Leoとコロナ禍と。『花束のかわりに』リリースに宛てて

今から遡ること、一年と四か月前。2020年4月。
春の大型連休を目の前に、少しずつ世間が浮足立ってくるような4月の中旬…、になるはずだった。ところがどうだ、数か月前は対岸の火事と思いぼんやりと眺めていたアイツらが、あれよあれよという間に、自身の身に迫る問題となり、大型連休どころではなくなってしまった。そう。新型コロナウイルスによって。


「うちの会社は古風だから、在宅勤務になんてならないんじゃないの?」
ペーパーレス化が全く進まない職場の悪態をついていた私と同期の予想を裏切り、安倍首相による緊急事態宣言発令とともに、我が職場でも在宅勤務の社内通達が下った。
一人暮らしの私にとってそれはそれは孤独な生活がスタートした。
“人との接触7割減”なんてテレビからは聞こえてくるが、もはや10割減の生活。業務上でのちょっとした電話のやり取りさえ貴重な人との触れ合いの時間だった。
所謂「ひとり○○」とか「ぼっち」とか、平気なタイプだが実際に人と全く会わないとなると人恋しくなるものなんだなあ、なんて。

さらに、そんな寂しさに追い打ちをかけたのは、軒並み延期や中止になるライブ・イベントのエンタメの状況だった。月に数回は必ずライブを観に行くような生活をしていた私にとってはこれ以上ないダメージだった。

もちろん、当時の「何物かわからない、戦うすべがまだわからない目に見えない敵」に対して仕方ない部分があったのも理解できるし、もしも予定通り開催されたとして、私が足を運ぶ決断を下したかどうかもわからない。


そんな日々の中で、私の唯一の楽しみが、大好きなアーティストたちがSNSにアップしてくれる動画や生配信だった。きっと私以上に、この先が見えない状況だったに違いないだろうに、それでも力強く、大好きなアーティストが活動していることこそが希望だったのだ。

なかでも特に、胸を打たれたのはthe quiet roomの「Leo」だった。

https://www.youtube.com/watch?v=3a8UtK4YzyY

5月15日。クワルーメンバー(+サポートメンバー)のテレワークセッションという形で公開されたこの曲。歌詞は既存のものから書き直したという。わずか1分40秒ほどの曲だが、とてもシンプルで、私にとって、これ以上ないくらいに「今」を歌っていた。

※murffin discs公式Youtubeチャンネルより
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 【 Leo 】

さあ 取り戻すのよ 日常と愛の歌を
或いはロックンロール・ミュージックを
実際 ひとりきりの衣食住だけじゃ全然笑えないし

焼き付いてる 君の言葉とあの日の情熱は 
今も捨てずに持ってる

オールライト 視界は良好
つまんない話ならもういいよ
ねえ 今までのこと笑って許してね
オールライト 気分は上々
日々を過ごしていく中で気付いたの
退屈な毎日さえ 私は愛してた
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ああ、私、平気なふりしてたけど、結構この生活辛かったんだ。そんな単純なことに気づかせてくれて、共感してくれて、そのうえで、クワルーは止まるつもりはないんだ、と強く意思表明してくれたようで、とにかく救われた。気づいたらボロボロ泣きながら何度も何度も再生していた。

あれから何度助けられただろう。口ずさんだだろう。私にとって間違いなくコロナ禍を支えてくれた一曲だ。

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そして2021年8月。ワクチン接種が進んだり、エンタメの規制もほんの少しだけ緩和されたりと状況は少し変わったものの、依然としてコロナの影響は続いている。

そんな中、クワルー初のフルアルバム『花束のかわりに』がリリースされた。表情豊かな曲の並びに、キュートなジャケット、とにかくわくわくする一枚だ。
中でも私の推し曲は「Leo(a new day)」。そう、あの「Leo」が進化を遂げてついにCDに収録されたのだ!収録曲はそれぞれめちゃくちゃに最高なのだけれど、前述の通り、「Leo」に並々ならぬ思い入れがある私にとってなんだかとても感慨深くて、(a new day)バージョンを聴いても相変わらず泣いてしまった。

(a new day)バージョンは以前のものから大幅なサウンドの方向性の変更はないが、異なるアレンジになっていて、歌詞も一部書き替えられている。
アルバムの1曲目の役割を果たすため、という意図もあるかもしれないけれど今回のブラッシュアップによって、これまでのLeoよりも一層未来へ向けての希望を感じた。≪希望をみせてあげるから一緒に行こう≫と誘い出してくれているような曲だと思った。(どこかのインタビューでその意図をメンバーが語っているかもしれないので全くお門違いだったら許してください)

私はクワルーにから確かに“この曲を贈って”もらった。
残念ながら私からは何も返せるものはないけれど、次のツアーに足を運んで、精一杯彼らのパフォーマンスを目に焼き付けて、精一杯の拍手で感謝を伝えたいと思う。

コロナ禍のもやもやが続く日々だけれど、たった一つの花束が、
たった一つの曲が、誰かの生活に希望をもたらすことができる。

コロナになんか負けてたまるか。
さあ、取り戻すのよ
日常と愛のうたを。


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