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【NSA内部告発】エドワード・スノーデンではなく全国民の問題【CIAプライバシー侵害】


インフォメーションテクノロジーの圧倒的な進歩は、人々の生活を劇的に便利にし欠かせないものとなった。

しかし一方、それらは扱い方を一歩間違えれば、人間を抑圧する拷問器具と化す。

それを防ぐには、正当な視線と意見による監督が不可欠。



エドワード・スノーデン/Edward Joseph Snowden(1983年6月21日生れ、アメリカ人)

NSA(アメリカ国家安全保障局)とCIA(中央情報局)の元局員。各現場に携わる。

NSAの仕事を請け負うコンピュータ会社DELLの社員として2009年に来日し、東京都福生市で2年間暮らしていた。勤務先は、米空軍横田基地内にある日本のNSA本部。

2013年6月初旬、一国二制度下の香港にて、NSAから大量の機密資料を持ち出し当局の不正について内部告発した。記事は、最初は英ガーディアン紙から、そして米ワシントンポスト紙。インタビュー記者は、ガーディアンのグレン・グリーンウォルド。映画監督のローラ・ポイトラスが撮影した。

6月21日、米司法当局がスノーデンを起訴(スパイ、窃盗、政府所有物の横領)、逮捕要請が出る。

6月23日、ロシアに亡命。後に永住権を取得。


動機

権力の暴走を危惧し告発に踏み切った。誰かがやらなければならない、誰もやらないなら自分がやる。国の秘密は増殖し、民主主義を腐敗させていく。公共の利益のため公表すべき情報、世に真実を知らしめる。

恐れることはない。ネットにおけるヒドラの法則というのは、一人を潰せば七人の仲間が出てくる、同じことをする人間が出てくる。

政府と国民との関係がおかしい。国はあらゆるツールを備えている、どんな秀才でも抗うことはできないぐらい。本来国民の保護が目的なのに、抑圧している。政府を監視する仕組みがないからやりたい放題でばらそうとするものを脅す。


背景

インターネットは当初、疑問や質問、発信や討論など自由な発想を発達させることができるツールだった。だが後に監視を前提とした利用が当たり前となった。プライバシーとは自由を意味する。プライバシーがなくなればデモや集結する力などは抑え込める。言論の自由もなくなる。

911以降、テロ防止名目で何でもありとなってしまった。アメリカ国家安全保障局はテロや犯罪の疑いがなくとも全国民を監視する事に決めた。本当の目的は社会の支配。

機密情報が明るみに出れば国家の安全が脅かされるの一言で、諜報機関は聖域と化し、誰にも手をつられなければ当然落ちる所まで落ちる。

法律ではアメリカ人の電話盗聴など情報を入手するには令状が必要となっているが、要求すれば絶対取れるし、裏でやる分には関係ない。外国人が絡む通話には規制すらない。

第一次世界大戦時1917年にできたスパイ防止法では、公共の利益の為の内部告発だろうが何だろうが動機は考慮されない。例え政府の違法行為を暴露しようとも問題じゃない。政府は何の説明責任も負わない。テクノロジーが進歩しているのに、そのような不公平な古い法律で裁かれる。どんな重罪にもなりかねない。

NSA職員ウィリアム・ビニー は、司法省の認可で行われる不正捜査を数人の仲間と政府内で何年もかけて解決を目指した。合法的になるよう、裁判所の監視を受けるように。だが改めることはできず、結局全員同時にFBIに家を急襲され、本人は黙るよう銃を突き付けられた。

NSAの幹部トーマス・ドレイクは、NSAの浪費や不適切な管理、憲法違反の疑いのある活動を報道機関に告発したため見せしめとして、FBIの家宅捜査を受け、スパイ防止法違反で起訴された。しかし証拠に欠けており、司法取引の結果、保護観察1年の軽犯罪を認めた。

2013年3月のひと月でアメリカで30億件、全世界で970億件のインターネットと電話回線の傍受があったが、国家情報長官が上院委員会で、NSAは数百万件のアメリカ国民の個人情報の収集などしていないと答弁した。

  


