他大、他学科からの東大数理合格体験記

早稲田大学応用物理学科4年のしもだです
この度、東京大学数理科学研究科の令和7年度入学の修士課程入試に合格したので体験記を残しておきます

・他大→東大
・他学科(物理学科)
・幾何系

の体験記は調べてもあまりヒットしなかった気がするのでニッチな層に刺さればと思います


受験結果

東大数理 合格
東工大数学系 合格
早稲田数学科 合格

手続きミスらなければ東大数理に進学予定です

〜学部3年

応用物理学科なので物理の講義をとって勉強してました
うっすら数理物理をやりたい気持ちが芽生えてたので「こんな煩雑な計算も三年までだ…」と思いながら演習とか解いてました

秋学期からそろそろ院試対策を始めようということで、同じサークルの数学科メンバー2人と一緒に過去問を解き始めました
どこかしらの大学の過去問を一年分週1で解く感じで、東工、名古屋、京大、東大のR2年度入試の共通問題を解いて絶望してました

3年春休み

もう数学科を受験することは決めていたので、とりあえず専門の知識を身につけました
多様体は「トゥー多様体」を二週間ぐらいで5〜23節を読み、演習をときました
代数的トポロジーは2月ぐらいから河澄「トポロジーの基礎」を読み始めて5月ぐらいまでに上巻4.4までと下巻の5.3を読みました
毎週の院試対策会も途中からテーマ毎に5年分解く形式に変わり、東工大の位相H11〜16、東大の線形H16〜20…みたいなセットを時間無制限で解いて、みんなで解答作成をしていました

4年4〜6月

研究室が始まり、毎週Peskinを使って場の量子論のゼミを行なっていました
院試対策会が途中から東大の過去問一年分を時間を測って解いてくる形式に変わりました
ぼく以外にもう1人幾何系の人がいたので、専門はその人と解答作成しました
古い年度は途中で難易度が上がりまともに解答が作れなくなり、新しい年度はmathlogにある藍色日和さんの解答(https://mathlog.info/articles/zLhBwPhItOrD5zEO3psa)に頼りきりでした

5月ぐらいから「大学院への幾何学演習」の多様体とホモロジー群の章だけ解き始めました
院試までに3週ぐらいしときましたが、あんまり効いてきた感じはないです

6月13日

声優の愛美さんのサンシャイン池袋で行われたフリーライブに行きました
この時点でアルバムを聴き込めていなかったので、この日から8月のツアーに向けてアルバムの復習をしました

7月

流石に試問対策をしようと思い、河澄の上巻とトゥーをもう一回読み直しました
外部受験なので試問の情報が体験記に書いてあるふわっとした言及しかなく、勘で対策してました

7/13,14に早稲田の試験がありました
筆記では4完したので試問では志望動機とかしか聞かれないかな〜と思っていました
試問が始まってみると、志望先の先生にそのとき受講していたケーラー多様体の講義の質問をされ、なぜか通常の試問が行われました

受かったけどヒヤヒヤしました

8月4日

愛美さんの豊洲PITで行われたライブに参加しました
メリトクラシーのラスサビ前のクラップができなくて悔しかったです
個人的には愛世界、will、ステラメロウディが全て聴けたのが嬉しすぎました

8月

この辺は過去問の解き直しと試問対策がメインでした

東工大の一週間前から不安になってきたので急いで共通問題の過去問を7年分ぐらい解きました

8月16,18日

東工大の試験がありました
共通問題は全然手応えが無く、2完ちょいとかでした
専門は多様体が今までしたことのないやり方で臨界点を求めたので手応えはなかったですがおそらく一完できてました
トポロジーは頭が回らなかったので(1)(2)ともに胞体分割をして6×12ぐらいのサイズの行列を基本変形した記憶があります
採点者の方には申し訳ないですね

休み時間に席の近くに東大生が集まって話してて、自分の椅子に座りづらくなった時にすごい虚しい気持ちになりました

17日に試問通過者の発表がありました
Twitterの強い人が「絶対落ちてる…」みたいなテンションだったので、「この人がこうなる難易度でこの出来なら通ってるな」となんとなく思っていました

18日の試問はスーツで行きましたが緊張でめちゃくちゃ暑かったです
東大は私服で行こうと決意しました
試問自体はめちゃくちゃ失敗しました
位相の問題でコンパクトではないのにコンパクトと嘘をつき、嘘証明をべらべら喋りました
帰りの電車で気づいて落ち込みながら帰りました

8月〜東大まで

気持ちを切り替えて、ひたすら東大の過去問とトゥーと河澄を見直してました

8月26,27日

東大筆記試験です
1日目の問題の出来はビミョーでした

必答第一問ができなくて焦りまくりでした
必答第二問はなんとか解き切りました
選択は複素関数が積分ではなく解けない、線形は元々解く気ない、微積は(2)がわからなすぎる…ということで自然と位相と微分方程式を解くことに
微分方程式はたまたま覚えていた形だったので解き切れました

体感2完ちょいです

2日目、不思議と緊張はしませんでした
まぁ落ちたら仕方ないよな〜ぐらいで気楽に受けれました

いざ試験が始まって幾何の問題を見てみると

第5問 解けない
第6問 解けない
第7問 解けるかも?
第8問 解けない

の並び

終わった…

絶望的なセットを前にして、少しこの半年間に思いを馳せました

(ライブ楽しかったなぁ…)
(もうちょっと勉強してればなぁ…)
(まぁ基礎が振り返れたし無駄ではなかったなぁ…)
(東工も嘘ついちゃったし落ちてるよな…)
(来年からも早稲田かぁ…)
(バイトどうしようかなぁ…)

しかし、東大の試験は時間に余裕があります
試験に意識を戻しました

とりあえず望みのある問題から

第7問 ホモロジー群の問題
空間の定義式と30分ぐらいにらめっこしたところ、いい感じにMV系列が使える分割を閃いて1時間ぐらいで一完しました

ここで少し安心したのか、幾何以外の問題に目を向ける余裕が生まれました

普段の演習ではこういうとき微分方程式とかを解いていましたが、どれも解き切る自信がない…

一応最後のページまで見てみると解ける問題が!

