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アメリカン・ポップス・クロニクル 1960年代編 ch.4 (4)

Do You Wanna Go With Me

1961年から63年の3年間で、R&Bチャート1位になったモータウンの楽曲を並べてみると、61年がミラクルズの"Shop Around" (全米2位)とマーヴェレッツの"Please Mr. Postman"(全米1位)の2曲、62年がメアリー・ウェルズの"You Beat Me to the Punch"(全米9位)とコントゥアーズの"Do You Love Me"(全米3位)の2曲、63年はメアリー・ウェルズの"Two Lovers"(全米7位)とミラクルズの"You've Really Got a Hold on Me"(全米8位)とリトル・スティーヴィー・ワンダーの"Fingertips (Part 2)"(全米1位)、マーサ&ザ・ヴァンデルズの"Heat Wave"(全米4位)の4曲で、計8曲がR&B No.1ソングでした。

61年初頭に"Shop Around"をNo.1にしたミラクルズでしたが、その後この年はグループを悩ませる出来事がいくつか起きていました。スモーキー・ロビンソンはアジア風邪を患い、ツアーの代役は妻のクローデットが務めましたが、そのクローデットも交通事故に遇うという不運が続きました。メンバーのピート・ムーアは陸軍に徴兵され、グループを離れました。この嫌な流れを変えるような、素晴らしい楽曲をスモーキー・ロビンソンが書きました。62年4月リリースの"I'll Try Something New"はR&B11位、ポップ39位のヒットになり、続く11月リリースのシングル曲は、A-side "Happy Landing" B-side "You've Really Got a Hold on Me"のカップリングで、B面の方がDJに好まれて、"You've Really Got a Hold on Me"は翌63年2月R&B1位、ポップ8位を記録する大ヒットになりました。 ミラクルズは、62年末から始まったモータウン・レビューの全国公演のヘッドライナーを務めます。

マーヴェレッツは"Please Mr. Postman"を全米1位にした後も、コンスタントにヒットを出していて、R&B、ポップ双方のチャートにランクされる活躍で、モータウン・レコードがデトロイトからロスアンゼルスに本拠地を移すと同時にグループは解散しました。

メアリー・ウェルズは、デビュー直後から絶大な人気を誇り、スモーキー・ロビンソンが書く曲との相性も良く、62年から63年にかけての3曲はどれも素晴らしく、"The One Who Really Loves You"は R&B2位、全米8位、"You Beat Me to the Punch" はR&B1位、全米9位、"Two Lovers" がR&B1位、全米7位と人気絶頂の時期を迎えていました。しかし、64年5月、"My Guy"を全米1位にすると突然の移籍、20世紀フォックスに移りました。移籍後もそこそこのヒットはありましたが、スモーキー・ロビンソンの代わりはいませんでした。

デビューから3枚目のシングル"Do You Love Me"をR&B1位、ポップ3位にしたコントゥアーズ、彼らはモータウンではやや異色の存在でした。熱く、パワフルなロックンロール、ダンス・ナンバーでぐいぐい押してくる、ワイルドが売りの彼らでした。残念ながら"Do You Love Me"に並ぶような曲は出せず、Top100に入る曲は数曲あったものの、モータウンのトップアーティストとは言い難く、存在感を高めることは出来ませんでした。

マーサ・リーヴスはモータウンに秘書として入社しました。マーヴィン・ゲイの"Stubborn Kind of Fellow"にバック・ヴォーカルで参加するなど、デビューのチャンスが来るのを待っていました。メアリー・ウェルズがレコーディングに現れなかった時、その代役としてマーサ・リーヴス、アネット・スターリング、ロザリンド・アシュフォードが"I'll Have to Let Him Go"を録音して、マーサ&ザ・ヴァンデルズでデビューしました。この曲はランク外でしたが、次の"Come and Get These Memories"がR&B6位、ポップ29位と好成績で、次の曲にもホーランド=ドジャー=ホーランド作の曲を用意、初期モータウンを代表する楽曲になりました。”Heat Wave”はR&B1位、ポップ4位のビッグヒットで、この楽曲構成は彼女らのトレードマークになりました。

62年、リトル・スティーヴィー・ワンダーは2枚のアルバムを録音しました。1枚は彼が敬愛するレイ・チャールズの曲をカバーしたアルバム『A Tribute to Uncle Ray』、もう1枚はオーケストラをバックに、彼のパーカッション、ハーモニカ、ピアノの腕前を聴かせるジャズ・アルバム『The Jazz Soul of Little Stevie』でした。翌63年、この2枚のアルバムからピックアップした曲をライブ・レコーディングしました。当時のスティーヴィーはスタジオ録音より、モータウン・レビューで披露するライブ演奏の方が実力を発揮できていたのです。アルバム『The 12 Year Old Genius』から先行シングルとして"Fingertips - Part 2"がリリースされると、全米ポップ、R&Bともに1位となり、一躍トップスターに駆け上がりました。しかし、スティーヴィーは大人の声を迎える時期にきていたため、その間クラシック・ピアノを学ぶなど充電期間を過ごし、64年ステージネームからリトルを取り、初のオリジナル曲"Uptight (Everything's Alright)"を全米ポップ3位、R&B1位と成熟した歌声を聴かせました。

マーヴィン・ゲイ、ザ・シュープリームス、ザ・テンプテーションズらが加わり、続々ヒットを出し始め、モータウン黄金時代を築いていきます。それらについては、また次回に。

(2022/02/23)

ch.4

ビートにしびれて (2022/02/13)
Power Blues & Sophisticated Soul (2022/02/18)
I'll Go Crazy (2022/02/20)

I Got Lucky

ch.3

1.サーフビート・ゴーズ・オン (2022/01/29)
2.A Sunday Kind of Love (2022/02/01)
3.夜明け前の月光 (2022/02/03)
4.West Coast R&B (2022/02/05)
5.くよくよしないぜ (2022/02/06)
6.誰にも奪えぬこの想い (2022/02/10)

ch.2

1.シビレさせたのは誰 (2022/01/14)
2.ブロンクス・スタイル (2022/01/15)
3.ツイストが2度輝けば (2022/01/21)
4.太陽を探せ (2022/01/22)
5.1961年のNo.1 R&Bソング (2022/01/25)
6.Romancing the '60s (2022/01/27)

ch.1

1.1959年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
2,1960年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
3.1960年のヒットソング (2021/12/31)
4.インストゥルメンタル・ヒット (2022/01/04)
5.60'Sポップスの夜明け (2022/01/05)
6.R&B、ソウルミュージックの躍進 (2022/01/07)

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