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【44話】ある早朝の電話【人間廃業】

~前回の続き~

バカラの大負けを食らった後、大きく減らしてしまった命よりも大事な僕のお金を戻すのに、それなりに真面目に本業を稼働し、同時期にアングラカジノハウスに対して警察の目が光ってそうという情報もあった為、そのような場所への出入りは控え、コロナとは関係無く無気力活動自粛状態だった。


面白可笑しく回りに話すような話でも無いので、

「バカラでクソスベったわー!笑」

くらいのノリで愚痴る程度に留め、


仲の良いポーカーコミュニティの仲間達と、オンラインゲームに没頭しながら、PC周りの環境を整え、引き籠りの様な生活を送り、バカラの件についての悶々も、取り敢えずは収まった頃だった。


その日はそのコミュニティで遠方からの来客もあり、僕の家に10人程集まりホームパーティーをやっていた。

ポーカーをやらせれば、何処へ出ても恥ずかしくない、トップクラスのプレイヤー(僕を除き)ばかりのメンバーだが、健全なノーレートのパーティーゲームで、多少の酒を嗜みながらわいわいと、なんとも幸せな時間だった。


深夜中を遊び倒し、真冬の朝日も余裕で昇った午前7時頃だったろうか、変わった時間にLINEの通知が鳴った


「いま起きてる?」


本業仲間の僕の相棒だった。


「起きてるよ~クソ遊んでたわ~」と、呑気に返信をすると、間もなく電話がかかってきた。


「ハンパじゃない事になってるんだけど、今話せる?」


声のトーンで真面目な話な事はすぐわかった。


‘‘ハンパじゃない‘‘という単語は普段冗談で使われるので、真面目なトーンで話されると途端に

ああ、ハンパじゃないんだな、、、

って思うのは僕だけだろうか。


一旦「すぐ掛けなおすよ」と電話を切り、解散しかけてたコミュニティのみんなを、タクシーを呼び、全員帰って貰う事にし、電話を折り返した。


電話の内容はなんとも酷い報告だった。


話によると、この夜とある場所でホールデムのキャッシュゲームが行われいたらしい。

その場所で、あるプレイヤーがトランプにガンがついている事をその場でめくった(発見して指摘した)という事だ。

ガン:特定の人のみがわかる、マークや傷

どうやら以前から不信に感じてた本人は、この夜に狙いをつけ、ブラックライトを持ち込み、イカサマを暴いたというのだ。

※一般的な誰でも買えるようなガントランプは特殊なメガネやコンタクトレンズで裏側からそのカードを知る事ができ、そのマークはブラックライトに反応すると言われている。


このハウスは全自動卓やら、何から何まで揃っていて、イカサマを暴いた本人はそのブラックライトを手にハウス中の物を洗ったらしい。

そうすると、出るわ出るわと、麻雀牌から倉庫に閉まってあったバカラ用の使い捨てトランプ花札に至ってまで、全てガンがついていたとの事。



そしてここは、そう、



僕達があのバカラを受けた場所だったのだ




あの頃の記憶が蘇えり、色々な事がフラッシュバックする。

実は僕自身はその場でディーラーを務めた事は一度も無く、現金だけを管理していたので、大負けを食らってはディーラーを務めに向かう仲間に負けた時用の現金を預けるのみに留まっていた。

念の為(?)に仕入れたバカラのトランプが1グロス(144デッキ)自宅に保管してあったので、現金と一緒に初めのうちは何ダースか持たせていた


後に僕の家からトランプの在庫が無くなりかけた頃、

トランプ自体がガサイからという理由でハウスで用意したトランプを使用する事になっていたそうだ。


そういえば途中からトランプがもう仕入れる必要が無いと言われていた事を思い出す


また、当時ディーラー役を勤めていた仲間はこんな事もぼやきで言っていた


「なんかやたらサイドベット取られるんだよね」


サイドベットは、プレイヤーとバンカーに来る2枚のトランプの組み合わせが同じ数字だった時につくペアベット、若しくは前回の記事に書いたバンカーが6になる事にベットするスーパーシックス、あとはプレイヤーとバンカーが引き分けになる事に賭けるタイベットの3種類。


配当はどれも大きい


そしてこの話の後にディーラーから直接聞くまでは知らなかったのだが、通常打ち手はプレイヤーかバンカーかを選んでチップを賭けてからそれぞれのボックスにカードが配られるのがルールだが、ある日を境に、


「カードを配ってからベットさせて欲しい」


と言われ、そのように従っていたというのだ



なんという事だ、全てが繋がった。



トランプが見えていれば本線で儲けるよりサイドベットの方が効率が良いし、ツラ(連勝中のボックスに賭けるバカラの基本?)に逆らうような不自然なベットをする必要も無いだろう


ペアもスーパーシックスも手品のように狙い撃つ事ができる


そう、当時僕達は間違い無く、マトにされていたのだった


奥歯を噛み締めながら電卓を叩いた天文学的な確率なんて、作為されたゴト行為にはなす術なんて無かった


~続く~

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