初心者オイルトリートメント講座 ①
オイルトリートメント(オイルマッサージ)の1つの目的は、リンパを流すことです。
そこで、リンパとリンパマッサージについて解説します。
●リンパってなに?
リンパとは、人体の中にあるリンパに関するいろんな機関の総称です。全身の皮膚に張り巡らされたリンパ管や、その中を流れるリンパ液、そしてそれを循環させるリンパ節。これらは密接に関わりあってリンパ系と呼ばれるシステムを作り上げています。その他にも、人体にはリンパと同じような役割をする脾臓、胸腺、扁桃腺など、リンパに関わりの深い臓器や組織も存在します。
(補足 : リンパ管は静脈血管の横に必ずあり全身に広がっています。最終的には心臓近くで静脈に結合しています)
リンパ系は、血液とはまた異なる「第二の循環器系」として機能しており、主に大きな二つの役割があります。ひとつは、体から不要な老廃物や有害物質を除去する役割。そしてもうひとつは癌細胞、真菌、細菌、ウイルスなどを排除する免疫の役割です。病気に感染したときリンパ節が腫れたり発熱したりするのは細菌をやっつけようとリンパ系がフル稼働している証拠です。リンパにはそれ以外にも、体の組織からいらなくなった組織液を回収して静脈に戻したり、食べ物から吸収された脂質を循環器に運ぶという役割も持っています。
(補足 : 私たちの身体にある一番細い血管を毛細血管と呼びますが、その細い血管の壁には小さな穴が開いていて一日に約20Lの水分が漏れています。この漏れ出る水分がリンパ液です。血液の中の血漿とほぼ同じ成分です。)
このように、リンパは人間の健康に欠かせない大切な役割を持っていて、リンパの循環が正常でなくなると体にいろんな不具合が生じてきます。病気はもちろんのこと、手足のむくみなどについてもリンパは深く関わりあっています。
しかし、リンパの循環には心臓のようなポンプがないため、時に流れが滞ることがあります。そういうときに循環を促すリンパマッサージが必要となるのです。
●リンパ液と循環
リンパ液と血液は、双子の兄弟のようなものです。リンパ液は、もともと血管からわずかずつ滲み出した血漿です。血液は心臓という強力なポンプで全身を循環していますが、リンパ液はポンプではなく、筋肉の収縮などの力でゆっくりと全身を巡っていきます。
半月弁という逆流防止の弁があるので、人が体を動かしているうちに少しずつ送られていくのです。この弁は体内のいろんなところにあって、弁の中にリンパ液が流れ込むとリンパ管が膨らみ、何かの力が加わるとその次の弁を通ってリンパ管を進むわけです。このようにリレー方式でゆっくり全身を巡ってゆくのです。
リンパ液はこうして全身を巡りながら老廃物などを取り込み、それを取り除いてくれるリンパ節に向かいます。リンパマッサージはこのリンパ液の循環を補助し、円滑にするために行うものですから、全身をどのようにリンパ管が巡り、リンパ液はどのように流れているのかを知って、それに沿った形でマッサージしてあげなくてはなりません。
リンパ節は体中にありますが、主なリンパ節は脇の下、膝の後ろ、太股の付け根、おなかなどにあります。そこに向かってリンパ液を押し流してゆくようにマッサージしてゆくわけです。
●リンパ液が滞るわけ
リンパ液が体内を循環する速度は、1分間でわずか30センチ程度という非常にゆっくりしたものです。血液は約1分間で全身を一周してきますから、その差はすごいものです。
リンパ液は人間が体を動かすとき、その筋肉の収縮などによってリンパ管が圧迫され、それをポンプ代わりの動力にして循環します。(逆流しないように弁がいたるところにあります)したがって、運動不足の人はどうしてもリンパの循環が滞りがちになるのです。
リンパの流れが滞ると、リンパ液が流れずに溜まった部分がむくんできます。立ち仕事の人や、一日中椅子に向かって仕事をしている人がむくみがちになるのはそのためです。同じ姿勢を長時間変えずにいることがよくないので、時々休憩をはさんで屈伸運動や体操をしたり、散歩の習慣を持つなどの工夫が必要となります。
● リンパ節
リンパ節とは全身に張り巡らせたリンパ管の合流部分で全身に約800もあります。リンパ節は体に侵入した細菌などをやっつけるリンパ球を生産し、リンパ液が運んできた老廃物をこすフィルターの役割も果たしています。また、主なリンパ節は次のような特徴を持っています。
■耳介(じかい)リンパ節
…耳たぶの後ろのやや下。風邪を引いたときに腫れたりする所。ここが弱ると耳鳴りがしたり、耳の炎症や難聴を引き起こす可能性があります。
■顎窩(がくか)リンパ節
…あごの一番奥にあり、顔から首へ流れるリンパ管が集中しています。ここが弱ると二重あごや顔のむくみ・たるみの原因となります。
■腋窩(えきか)リンパ節
…わきの下にあるリンパ節。ここが弱ると二の腕のたるみや肩こりを起こしやすくなります。
■鎖骨リンパ節
…鎖骨のくぼみ近くにあり、全身を流れたリンパ液が最後に心臓に戻る前に集まる場所で、いちばん汚れたリンパ液が流れ込むところでもあります。慢性的な肩こり・首のこりの原因のほとんどはここの滞りにあるといわれています。
■腸骨リンパ節(腹部リンパ節)
…骨盤の上の内側にあり、ここが弱ると子宮や卵巣など女性の病気の免疫力が低下したり、ヒップ回りが太くなる傾向があります。
■鼠頸(そけい)リンパ節
…太股の付け根にあり、ここが弱ると足のむくみや冷え性、セルライト、ヒップのたるみなどの原因になります。
■膝窩(しっか)リンパ節
…膝の裏側にあり、「第二の心臓」と呼ばれる重要なリンパ節。リンパ液を上に押し上げるために大きな負荷がかかる場所でリンパ液が特に滞りやすい場所です。
●リンパマッサージの手順
原則として、リンパマッサージはリンパ液の流れに沿って心臓から遠い体の末端部から各リンパ節へと皮膚をさすってゆくのが手順です。
リンパ管に圧力をかけてリンパ液を送り出すという考え方です。
リンパマッサージの大きなポイントはさする強さです。「マッサージ」という名前がついているので、皮膚の下の筋肉や脂肪にまで力を加えなくてはいけないような印象を受けますが、リンパマッサージの基本的は「タッチ」です。
リンパ管は皮膚の浅いところに分布しているので、そんなに強く力を加えると、かえってリンパ管を押しつぶしてしまうことになり、効果がないのです。ほんの少し指先に力を加え、皮膚をこする感じでリンパ液を送ってゆくのです。
まずは、リンパを流すことを意識して、心地よさを追求してください。
続く