子どもと風呂に入る。ただそれだけ。
夏休みのあいだ、一日2回は風呂にお邪魔していた。午前中に散歩をして大汗をかくと、上の子が「汚れちゃった〜」と汗だくになったシャツを嫌がるし、そうでなくともよく痒がるのでなるべくシャワーで流しつつ、プールみたいにして遊ばせている。
普段、お風呂は夕方に入っているのだが、もはや子どもたちの一日のルーティーンに組み込まれているらしく、Eテレを見終わると「ママー、お風呂はいろー」という声がかかる。昼間入ったからめんどくさい。おっと、心の声が。
さて、心ではめんどくさいと思いながらも自分も入らないとなので、という理由をつけてなんとか風呂場まで体を動かし、それぞれの入浴前の儀式(トイレに行くだけ)を済ませていざ風呂場へ。ちなみに一度だけ沸かし忘れて「ママ、からっぽ」と言われたときはシャワーで済ませようとしたけど結局シャワーを溜めてた。
家庭の風呂なので絶対に先に体を流せ、ということは言っていないが、流石に日焼け止めを塗った日は風呂に入る前に体を洗ってもらう。まあここのところずっとだから、最近の風呂の水は幾分綺麗だとは思う。
子ども二人の体を洗い、髪を洗い、先に風呂に投下。二人で家にある数少ない水遊び用のおもちゃできゃっきゃと遊び、時折ケンカが勃発する横で、私は体と髪を洗う。最近、なかなかシャンプーが泡立たないのでイラっとするんだなこれが。と思いながらわっしわっしと自分の髪を洗っていると。
「ママーみてー」
「みてー」
シャンプーが泡立たない頭に指を突っ込んだまま声のする浴槽のほうを向けば、浴槽の縁から顔だけ出して満面の笑みでこっちをみている子ども2人。振り向いた私の顔が面白かったらしく「あはははは」「にゃはははは」と大騒ぎを始めたと思えば、また肩までお湯に浸かって、顔だけ出して私を見ている。
「ママ、スピツーンみたーい」
「にゃははははは」
スピツーンというのは最近2人が大好きなアニメ映画に出てきたキャラクターの名前である。ちなみにラマという動物だった。
子どもたちは笑っている。あーこの後夕飯の最終仕上げかーと思いながら、2人が危なくないか注意を払いながら自分の体を洗って、お風呂に入る。
「あはははママ見てー」
「ばちゃーん、ばちゃーん!」
湯船の中で遊ぶのに付き合いながら、しばしぼーっとする。
にこにこ笑って2人が遊んでいる。かわいいなぁ。そんなことを呑気に考えていられるのはこの時間と朝、起きる前の寝顔を眺めているときだけだ。他は考えることが盛りだくさんでとても呑気な気分で眺めていられない。この後だって夕飯が終わるまでは怒涛の展開が待っている。
ただ、このぼーっとしている時間がいい。
ぼーっと眺めているあいだ、それぞれの遊びに没頭していたり、おもちゃを取りあって喧嘩したり、私の膝の上に座りに来るのが、たまらなくいい。
子育てがあーだこーだと言われるけど、私はこういうふとしたときに、「子育てって楽しい」と思うのだ。
さて、子どもたちも夏の暑い日に長湯はできないらしく、意外とすぐに「ママ、もう上がる」という声が出る。
これから着替えさせてあれこれやって、あーめんどくせえと思いながら「じゃあ上がろうね〜」と声をかける。
下の子は、タオルで拭いていると「トンネルする〜」とよく言う。タオルを私と二人で頭からかぶって、「みえない、みえないよ」と騒ぐだけだが、それだけで何十秒かはロスする。でも楽しいからいいのである。
その隙に、上の子はパンツもはかずにリビングに走っていくのですかさず後ろから「服を着なさい!」と叫ぶ。バレたか、というような顔をして戻ってくる上の子。
そうして着替えが終われば、一連の入浴儀式は終了し、私は夕飯の最終仕上げに入る。子どもたちはそれぞれ、思いおもいに遊びはじめている。
風呂場なんて狭い空間で、3人密集してわちゃわちゃやる時間は、これから減っていくんだろう。いや、これは結構すぐになくなるのだと思う。だから思わず書き留めたくなった。
いや、スピツーンて言われたもんだから。誰がラマだ。