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アラカン女子、山へ行く エピソード1

2023年のゴールデンウイーク、
初めて山へ行った。

年末か年始に、放送していた
トランスジャパンアルプスレースに
『ど』が付くほど、はまってしまった私は、
一度でいいから山登りというものを
やってみようと思ってしまったのだ。

靴とバックパックを買い、
決行はゴールデンウイーク、
場所は、近所の山登りが趣味のおじさんが
「うちの犬の散歩コースだから大丈夫だ」と
勧めてくれた
甲州市大和町の「竜門峡」という
遊歩道に決めた。
犬の散歩で行ける山の中にある遊歩道。
初心者にはちょうどいい。
それにしても、一人では心細い。
夫と、娘を誘った。

ジャージ姿に首からタオルを引っかけた夫と、
靴こそスニーカーだが、
そのまま買い物にも行けそうな恰好の娘が
新品の登山靴にバックパック、
「ワークマン女子」でそろえた洋服の
できたて山ガールの私を見て
「そんな重装備で行くところなのか!」と
驚きの声を上げたが、
無視して出発。

わくわくしながら、登山道の入り口につくと
熊が吠えているイラストに
「熊出没」の文字が書かれた黄色い看板が、
熊が出てきたら、
夫を生贄に捧げようと心に決め、
いざ山道へ。

最初の10分で、
これは犬の散歩コースなどではないと
確信した。
これを犬の散歩コースというなら、
おじさんの犬は、
相当、鍛え抜かれた犬に違いない。

気を取り直して、ぐんぐん進んだ。
ここは、渓流沿いに遊歩道があり、
川のせせらぎを聞きながら
ゴールデンウイークだったら、
新緑を楽しめる素敵なコースだ。

が…。

私は、ゼーゼー言いながら、
半端ない汗をかき、必死に歩いた。
ところどころ、見所があり、
足を止めて楽しめばいいのに、
楽しむというより「はい、見た」歩く。
といった調子で、
ここで気を抜いたらもう歩けない。
歩けなくなったら、
夜になる、
熊がきて、
食べられる…。
それは困る、
歩く。

何とか、半分以上来たところで、
一休みすることにした。
重装備の私を、
夫と娘は、
どう思っていたのだろう
「こりゃ、本格的な山登りなんて
絶対無理だな」
「買った靴とバックパックはフリマいきだな」
とか思っていたに違いない。

とにかく生きて帰ろう。

あと少し頑張れば、下るだけだ。
最後のほうに、かなりの上りが待っていた。

娘が先にひょいひょい上がっていき
「早く来なよ!」と、呼んでいた。

娘よ、わかっているけど足が上がらないんだ!
これ以上心拍数が上がったら
心臓が止まりそうなんだ!

「あー、お母さん、すごい階段!」

娘の言葉に
「熊のえさになります」と、
言ってしまいそうだった。

その時、夫が、
「ほら、見てごらん、富士山が見える。」と
指さす方向を見ると、
真っ青な空に、
本当に、美しい富士山が、見えた。
疲れが吹き飛ぶような気がした。
富士山すごい!

この階段を上れば、遊歩道は終わりだ。
最後の力を振り絞って上がっていくと、
そこは、普通の民家の横だった…。

遊歩道終わりと、富士山の感動で、
やっとの思いで上がったのに
民家の軒先にいたおばあさんと
目が合ってしまった。
気まずい空気が流れたような気がするが、
気にしない。
達成感を味わいながら、富士山に目を向けた。
あとは、舗装された道路をひたすら下って
車に戻った。

途中あんなに苦しかったのに
本当に楽しかった。
なんだろう
しかし、犬の散歩コースでこれでは
本格的な山登りなどできない。
ここから、山登りトレーニングを
少しずつ初めて
いろんな山に行くようになった。

今でも、ゼーゼー、ハアハア言いながら
歩いているが
登山を楽しんでいる。
そんな、アラカン女子の山登りを
綴っていきたい。

エピソード1終わり


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