アメリカン・ポップス・クロニクル Extra Edition British Pop #03
1962年10月、モータウンのGordyレーベルからリリースされたThe Contoursの"Do You Love Me"、全米ポップ3位、R&Bでは1位と大ヒットしました。
翌年秋、英国ではBrian Poole & The TremeloesとThe Dave Clark Fiveが"Do You Love Me"を競ってシングル・リリースしました。10月24日付けシングル・チャートでは、The Tremeloesは3週連続1位をキープ、方やDC5は最高位の30位と、この競作はBrian Poole & The Tremeloesに軍配が上がりました。
デイヴ・クラーク・ファイブは1958年、トッテナムの若いサッカー選手デイヴ・クラークがチームの遠征費を捻出するために作ったバンドでした。彼とベーシストになるクリス・ウォールズは、他のミュージシャンを探すために『メロディ・メーカー』に広告を掲載して、その広告でリズム・ギタリストのリック・ハックスレー、シンガー兼サックス奏者のスタン・サクソン、リード・ギターのマイク・ライアンを迎え、デイブ・クラーク・ファイブ・フィーチャリング・スタン・サクソンが誕生しました。
1961年には、ウォールズとライアンが脱退し、ハックスレーはベースに転向して、デニス・ペイトンがサックス奏者として加入しました。そして、元インパラスのリード・ギタリスト、レニー・デビッドソンが、リード・ヴォーカル/キーボード奏者のマイク・スミスを連れて加入してきました。10年間クラシック・ピアノを習っていたスミスは、このグループの中で唯一、正式な音楽教育を受けているメンバーだったということです。
1962年、デイヴ・クラーク・ファイブは、ライブバンドとして名声を高めていました。彼らは、イギリスで人気のあるボールルームチェーンの「メッカ」と定期的に演奏する契約を結んでいて、1963年にはメッカ・サーキットの英国ベスト・ライブ・バンドに贈られる、ゴールド・カップを獲得するまでに実力をつけていました。
しかし、1963年は彼らにとって複雑な年になっていて、コロンビア・レコードと契約、メッカでの受賞はコントゥアーズの "Do You Love Me?"のカヴァー録音に対する苦い失望の上に成り立っていました。繰り返しになりますが、トレメローズが首位に立ち、デイヴ・クラーク・ファイブは30位止まりという結果でした。転機となったのは、12月にリリースしたデイヴ・クラークとマイク・スミス共作の "Glad All Over "でした。
翌年初頭にはイギリスで1位を獲得し、250万枚以上のレコードを売り上げたこの曲は、アメリカでも大ヒットして全米6位に、エピック・レコードはバンドのアメリカ・ツアーを計画することになりました。エド・サリバン・ショーに2回連続で出演し、アメリカ各地を回るツアーを行い、アメリカ市場での人気を確固たるものにしました。
デイヴ・クラーク・ファイブは、エド・サリバン・ショーに18回出演し、これは英国のアーティストとしては最多記録でした。
"Grad All Over"同様、クラークのドラム・スティックの音が特徴的な次作"Bits and Pieces"は、このグループに続くヒット曲をもたらして、全英2位、全米4位という成績でした。
デイヴ・クラーク・ファイブは、ドライブ感のあるパーカッションと歌声が特徴の親しみやすいポップ・サウンドで、1960年代半ばに最も人気のあった「ブリティッシュ・インヴェイジョン」バンドのひとつとなりました。
イギリスのポップス・バンドはギター・リフが中心でしたが、デイヴ・クラーク・ファイブはドラムが中心でした。ビートルズやジェリー・アンド・ザ・ペースメーカーズといったロンドン、マージーサイドの人気グループとは異なり、いわゆる「トッテナム・サウンド」を特徴づける強力なパーカッション・セクションでした。
1965年、デイヴ・クラークは映画の世界に飛び込み、その結果、絶賛されたのが「Catch Us If You Can」でした。アメリカでは「Having a Wild Weekend」として公開されたこの映画は、ロックグループの急激な名声に伴うストレスを扱ったほろ苦いコメディ映画でした。ニューヨーク・タイムズ紙のボズリー・クラウザーは、この映画をその時代の最高の若者向け映画と呼び、イギリスのその年の興行収入トップ20のひとつに選ばれました。
デイヴ・クラーク・ファイブは、アメリカで"Grad All Over"リリース後、1967年にかけて、アメリカのビルボードチャートのトップ40には17枚のレコードがランクインしていて、イギリスでは11のトップ40ヒットを放っていました。1965年ボビー・デイのカバー曲"Over and Over"は全米ナンバー1ヒットで人気のピークに達しましたが、イギリスでは45位という結果でした。この差が、この頃の彼らの活動ペースを表しています。
クラークは、共作者のスミスとグループのほとんどの曲を作曲しただけでなく、グループのレコーディング活動やプロモーションを広範囲にわたって管理していました。また、デイヴ・クラーク・ファイブの楽曲を出版する会社を設立・運営し、ビートルズよりも高い印税を得る契約を結んでいました。また、契約書には、当時としては異例の、ライセンス期間終了後のグループの録音物の所有権を認める条項が巧妙に盛り込まれていました。
1966年、デイヴ・クラーク・ファイブの一連のヒット曲を取り上げた短編映画『Hits in Action』を制作・監督し、世界中の映画館で上映されました。
1967年、マーヴ・ジョンソンの1959年のヒット曲をカバーした"You Got What It Takes"が全米チャート7位に入りました。同年、デイヴィッドソンの珍しいリード・ヴォーカルをフィーチャーした"Everybody Knows (I Still Love You)"が英国で2位となりました。
デイヴ・クラーク・ファイブによるサイケデリアへの孤高の試みは、1968年の映画「ロミオとジュリエット」のために書かれたものでしたが、映画のサウンドトラックには入りませんでした。"Inside and Out "は、大胆なストリングス・アレンジと、ビートルズの "I Am the Walrus "のような圧倒的なファズ・ギターがミックスされた曲でした。しかし結局、彼らは新しい嗜好や新しい技術に適応しようとせず、1970年に解散しました。
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