8.塞王の楯
石垣を築く穴太(あのう)衆や、鉄砲の製造する国友衆といった、職人の視点から戦国時代を描いた歴史小説。
正直読むきっかけというのは、私が聴いているラジオのパーソナリティの方が書いた本であるという、ただ1点であった。
(直木賞受賞作ということで、この作者の1作目として相応しいだろうと思ったこともある。)
ただ、本当に素晴らしかった。
何故今まで著者の存在を知らず、読んでこなかったのだろうと思ったほど。
個人的にあまり歴史小説に親しんでこなかったし、ややぶ厚めの本で最初は少し気圧されたものの、
物語のテンポ感がよく、それでいて読み応えもありすんなり読めてしまった。
本作品のテーマは「石垣という楯と、鉄砲という矛、どちらが強いのか?」と、特段新しいものではないのだが、
その過程で描かれるストーリーにいたく感動してしまったのである。
(感動という言葉すらも陳腐に思えてしまうのだが、、、)
本小説の盛り上がりは、言うまでもなく物語中盤以降の大津城をめぐる攻防戦なのだが、
序盤で既に垣間見える、穴太衆の職人達が持つ仕事への矜持だとか、同僚に寄せる絶対的な信頼といった部分に強く心を打たれた。
匡介と玲次の、時に憎まれ口を吐きつつお互い心の底から信頼しきっている感じとかも、羨ましくなる程の関係性だなと思ったり、、、
(こう要約するとどうも薄っぺらく思えてしまうのだが、物語を紡ぐことで
どうしてこうもいたく心を打たれてしまうのか、、、
純粋に物語としても面白いので、興味のある人はぜひ読んでほしい)
また中盤以降のキーパーソンの一人である、大津城主である『京極高次』の描き方もズルいなと思う。笑
ギャップ萌えとはよく言うけれど、あのような書き方をされたらそりゃ好きになっちゃうじゃないか(笑)
あくまで史実に基づいたフィクションなので、人物のイメージを固めすぎてはいけないのは重々承知なのだが、、、
↑ 京極さんのこと好きになっちゃうって話、すごい首肯しながら聴いていた。笑
これまで全く知識がなかったお城についても、少しではあるが興味が湧いたし、著者の他の作品も読んでみたいと思った。
最後に、前述した命題「石垣という楯と、鉄砲という矛、どちらが強いのか?」について、
本作品の中で出した答えは、個人的には好きな答えというか、割と腑に落ちるものと思った。