ハトヤホテルのラーメンが美味かった話
先日念願のハトヤホテルに行ってきた。
ハトヤの素晴らしさは様々な方が記事にしているけど、ラーメンが美味しかったので旅行記として書き留めておきたい。
◇
西日本出身の自分がハトヤを知ったきっかけは井上涼さんのHATOYAという動画だった。それから10年近くが経つ。
子どもが産まれてから、ホテルや旅館を旅行の目的地とすることが増えてきた。
ゆっくりお風呂に入って、夕食を食べてのんびりする。ビュッフェなら子供でも食べられるし、大人も好きなものを存分に食べられる。念願のハトヤに泊まるタイミングがついにやってきた。
ということで、東京駅から踊り子号に乗り込み、晴天の伊東駅へ。
ハトヤと名前が書かれたスーパーかわいいバスに乗られ、チェックインより1時間以上早くホテルについた。気合いは十分だ。
あの有名なトンネルで泣きそうなほど感動し、ハトヤのキーホルダーが当たるガチャガチャを4回やった。
今回の部屋はおまかせだったから全然期待していなかったが、まさかのまさかでハトヤの看板がよく見える部屋だった。
一日中看板見放題・写真取り放題だ。ハトヤファンからしたら垂涎の部屋でとても嬉しかった。
大浴場も堪能し、バイキングも鱈腹食べた。個人的にはししとうの天ぷらをおろし大根たっぷりの天つゆに潜らせるのが好みで10本は食べたと思う。あと貝のお刺身とかメロンもさっぱりとした甘さで美味しかった。
せっかく泊まりだから日本酒を‥と思いオーダーしたところ地酒なら4合からということで白鶴を燗で頼んでちびちびやった。
お腹がぽんぽこりんになるほど食べて飲んで大満足の夫と子どもが爆睡する横で、ぼんやりとこの看板が頭に浮かんでいた。
◇
美味しいお店を当てられるというのが自分の特技だ。
特に旅先で美味しいお店を探し出すのが得意だ。孤独のグルメのジローさんがお店を探し出すのと近いので、一人でご飯を食べに行くのが好きな人あるあるなのかもしれないけど。
チェックイン前の1時間に館内を散策した時にみつけたらーめんの看板がとても気になっていたのだ。
飲み会などで〆にラーメンというのはよく聞く話だが、自分は食べたいと思ったことはない(自分の〆はたけのこの里だ)
というか30代も後半になり、ラーメンをわざわざ食べたいという気持ちもほとんどなくなった。ましては夕飯の後(しかもバイキング)なんて。
でも、一口でいいから無性にラーメンが食べたい。
あそこのラーメンは絶対美味しいと思う、と自分の中の美味しいお店レーダーが唸っている。
ということで、一人こっそり部屋を抜け出して向かうことにした。
ラーメン屋(夜食処という店名?)が開店するのは21時。まだ20時45分だ。
夜食処は大浴場やゲームセンターに向かう途中にあるので、向かう人々の注目を静かに集めていた。
〝あれだけ食べた後にまだラーメン食べる人いるのかよー?〟(確かにね!)という声がきこえてきた。ごもっともすぎる。
なにしろ人通りの多い場所にあるので、お店の前で待っているのはなんとなく恥ずかしくなってきた。
お店の前をさりげなく通って様子を伺ったり近くのゲームセンターを冷やかしながら開店を待った。
待っている間にネットで口コミを探したものの、ラーメンに関するものはあまり見つからなかった。
がぜん期待が高まる。
そして21時になった。
すると、看板が突然ニュッと動いた。看板の電気がつくと同時に、奥に引っ込んでいた看板が手前に出てきたのだ。電動で。
もう銭天堂か千と千尋で出てくる飲食街かみたいな摩訶不思議さに引き込まれて店内に入る。
店内は、別世界のようだった。ハトヤのアンティークレットが美しい昭和バブリーレトロと違って、もはや舞台セットのような小料理屋的な雰囲気だった。座敷まである。
BGMは一切ない。先客もいない。
ホテルなのか?というほどぶっきらぼうな雰囲気の店員さんが、注文をきいてくれた。
注文の後に、別の店員さんが麺をゆがき始めた。
そこでとあることに気づく。麺を湯がく鍋の大きさだ。ホテルでちょいと出すらーめんに使う鍋のサイズではない。製麺所とかで使う鍋のサイズだ。茹でて湯切りをする過程もとても丁寧だった。
具材はナルト、ネギ、わかめ、メンマ。そしてチャーシューではなくて煮豚。縮れ麺の醤油ラーメンだった。
自分はドーミーイン の夜泣きそばが好きだが、それの豪華版といったところか。
それを、昭和の小料理店みたいな店内でひとり黙々と食べる。
かつて好きだったキンモクセイの「二人のアカボシ」のPVで登場した屋台ラーメンが頭をよぎる。ああいうラーメンが食べてみたいと思っていたんだった。
令和に、平成の名曲のPVを再現したようなラーメンを昭和レトロ全開のホテルで食べる。
タイムスリップして自分がどの時代にいるのかわからなくような感覚だった。
健康のこととか、ダイエットのこととか頭から吹き飛んでしまうぐらい夢中で食べた。
ちなみにお会計は部屋付だった。ラーメンを部屋づけしたのなんてはじめて。
食べ終わった頃、同じ年代ぐらいの女性がひとりお店に入ってきた。
ラーメン、全力で美味しいよ!と伝えたい気持ちでいっぱいになった。
この一杯のためにもう一泊してもいいな、そう思えるラーメンだった。