CD時代に作られた新LPの音は・・・
ノラ・ジョーンズさんのデビューアルバム「Come Away with Me」は、2003年にグラミー賞で「最優秀アルバム賞」を受賞しました。また、このアルバムは「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」や「最優秀新人賞」など、多くの賞を受賞しています。
私もその頃にCDを買い求めて以来、お気に入りの1枚になっています。
当時、ラジオで最初に聴いた時は、癒し系のクリーミーなボイスだと思いました。「声の薬」として、つまり2001年に起きた悲劇「9.11」の傷を癒す「声の薬」としても、2003年のグラミー賞受賞は必然だったのかもしれません。世界が求めた救世主としての歌声だったのでしょう。
でも、CDで良く聴けば、意外とハスキーなのです。
それが、このLPになると、(ちょっとオーバーに言えば)尺八のような味のある声に聴こえました。ある意味、CDよりも眼前に迫ってくる音です。(同時に比較試聴したわけではありませんが)1万円台のレコードプレーヤーで聴いても、CDより良い音に聴こえました。
しかし、他の方のレビューには「音が大きい」みたいな感想もありましたので、良い音というよりも、CDよりもリミッターをかけて平均音量を上げているのかもしれません。昔、ジョン・デンバーさんのLPにそれを感じたことがあります。
そして、無音部分だったか・・・少なくとも大音量ではない部分では、ときどきジュルジュルした、小さなノイズも聴こえた気がしました。
ノイズが存在していたとしても、現在のデジタル技術をもってすれば、消すことは容易だったのかもしれませんが、こうして残っているのは、もしかしたら、ロックが歪も音楽の一部にしているように、ノイズはスパイスとして残されたものかもしれないと思っています。
ノラさんの歌声やピアノはクリアに聴こえるので(わが家のレコードプレーヤーは、他のLPでは、中古レコードでも、そんなノイズは出ない事もあり)、過大入力や、カートリッジの性能限界で、歪んでいるわけではないようです。
そして、他の方のレビューにも歪に言及されているものがあるので、やはりこのLPは、そんな傾向があるのでしょうか。
でも、ライブハウスで聴いていると思えば、この音も悪くありません。
ライブに行ってコーフンし、自宅に戻ってそのアーティストのLPを聴くと、なにやら棘を抜いたような紳士淑女的な音に、がっかりした事がある人も多いと思います。
あれには、家庭用の装置と、PA用の装置の差もありましょう。オーディオマニアにはPAスピーカーを自宅に持ち込んでジャズを聴いている方もいらっしゃいます。私はPAのような高能率スピーカーを試したことがありますが、音の棘まで上手に再生してくれました。
例えばジャズギターのCD。ラジカセで聴けばラジカセの音ですが、高能率の比較的大きなスピーカーで聴けば、ライブハウスの眼前、生で聴いているような、等身大のギターが味わえる事があります。
かぶりつきでノラさんを聴いているようなこのLPの音は、家庭用装置の不満を和らげてくれるのだと思います。
9.11のソフトから、現代ハードへの、ノラさんの変身とも言えるのかも。
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