何も止めるものがなく歯止めが利かず、なし崩し的に監視の対象が際限なく大きくなってゆく。



暴露

アメリカ全土や世界中にNSAの施設があり全人類を監視している。買収や強要して企業や外国政府との提携を進める。アメリカ最大手の電話会社AT&Tは、日々3億2000万件の記録を提供。ベライゾンの顧客全員、全通話記録を収集。NSAとFBIは、Microsoft、Yahoo、Google、Facebook、AOL、Skype、Paltalk、YOUTUBE、Apple等のIT企業に協力させ会員情報を収集している、直接サーバーに侵入もする。NSAは効率を上げるため、秘密プログラム「PRISM」という裁判所の許可も企業への要請もなく独自に各社サーバーに侵入できる監視システムを構築している。運用費は年間2000万ドル(約20億円)。

国家の安全に無関係の、メールや電話、デジタル通信、無線通信、センサーが設置されていればアナログ通信、全通話の発信者と発信者情報、写真、動画、チャット、接続ログ、ファイル転送、ビデオ会議、グーグル検索で使用したワード、WEB閲覧履歴など個々人がオンラインでしていることのほぼ全て傍受でき連絡先や移動を時系列で追跡できる。

携帯電話、パソコンなど、電子機器一つひとつに付された個体識別符号であるMACアドレスを監視し行動を追跡できる。

ほとんど全ての人間のやり取りから、コンピューター同士とか他の機器を使った通信から、人間関係を読み取れる。誰かに対して故意に狙わなくても、自動的に巨大データバンクに全て記録されているから、過去の通信も遡って検索できる。

メールアドレス、電話番号、IPアドレス、クレジットカード番号、自分専用のパスワードなどをシステムに入力しデータベースに検索をかけば、現在の情報だけでなく将来の監視もしてくれて何か検知したら即座に通知されるシステムがある。単語を使ったメール内容検索も可能。

メタデータの収集は基本、総合的なメタデータには意味がある。発信者の名前、誰と誰との通話か、電話番号、端末の個体番号、通話の長さと場所と時間など。

クレジットカードを使えばすぐ居場所が分かる。それをメトロカード、携帯電話の位置情報(GPSや基地局情報)と組み合わせれば全行動を把握できる。同じ場所のデータを照会すれば、一緒にいた人物も掌握される。人格や人生まで浮かび上がる。

IP電話は盗聴器として通話中以外も遠隔起動できる。

暗号化をサポートしていないDropbox、Facebook、Google等のサービスには近寄らない方がよい。個人レベルで暗号化ツールを活用すべし。

日本やフランスやイタリア、ギリシャ、メキシコ、インド、韓国、トルコなどの同盟国を含む38カ国の在米大使館の盗聴。

ドイツのメルケル首相ら35人の外国首脳を、長年に渡り盗聴。

ワシントンのEU(欧州連合)代表部への工作のケースでは、暗号機能付きのファクス内に盗聴機と特殊なアンテナが仕組まれ、約90人の職員のパソコン内のデータ全てが見られた。

自分は悪いことをしていないから監視されても大丈夫という人は、今すぐ、盗聴器を自分の電話に取り付け、インターネットで使用している全てのパスワードを政府に引き渡せると言っているのと同じ。

監視対象リストに載れば、米国税関や国境取締局の記録、どの国境を越えて何を買ったか、誰に電話して、どの中継塔を経由して、誰と友達か、書いた記事、訪れたサイト、メールの件名、送信パケット、その全情報が無制限に収集される。

政府の政策に抗議活動をしたら一生付け回される。指紋、網膜スキャン、顔認証、そこら中監視カメラだらけで。

内部告発者の近くにいるだけで、何も知らない家族にまで圧力がかかり危険が及ぶから、それまでのような親しい関係を保持するのは困難になる。

当局は諸外国とも繋がっているから外国にも工作員や協力者がいる。香港にはCIAの支部もある。マフィアを雇うかもしれない。

NSAでは、ドローンによる監視カメラ映像により、事情の分からないどこかの家を24時間、複数のモニターで見られるようになっている。

常に部屋内への侵入や盗撮の危険性がある。パソコンは部屋に放置してはいけない。

パソコンをウイルスに感染させ、パソコンの内容を全て読み取る方法もある。パソコンの持ち主が何をしているか、リアルタイムで全部監視される。

インターネットはアメリカで開発された為、世界中の通信の多くがアメリカの通信会社のサーバーを通過する。そのため、例え日本国内で送受信されたメールでも、アメリカのケーブル上陸地点を通過すれば情報を盗むことができる。

