3.人生のSOUNDTRACKS/結局、最後はMr.Childrenに戻ってくる

僕がMr.Childrenを最初に好きになったのは小学生の時。
当時Mr.Childrenが好きな友人がいたが、僕はまだ名前しか知らなかった。
「彼が好きなミスチルというのは、どんな曲を歌っているのだろう?」
そう思いつつも、当時はYouTube黎明期だし、サブスクなんて便利なものはない時代だ、
自分からCDを買ったりレンタルしたりしなければ1つのアーティストに深く潜れない時代だった。
当時の僕にとって、Mr.Childrenとは
「頭の片隅にはあるけれど、実体はよくわからない」
そんな存在だった。

そんな時、Mステに彼らが出演すると知り、試しに見てみたのがきっかけだった。
その時披露されたのは『箒星』(後に知ったことだが、箒星のSingle発売日は僕の誕生日だった!)。
箒星はMr.Childrenを好きになるきっかけとなった曲でもあるし、今でも5本の指に入るくらい好きな曲だ。
それ以来ベストアルバムに始まり、色んなアルバムを聴き、どんどん好きになっていった。
幼少期にいつかどこかで聴いて、
「誰が歌っているか知らないけれど、何かいい歌だな」
って思った歌がMr.Childrenだったこともあった。
(当然歌詞の意味は分かっていなかった。なんせ、『償うことさえできずに 今日も痛みを抱き』なのだから。笑 そんな幼稚園児がいたら怖すぎる。笑)

もちろん僕が好きになるずっと前からMr.Childrenはビッグなロックバンドだった訳で、
TVから流れてきていて知らず知らずのうちに聴いたことのある曲もいくつかあっただろう。
それでも、数年前の点と、今(=当時)の点が線で結ばれた感覚はきっとこの時が初めてだった。

それ以来、ずっとMr.Childrenを聴き続けている。
こんなに長期間リスナーでい続けているミュージシャンはMr.Childrenしかいない。
今でもCDや映像作品は買い続けているし(初めて買ったCDはSUPERMARKET FANTASYで、初めて買ったDVDはHOME TOUR 2007だった)、
ファンクラブにもなけなしのお金をはたいて入会した。そしていつの間にかFC歴10年を超えた。
ライブには何回も足を運んだし、
特に学生時代、彼らの歌に何度背中を押され、心を癒されたかわからない。
余談ではあるが、
偶然なのか、はたまた必然なのか、その後中長期で聴き続けているミュージシャンはスピッツやエレカシ等、彼らと同年代が多い。

しかしながら、15年近く絶えずMr.Childrenを中心に聴き続けてきた訳ではなかった。
他のロックバンドに目移りした時は何回もあったし、アイドルをよく聴いていた時もあった。HIP HOPを好んで聴いていた時期もあり、聴く頻度はかなり濃淡があった。

今回のNew Album『SOUNDTRACKS』のリリースも、もちろん楽しみだったが、正直過去のアルバムリリースの時程には心躍らない自分がいた。
以前は我慢できずにすぐ聴いていたTVやラジオ・YouTubeでの初解禁も、聴きたい気持ちが抑えられない!って感じにはならなかった。
アルバムを買うのも十数年来ずっと聴いていたし今回も一応買っておくか……という惰性があったのは正直否めない。
こんなことは初めてのことだった。

しかし今回に関しては、
Single以外、ほぼ前情報を入れなかったのが本当に良かったと思う。
(他のアルバムも然りなのかもしれないが)

『DANCING SHOES』:
今回はどんなアルバムなんだ?と思いつつ軽い気持ちで再生し始めたところで、あの『シーラカンス』を彷彿とさせる不穏なイントロ。
否が応でも、ちゃんと前のめりで聴かなきゃ!って姿勢にさせられた。

『Brand new planet』:
一発で心掴まれた曲。しかしそれはDANCING SHOESからの流れだからこそ、っていうのも大きいのではないかと思う。
DANCING SHOESの不穏な雰囲気を引き摺ったままAメロが始まり、サビで一気に明るくなる際のカタルシスが非常に心地良い。
(僕はこれを「森が一気に開ける感覚」とよく呼んでいる。他に例を挙げれば『何度目の青空か?/乃木坂46』とかだろうか)

『Documentary film』:
Brand new planetとは対照的に、じわじわと心を掴まれた曲。いわばスルメ曲。
最初も「Mr.Childrenらしい良い曲だな」とは思っていたが、世間の評判ほどには印象には残らなかった。
しかし、Brand new planetをひたすら聴いた後にDocumentary filmを聴いていたら、
じわじわと浸食してくるように、次第に深く好きになっていった。
「1番の歌詞をフックに、2番で本当に伝えたいことを書く」というのは桜井さんがしばしば語っている言葉だが、僕は2番の『枯れた花びらがテーブルを汚して』という歌詞が(今のところ)このアルバムで一番好きだ。
寂れた木造の一軒家のキッチン、夕陽が木製の机に置いてある花瓶の花に射し込み、それが濃い影を作っている景色がありありと浮かんでくる。
また、少し前に『日の名残り/カズオ・イシグロ』を読んだからだろうか、個人的にこの描写にイギリス文学の雰囲気を感じた。

『others』『memories』:
Mr.Childrenは「明るい曲調に乗せてネガティブなことを歌う」といった、曲調と歌詞が正反対な曲をしばしば歌っているけれど、
(ネガティブとは少し違うかもだけど、)二曲とも曲調からはまさかそんなことを!と驚くような歌を歌っている。
しかし、少なくともメロディ先行で聴きがちな僕にとって、
それがMr.Childrenをより深く味わわせる要素になっているんだろうなって思う。


またしても余談だが、
特に統計を取ったわけでも、過去の歌詞を見返した訳でもないが、
最近のMr.Childrenは
「自分は平凡で、とりたてて秀でた能力がある存在ではない。それでも……」
といった歌詞が増えてきたように思える。
自分の能力を過信し、一方で些細なことでひどく悩んできた学生時代は
「嫌なことばかりではないさ さあ次の扉をノックしよう」
といった歌詞に背中を押されてきたし、
数年だけでも社会に揉まれ、自分の身の程が分かりつつある今、上記のような歌をリアルタイムで聴ける自分は、
この世に生を受けるタイミングとして最高だったのではないかと思う。


……と、当時感じたことを残しておくことも悪くないだろう、と思い、
この際せっかくなので僕がMr.Childrenを好きになったきっかけも含め、new album『SOUNDTRACKS』について、初めて聴いたときに感じたことを思い出しながら、半年ぶりにnoteを書いてみたのでした。


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