第17問 物理(エルミート行列)
やるだけ
20分ぐらいで一完しました

あとは第5問のリーマン幾何を適当に解けるところまで解いて、眠ったり祈ったりして過ごしました

結局B問題は2完半でした

8月28日

試問の発表の日です

サークルの溜まり場になってるスペースに行って発表時間まで、物理で院試対策してる人たちと駄弁りながら過ごしました
東工大の時もそうでしたが、試問の結果待ちでは何をしても頭に入らないので映画を見たり娯楽で時間を潰すのがいいです

18時半になって結果を見ると通過していて大喜び

だべっていた友達に「落ちてたらどうリアクションしようかと思ってたよ」と言われました

確かに。

8月29日

試問がありました

そわそわしてたので集合の2時間ぐらい前に来ましたが、僕はその枠の後半だったので、前半の人が終わるまでで結局3時間待機しました

午後になったぐらいに一気に人が来ましたが、ほぼ内部生のようで、待機室は僕と僕以外で空間が分かれていました

外部受験の辛いところです

呼び出しの間隔的には1時間毎だったし、僕の試問も1時間で終わったので、恐らく1人1時間きっかりやるルールになっています

教室に入ると3人がけの机1つにつき1教員がズラーって感じで威圧感が半端ないです

何を言っても肯定も否定もされず、自分の発言がすべて間違っているように感じて苦しかったです

口止めされているので内容についてあまり話せることはありませんが、研究室のゼミの復習をすればよかったなぁという感想です

一応強調しておくと、ぼくは研究室のゼミでは物理学をやっていました

無事に受かって良かったです

受験者数・合格者数

一応データとして人数の変化をまとめておきます
(正確な情報は各大学院のサイトなどを参照してください)

・早稲田
受験者 20人
合格者 15人

・東工大
筆記受験者 99人
試問受験者 46人
合格者 39人

・東大
筆記受験者 145人
試問受験者 61人
合格者 54人

使った教材

共通

・過去問
東大京大はネットを探せば解答が落ちてるのでそれを参考に問題の感覚をつかみました

・杉浦「解析入門I」、「解析演習」
積分と極限の交換、級数の収束など、苦手なところだけ読みました
東工大とかは杉浦そのままな問題とかたまに出てます

・サイエンス社の微分方程式の問題集のどれか
大学の図書館で適当に借りたのでどれかはわかりません
常微分方程式のところだけ印刷して2,3周しました
たまたま本番に効いてきたのでやって良かったです

専門

・「トゥー多様体」
二週間ぐらいでザッと読みました

・河澄「トポロジーの基礎上・下」
2月くらいから4ヶ月くらいかけて上巻8割ぐらいと下巻を少し読みました
演習に解答がついており、問題も院試に出そうな形のものが多かったです
マイヤービートリスの包含写像の議論がしっかりと書かれていて、直感によりすぎない議論がしやすくなりました

・「大学院への幾何学演習」
昔の院試の過去問がたくさん載っている本です
Hopf不変量のところは参考になりました

・Bott-Tu「Differential Forms in Algebraic Topology」
コホモロジーを勉強せずに試験に突入しそうだったので、慌ててde Rham理論で賄おうとしました
一章の途中まで読んで「good coverってなんなんだ…」となって読むのをやめました

研究室見学について

東大数理の場合、院試の前に研究室見学をする必要はありません!
合格後に志望調査があり、そのときに面接という形で研究室見学をすることになるのでその時でいいです!
(友人が志望研究室に見学のメールを送ったところ、院試受験生との試験前の接触は禁止だのなんだの言われてできなかったらしいです)

バイトについて

僕は二月一杯でバイトを辞めて貯金とお小遣いで過ごしました

辞めるの早すぎたなと思います

6月ぐらいまでは普通にやっても良い気がしてます

他学科から受けるかも?な人へ

僕は二月から対策を始めてなんとかなりました

決断のデッドラインは3年の春休みぐらいだと思ってください

早めに院試対策をしておきたい人へ

院試のことなんか意識せず自分がしたい専門的な内容を突き詰めてください

専門外の普段触れない知識なんか四年になったら忘れるし、院試で使うテクニックなんか半年もあれば身につきます

自分は専門性の無さに苦しんでいたので、後悔しないためにも3年生が終わるまでにやりたいことに入門しまくってください

まとめ

A問題の微分方程式、B問題の物理
この二つが問題のセットに無かったら多分受かって無かったです

つまりはほぼ奇跡で受かってます

FFのかなり勉強の進んでいる内部生が筆記落ちていたりします

結局はやれることやってできる問題が出ることを祈る運ゲーです

院試なんかすんな!!!!!

おまけ:試験前よく聴いてた曲

ハロー/時速36km

リンス/Farmhouse

リッケンバッカー/リーガルリリー


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