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雑記59 / ゆめしか家のお絵描き会に参加した話

美術作家の大槻香奈さんプロデュースの半オープンスペース『ゆめしか家』がオープンした。

構想段階から色々お話を伺ったり、食器を寄贈したり、なんのかんのとして大変楽しみにしていた。いよいよ本格オープン、お絵描きワークショップもちょうど休みの日程だったので、息子を連れて参加。

住所非公開で場所はイベント参加者だけに知らされる、この感じも秘密基地感があってワクワクしてしまう。
息子は『こぐま座α』で開催された大槻さんのワークショップにも参加していたので、久々のお絵描き会にウキウキしていた。学校の授業とは違う、特別なお絵描きにモチベーションは高い。

ワークショップの内容は、近年の作品シリーズ『いのりWAVE』を各自で描こう、というもの。
でっかいハート、空と海、夢鹿(変ないきもの)がメインの要素となって画面は構成される。
色鉛筆に水彩絵具、マーカーやら紙やら何もかも画材は準備されており、夢鹿の型紙まである。デコ用のシールまである。
あとはそれぞれお好きにどうぞ、という形。奮い立った我々親子はろくに説明も聞かず、どんどん描き進めた。

決められた要素を使ってどう画面を構成するかを考え、構図や色も「こうかな」というポイントで決めて、描きながら探り探りやる。頭を捻りながらあの手この手で画面が面白くならないか試してみる。
手を動かしながら考えるのが楽しくて、講師である大槻さんに質問することもなくどんどん進めてしまった。隣の息子も同じく。親子。
今思えばもっと描き方のコツを訊いてみたらよかったかもしれないけれど、とりあえずは自分でやってみて、後から気になるところを質問する方が楽しそうだし、感覚も研ぎ澄まされる気がする。

そもそも絵を描くのは苦手だ。思い通りの線がひけず、うまく形が描けない。けれども筆を使って色を塗り重ねていく作業は面白い。あるいは画面のバランスをみながら配置構成を考えるのは非常に楽しいし、脳が刺激される。(これは展示設営の仕事の影響もあると思う)
出来上がった絵を見て「ああやっぱり自分らしい歪さがあるな」と思いつつ、これを修正するのが練習で、同時にこの変さを面白い形でプレゼンする能力が作品には求められるんだよな、という考えも頭をよぎる。
「描く」よりも「作る」というべきプロセスで画面と向き合うと、苦手意識も払拭され楽しさがまさってくる。

横にいた息子は「これは夢の中の絵だから」と『いのりWAVE』や夢鹿の設定を自分なりに解釈して、ハートの周りの夢鹿をぐるぐるといろんな向きで描いていた。我が子ながら天才ではないかと思った。感動した。見込みがある。ぜひ定期的にここに通って鍛えられてほしい。
普段はどちらかといえば(かなり)落ち着きのない息子が長時間じっと絵に向かって描き続けている姿を見るのも嬉しかった。やっぱり向いてるのかもしれない。発見だった。

他の参加者の皆さんが描いた『いのりWAVE』もそれぞれ個性的で、同じモチーフだからこそ浮かび上がる個性もあって。今度参加するときにはお互いに講評しあうのも楽しそうだな、と思ったり。

そしてこうやって自分で手を動かしてみることで、大槻さんのオリジナル『いのりWAVE』がいかに絵画的に凄くて、面白いことをしれっとやってあるかに驚くこととなる。作品の見え方が一層深まり、たくさんの発見があった。

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この数年「アート思考」を標榜するビジネス書がちょっと流行ったり、企業のセミナーでも教養としてのアートが推奨される流れもあるらしい。
とはいえ、それらは「ビジネスマンが教養として身につけておくべきアート」だったり、「価値創造としてのアートマーケットのスキーム」がメインの話だったりもする。新しい何かを立ち上げるためのクリエイティビティの話は割と置いてけぼりとなっている印象もある。
あるいは「ゼロからイチへのクリエイティビティ、自由な発想」みたいな話が多いのか。

とはいえ、僕が思う「アート思考」とは非日常言語領域で表現された何かをしっかりと見て、作品が語ろうとすることと、自分が見出したものごとを、比較しながら柔軟に身体的に考える力のことだ。(ある一面においては。これについてはまたそのうちに書く)
その能力は手を動かしたり、目の前にある物事をしっかり見ながら、求められるあるべき形に整えていく作業をすることで鍛えられる。あるいはそれをやる能力そのものかもしれない。

こうしたワークショップこそ、自由により良く生きるために必要な「アート思考」を身体で学ばせてくれるのではないか、と思う。

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なにせここは家だから、集まって、ゆるやかにそんなことができる。
今月は木ノ戸さんの「石で世界を見てみよう!」ワークショップが開催されるそうで。

ぶっ飛んでて楽しそうで、間違いなく世界を見る目が変わる。世界を見る目が変われば、人生が変わってしまう。凄い。

僕も近日中にお勉強会をゆめしか家で開催できるよう計画中だ。
みんなで集まって遊んで学びましょう。
未来をここで作りましょう。

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