企業のサーバーや商用のソフト、ハードウェアなど正面突破が難しい高度なセキュリティ対策がなされていても、それを迂回するNSA用のバックドアが設けてあったりする。アメリカから輸出されるルーターなどのネットワーク機器を受け取るか途中で押さえるかして、細工して再梱包してから送付したりしている。

秘密鍵で暗号化されて今は解読することができないデータも収集・保存している。将来、量子コンピュータができれば解読できると期待して、世界中の諜報機関が現在の技術では解読できない暗号化されたデータを大量に取得、保管している。

CIAは数字で評価される為、情報の質はお構いなしに、手当たり次第に証言者にサインさせる。ターゲットに酒を飲ませ運転させ、警官に逮捕させ、助ける代わりに言いなりにさせたりする。

NSAは諜報員たちが銀行員を酒に酔わせ強引に情報を引き出したりしている。

NSAの指針「Collect It All」(全て収集せよ)

今大人しくても後でどうするか分からないから全員容疑者扱い。気に入らない奴は誰でもでっち上げ逮捕できる。

友好国と見せかけながら、日本に不公平な要求を押しつけ、インフラを乗っ取るマルウェアを仕込み、日本が同盟国でなくなった場合には、通信システム、送電網、ダム、病院をいつでも停止できるようにしてある。

後の報道により、「Stellar Wind」「Xkeyscore」「Bullrun」といったグーグルマップ、Microsoft Word、メールの送受信先、金融や医療記録などあらゆる情報を傍受できる別の監視プログラムの存在も明らかにされた。




きりなんてない



協力

ウィキリークス、代表のジュリアン・アサンジは自らの亡命を申請してエクアドル大使館に幽閉状態にありながら支援した。航空機や宿泊先、資金、通信、亡命先などの手配など。女性スタッフのサラ・ハリソンは法的相談役として香港からモスクワまでスノーデンに同伴し、彼女はモスクワの空港の乗り継ぎエリアで39日間をスノーデンと過ごし、21ヵ国に対して彼の亡命申請を助け、ロシアが一時的亡命を許可した後もさらに約3ヵ月間共に同国に留まった。

※ハリソンは、母国イギリスでは内部告発に関与した者への締め付けが強まっており、テロ行為として訴追される恐れがあるとして、ドイツに亡命している。その後、Courage Foundation(勇気財団)を創設した。「未来のスノーデンたちのために、法的保護のための資金を集めたり、告発を公的に支援する団体がいることを知ることができるように」

(2013年7月ガーディアン紙はイギリス政府の圧力を受け諜報機関GCHQ立ち合いのもとスノーデンより受け取った情報の入ったHDDを破壊させられた。また、同年8月グリーンウォルドのパートナーはヒースロー空港にて9時間拘束され、所持していた情報の入った電子機器を没収された。)



まとめ

スノーデンは世界で起きている現実を危機感をもって表現した。それは、人々を考えさせたし、内部告発者や被害者を勇気づけた。実際、アメリカを始めとし各国の諜報機関のやり方は想像を絶して汚い。だが大半の人間は、自分が実害を被るまで、自分がどんな世界に住んでいるのか実感を持てない。

彼のリークした機密情報が国家をどのような危険に晒したというのか。個人情報などには配慮がなされており、選ばれしジャーナリストに委ねられたのだ。恣意的に何の犯罪性もない人々を徹底的に監視しているのに、権力にはどんな違法行為であっても黙って従わなければいけないのか。

なぜ高給を得て安定した生活を捨て、自分個人の為には何の得にもならない反逆に及ぶ必然性があるのだろう。一般人には実行する勇気も知恵もないことで自らを犠牲にする人間を、裏切り者などとは呼ばない。そこには自国に対する思いや正義感以外感じない。

世界最強の捜査機関を敵に回すなどということは誰にもしたくない。彼に味方すれば巻き添えを食らう所を、報道関係者、弁護士、活動家、国連や香港及びロシア政府など、体制側の言いなりにはならない猛者たちの支援により、一つの可能性が示されたように思う。

暴露された内容は、誰にとっても到底合点の行くものではない。問題なのは、アメリカ当局の説明責任であり、管理基準及び法整備の方だろう。秘密警察は必ず堕落する。民主主義は、開かれた議論の場において守られる。彼が人々に警鐘を鳴らしたその効果は大きい。


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