今作っているもの。楓は美しい木です。
以前、noteでも紹介したことがあるのですが、多段の筆箱の名前で売っていた作品が、少し前までに、全部、売れてしまいました。
それで、再出品のリクエストも来ている事だし、新たに作ることにしました。
今までとはちょっとデザインも変えています。こんな感じ…
何処も変わっていないように見えるかもしれませんが、引き出しの段数を5→4段として、抽斗の深さを14mm→19mmとしています。
この作品、筆記具や画材をまとめて収納する目的で作ったものですが、お客様のコメントから、筆記具以外の小物類の収納に使われているケースが多いように思われます。
そういう意味では、14mmという深さは浅すぎるように思われました。
深くなっても、筆記具を入れるのに困ることは無いですし。
段数を1段減らしたのは、全体のバランスを取る為です。5段では縦長すぎてカッコ悪いですからね。
それと、裏側に台輪を付けることにしました。
滑り止め&ガタツキ防止の為です。面と面が触れ合うと、ガタツキが大きくなりますし、台輪は有った方がカッコも良いと思います。
塗装もクルミ油からガラス塗料に変更します。ガラス塗料だと塗装の強度も高くなりますし。
コストアップにはなってしまいますが、ご理解いただきたいです。_o_
材料は、側板を楓(イタヤカエデ~板屋楓)、前板は黒柿にする予定です。
…
まず、冒頭の写真にあるように、荒材を大雑把に荒木取りします。ここはバンドソーの仕事。
更に厚み方向に割いてから、正確に厚みを揃えます。
通常この作業は、バンドソーで荒木取り→手押しカンナ盤で片面を平らに→自動かんな盤で厚みを揃える…という流れなのですが、
この材料、木目が複雑に入り組んでいるため、機械だと目を弾いて大きく抉れてしまう。
…なので、削れば削るほど、表面は仕上がるどころか凸凹に荒れてしまいます。
こういう板は、機械じゃ歯が立たない(まさに刃が立たん!)ので、しっかり調整した手ガンナの出番となります。
カエデは固いので、削るのも大変です。
機械である程度まで厚みを減らしてから、手ガンナで仕上げようと思っていたのですが、そうもいかず。
今は涼しいから良いですけどね。夏じゃ汗だくです。
今回、使ったのは国産材(東北産)のイタヤカエデですが、同じ楓の仲間で、外国産のハードメイプルという木があります。
当初、そちらを使おうかなとも思ったんですが、やっぱりイタヤカエデで正解でした。
同じ楓なので色と雰囲気は似ていますが、杢が全然違いますね。
イタヤカエデには綺麗な縮杢が出ています。(自分としては、この位の少しあっさり目の縮杢が好みです。)
この杢のせいで、機械が使えないんですけどね…
ハードメイプルは年輪の横縞以外は杢らしいものが見えません。
機械で削れるから楽だけど、面白味も無い。
当然、個体差もあるんですが、
こういうのを見ると、やっぱ国産材は良いなぁ…と思ってしまいます。
もちろん、外材でも素晴らしい杢の木は有るんだけど、和風っぽい作品には、何故か日本の木が似合います。
それに、洋風の家具には外材が似合うようにも思いますね。
そう言っている木工家も多くいらっしゃいます。
なんか不思議ですよね。
自然環境が人に影響を与えるように、
木の持ち味が家具の形を決めるのかも知れません。
……
年輪と杢を混同していらっしゃる方もいるかもしれませんが、両者は似て非なるものです。
年輪は季節が巡る事で、木の成長スピードが変化する事によって形作られます。
夏 ~ 温暖な気温と太陽の光を十分に浴びて活発に光合成を行い、大きく成長する。(夏目:幅が広く柔らかい)
冬 ~ 少ない日光と低い気温でゆっくり成長、もしくは休眠状態に入る。(冬目:幅が狭く硬い)
この繰り返しが年輪となり、木の年齢を知る術ともなります。
対して杢は、成長の偏りや環境から与えられる(場合によっては自身の自重によっても)ストレスによって形作られます。
例えば縮杢の場合、木の組織が何らかの原因で圧縮されたり、押しつぶされたりする時に出来るものなんだそうです。
日本の山は急峻ですし、時に大雨や嵐もあり、東北なら沢山の雪も降るでしょう。
その様な厳しい環境の中で、襲いかかって来る様々なストレスに耐えながら、与えられた場所で、逃げる事も無く、ひたむきに、必死に生きた証… それが杢なんだと思います。
木は自分の生きた証を、自分の中に刻むのですね。
イタヤカエデの杢は美しいです。