーメット・アーティガンとジェリー・ウェスクラーは支払いには応じたものの、彼らとは今後一切仕事をしないと通告して、リーバー&ストーラーとアトランティック・レコードの関係は終わりました。

しかし、そんな頃にアトランティック・レコードを助けていたのは、メンフィスのスタックス・レコードとの販売提携でした。

スタックス・レコードの始まりは、1957年ジム・スチュワートがメンフィスで設立したサテライト・レーベルが前身でした。間もなく、姉のエステル・アクストンが経営に加わり、59年にはキャピトル・シアターを買い取り、レコーディング・スタジオとレコードショップを設けました。ジム・スチュワートは経営面専門で、音楽的な実務はプロデューサーのチップス・モーマンが行いました。

地元で人気のディスク・ジョッキーにルーファス・トーマスがいまして、彼はサン・レコードからデビューしていました。そのルーファス・トーマスがサテライト・レーベルと契約し、新しいスタジオでの初レコーディングとなりました。ルーファス・トーマスには、その当時17歳の娘カーラがいまして、親子デュオで"Cause I Love You"を録音しました。バックのバリトン・サックスは若き日のブッカー・T・ジョーンズです。この曲がアトランティック・レコードとの提携のきっかけとなり、アトコからリリースされました。

娘のカーラ・トーマスは、アトランティック・レーベルからの配給に決まり、引き続きサテライト・スタジオで録音して、60年11月に"Gee Whiz"をリリース、61年チャート最高位はR&B5位、ポップでも10位にランクされました。

61年6月、サテライト・レーベルは地元のインストゥルメンタル・バンドのロイヤル・スペイズと契約、バンド名をマーキーズに変えてレコーディングを行い、シングル"Last Night"をリリースしました。この曲は、R&B2位、ポップ3位の大ヒットになりましたが、このシングルは当初サテライト・レーベルの表記で全米発売されたため、カリフォルニアに以前からあったサテライト・レコードから苦情が来て、レーベル名を変えることにしました。

1961年9月、ジム・スチュワートと姉のエステル・アクストンのSTとAXを合わせて社名をSTAX、スタックスに変更しました。スタジオもスタックス・スタジオと名称変更しました。マーキーズのメンバーは、この後スタックス・スタジオでレコーディングする際のハウスバンドとして大活躍しました。

62年、スタックス・スタジオのハウスバンド、ブッカー・T& The MG'sは"Green Onions"をリリース、R&B1位、ポップ3位と、この年最大のインストゥルメンタル・ヒットになりました。

ジョニー・ジェンキンス&ザ・パイントッパーズというグループにシンガー兼ピアニストで参加していたのがオーティス・レディングでした。62年、ジェンキンスはアトランティック・レコードの紹介で、スタックス・スタジオでの録音となり、オーティス・レディングは運転手として同行しました。しかし、ジェンキンスとブッカー・T& The MG'sのセッションはあまり良い結果を出せず、時間をもて余していた時に、オーティス・レディングは2曲演奏する機会を得ました。ジェンキンスとスティーヴ・クロッパーが参加したバラード曲"These Arms of Mine"に可能性を感じたジム・スチュワートは、オーティス・レディングにスタックスとの契約を申し出ました。62年10月、スタックスのサブレーベルVOLTからシングル"These Arms of Mine"がリリースされ、R&B20位、ポップ85位と彼にとって最初のヒット曲となりました。

スタックス/ヴォルト・レーベルは、この後もアトランティック・レコードと良好な関係を保ち、オーティス・レディング、エディ・フロイド、サム&デイヴ、ウィルソン・ピケットらが、チャートを賑わすことになります。

(2022/02/13)

Power Blues & Sophisticated Soul (2022/02/18) 

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2,1960年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
3.1960年のヒットソング (2021/12/31)
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