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landyny
「ノルウェイの森」とスパゲッティ専門店
就職して、ランチタイムに喫茶店で小説を読む人がいる事を知り、憧れて、自分も真似したが、なぜか小説だけは読めなかった。
エッセイは、買って自宅に帰るまでに電車で立ち読みしてしまった事もあるほどスイスイ読めるが、小説は苦痛になる。なんといったらよいか、閉所に閉じ込められたような苦痛。いまだに理由は分からない。
高齢者になった今でこそ、そう諦めているが、40年前はまだそうではなかった。
私も当時大人気だった村上春樹さんの「ノルウェイの森」のハードカバーを買ったのだ。赤と緑を買ったのか、赤だけを買ったのかは、今となってはよく覚えてはいない。ハードカバーを買ったのは、大人になってからは、あの一回きりだったと思う。
そして、休日のランチタイムに、近所に出来たばかりのスパゲッティ専門店に出かけ、お洒落に楽しもうとした。
席について眺めると、壁に沢山のスパゲッティ・メニューの札がかかっていた。
私はその中から一つ注文したが、店員さんに「今日は出来ません」と言われた。ならばと、次のメニューを注文したが、それも「今日は出来ません」と。
特殊っぽいメニューを注文したわけでもないのに・・・と思ったが、(いらだちをかくして)「何ができるの?」と尋ね、出来るものを注文してランチを済ませた。何を食べたのかは覚えていない。
小説は少し読めただけた。
スパゲッティ専門店はやがて閉店した。
今は跡形もない。
あの小説は、後にあちこちの喫茶店で断片的に読んだ。なんとか赤を読めたが、断片的だったせいか、内容はあまり頭に残っていなかった。緑は、読んだのか、それ以前に買ったのかも、よく覚えてはいない。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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