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The Chair-man 椅子屋になった男の話 #6
当時住んでいたLAにあるテンポラリーコンテンポラリーミュージアムに横尾忠則とジェームズ・タレルのエキシビジョンを見に行ったのをきっかけに
美術館は良く行くようになりました。
若かったから、美術館にいる自分が好きってのもあって 笑
当時は限られた人しかアートに興味が無い時代でしたから、「お前達は知らないけど、俺は知ってるぜ」みたいな。
店を始めて5年目くらいに、ジェームズ・タレルのエキシビジョンが水戸で開かれると知って、
彼をきっかけにアートの楽しさに目覚めた僕は、「あの人の作品が、また見れるんだ!」と、どうしても行きたくてお店を閉めて見に行きました。
当時よくお店に遊びにきていた高校生の子達も学校を休ませて、5人くらいで一緒に。
今なら問題になりそうですよね。
その時、限定60枚でタレルの版画が売っていたので買ってきました。(たしか1枚6万円くらい。)
今でも持っています。
それから、その5年後くらいでしょうか、
周りにタレルが好きだって言っていたら、お客さん第1号だったアートディレクターの関谷さんに
「新ちゃんタレル好きだったよね」
と聞かれ、
「好きですよ、関谷さん知ってるんですか?」
と答えると、
「今度魚沼に”大地の芸術祭”っていうのの第一回があって、そこにタレルが建物を立てるらしいよ」
と教えてくれました。
「で、そこの広告のアートディレクションを頼まれていて、タレル来るんだけど会う?」
そんな嬉しい誘いを受け、一緒に会いに行って食事をしました。
その時は、((英語が話せて良かったなー))って思いましたね。タレルと直接 話が出来ましたから。
※現在も展示が続いている、光の館が彼の作品です。
水戸で買った版画を持って行ったので、タレルに見せたら、
「それ持ってるの!?」って。
「持ってますよ、好きですもん」
と答えたら、サインをしてくれました。
その版画はタレルの巨大作品ローデンクレーターがモチーフで、
普通に考えれば、文字が見える様に白い部分にサインを書きそうなものですが
あえて黒い部分に黒いマジックで書いてくれました。
透けさせると見える様に。
マジ痺れました。
僕は昔からアートにはすごく強いコンプレックスを持っていました。
小学2年生の時に鈴木先生という担任の先生に、
「田村くんは絵の才能とか全く無いね」
って言われて笑
それから、「美術はもう いいや。」ってなって。
だからその裏返しでアートが好きになったのだと思います。
僕は昔から家具を販売しているつもりは全く無くて、実は家具としても使用できるアートを販売しているつもりなんです。
昔より今は、もう少し一般的な家具を扱う様になったけれど、今でも形には常にこだわって選んでいます。
家具屋ではなく、アートギャラリーをやっているから「偽物(ジェネリック等)は売らない」のです。
それは、僕がもつ”アート”に対する思いから来ています。
P.S.
あのカニエ・ウエストが、アリゾナのど真ん中にあるタレルのローデンクレーターに 10億を寄付していました。
「絶対残さないといけないアートだ」って言って。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/19164