「dpi」という概念 1/3 スキャナを使いこなすために
「dpi」という概念 1998年(昔メモ)
「dpi」は「ドット・パー・インチ」の略である。つまり、「1インチ(2.54センチ)の中にいくつの画素があるか」という考え方である。まあ「画像のキメの細かさ」と理解しても構わない。この数が多いほど高精度な絵や写真が表現できる。一般に印刷に使う写真は350dpiあたりが妥当だと言われている。
ところで、パソコンモニター、例えばMacの場合72dpi相当だという。つまり、印刷に比べるとかなりキメが粗い。勿論モニターにもいろいろあるし、液晶モニターにこの数値はあてはまらない。だが、ホームページを制作する時、特にDTP出身の人間はこの数値を気にする。(しかし、実際はそのうち画素数(ピクセル数)で計算するようになる。モニターの場合設定で表示領域を変えることが出来るので、インチという「絶対値」が意味を持たないことに気付くのである。)
では、なぜ「dpi」の話をしたか。それは、この概念が理解できていないとスキャナが使いこなせないからである。よくスキャナのカタログで「300dpi」とか「600dpi」とか、あるいは「1200×600dpi」とか書いてある。あれは、「数字が多いほど高性能ですよ」ぐらいに考えておけばいいのだが、300dpiだと「1インチの幅を300個の点に分解して読み込めますよ」ということである。
スキャナにはドラムスキャナとフラットベットスキャナという大まかに2種類のタイプがある。家庭やデザイン事務所などに置いてあるのは、だいたいフラットベットスキャナで、コピー機のようにガラス面にスキャンする画像を置いて、下から三色の光をあて、細長いセンサーを垂直に動かして画像を読み取っていくタイプである。センサー自身をモーターで動かすわけだからある程度以上に精度をあげるのは大変なので、印刷などの高精度な分解を要するものには向いてないとされてきた。
一方ドラムスキャナというのは、ガラスの筒の外側に写真を張り付け、これを回転させながら少しずつずらしていく。センサーは固定されて、一点にのみ存在する。こうすると、まるで細く細くリンゴの皮を剥いてゆくように画像を読み取っていくことが出来る。
この方式だと、2700dpiとか3000dpiとかいう無茶苦茶な精度がたたき出せる。「印刷でさえ350dpiあればいいんでしょ?3000dpiなんて何に使うの?」答えは簡単である。小さな写真を物凄く大きく引きのばして使うためである。
300dpiのスキャナは300分の1インチ、つまり2.54×10÷300=0.084667で0.085ミリの大きさまで画像が分解できる。3000dpiなら0.0085ミリ。写真に写った0.0085ミリ(おおよそ髪の毛の10分の1太さ)のものまで、そのまま大きく引き伸ばすことができるようになる。
600dpiの画素は300dpiの半分の大きさ、約0.0423mmである。では、600dpiの解像度で作られた1インチ四方の写真を、半分の300dpiに解像度を落とすとデータ量は何分の一になるでしょうか?
600dpiということは、1インチに点が600個並ぶ。1インチ四方の正方形に、600×600=360000で36万画素が必要と言うことになる。それが、300dpiになると1インチ四方は300×300=90000、9万画素だから、データー量は実に4分の1で済んでしまう。だから同じサイズの画像でも解像度が350dpiと72dpiとでは、24倍もデータ量が変わってくるのである。
つづく