6月下旬以降は違う顔。厚労大臣も認めた最近の新型コロナの特徴とそれを踏まえた戦いの本質。
(2020年8月19日)
皆さんは新型コロナとの戦いの本質をどうお考えだろうか?
全国民のPCR検査? 外出禁止や移動制限?
いずれもNo。
今日(8月19日)、厚労委員会で質問の機会を得て、改めてその本質について探ってみた。
まず、相変わらず報道は、どこどこの県で新規感染者が何人増えた、どこの大学の合宿所でクラスターが発生した。そんな表面的な報道ばかり。では事実はどうだろう。
加藤厚労大臣に示してみた。
たしかに増えている。では死亡者は?
あれ?陽性者の数では遙かに少ない4月頃の方が山が高いよう。
ではグラフを合成してみよう。
やっぱりそうだ。でもタイムラグは?下は左軸を死者数(10人1目盛り)右軸を新規陽性者数(200人1目盛り)としたもの。
やっぱりタイムラグはある。でも、タイムラグはあっても、前回の山と比べればやはり少なそう。
問題はここから。厚労省がわかりにくい形で週に1度公表しているPDFデータには、驚くような最近の新型コロナウイルスの特徴が隠されていた。上のグラフから新規陽性から死亡までは3週間のタイムラグがありそうなので、新規陽性から3週間後に死亡すると仮定して作ったグラフが下記。
6月下旬以降、実は40代以下(10歳未満、10代、20代、30代、40代)では死者は一人もいない。死亡率0%。
50代以上でも50代、60代の死亡率は1%未満。80代の死亡率でさえ13%台まで下がってきているのだ。
このことについて「40代以下は6月下旬以降1人も亡くなっていない。新型コロナはという疾患は世代によって表情が全然違うが、こういった事実を大臣は把握されているか。」と尋ねてみた。
加藤厚労大臣の答えは、
「色々分析をしていただいてありがとうございます。そうした分析を我々自身もしますし、またそれぞれ皆さんが分析できるように、できるだけオープンデータで出させていただいて、また使いやすいような形で提供させていただいて、まさにそれを活用していただいたんだろうというふうに思います。
今お話しがありましたように、6月24日以降8月12日、これちょっと1週間ごとのデータですが、40代以降の死亡者は報告はされていないということは承知しております。また年齢環境が高くなるにつれて死亡者や重症者の割合が高くなる傾向がこれまでも指摘をされているところでありますし、また新型コロナウイルス感染症診療の手引きにおいても、基礎疾患のある患者の死亡リスクが高いということも指摘はされているというところでございます。」
というもの。
やはり、6月下旬以降、新型コロナウイルスは、50代以降(もっといえば70代80代)、そして持病のある方にとってハイリスクな疾患という特徴を示しているのだ。
であれば、これと戦う方法もはっきりとしている。ハイリスク者を守る、そしてハイリスク者を守るための医療システムを守るという戦略がもっとも有効。
その話に入る前にPCR検査について。今日の厚労委員会、私の前に野党の方々が質問をされた。新型コロナウイルス関係の雇用や経済についての質問については頷ける質問であったが、問題は医療面での質問。
ワイドショーと同レベルでPCR検査オンリー。PCR検査さえ拡大すれば全てを解決すると言わんばかりでニューヨークが1日5万件やらフランスは全国民対象で無料だのを持ち出され、PCR検査の拡大を求めておられたが、ニューヨーク州の新規感染者は昨日現在718名、死者12名、フランスは2238名、死者17名。いずれも東京都や日本よりも多い。全国民同時にPCR検査できれば確かにかなり抑え込むことはできるかもしれないが、五月雨式にやれば、漏れたところからまた感染は拡大するただのいたちごっこ。
そして、検査拡大には副作用もある。無症候者や軽症者で医療資源が消費されてしまうのだ。歓楽街への検査拡大で、収容施設がパンクした沖縄県のデニー知事は「「医療資源を重症者に集中させるため、PCR検査を推奨する対象者を集中化させていく必要がある」と説明。患者の濃厚接触者であっても症状がない場合は、医療従事者や高齢者、基礎疾患がある人を除き、原則PCR検査はせずに2週間の健康観察とする方針を示した。」のだ(朝日)。
(ちなみに、ある方など、副大臣の週刊誌ネタを持ち出したり桜を見る会の質問をしたりと、どこが新型コロナ対策に絞った閉会中審査の場?という感じであった。あまりのことに初めて「時間の無駄」というヤジを飛ばしてしまいまったが、あと15分あればもっとわかりやすく政府と議論出来たかと思うと本当に悔しい限り。是非そういった質の側面こそ、国民は見つめていただきたい。)
さて、まとめに入る。
大事なのは、日本の感染状況および病態の事実を直視すること。世界的傾向でもあるが、死亡率・重症率は減少しつつあり、日本の場合このところ50代未満では死亡率はゼロであり、50代以上、特に基礎疾患のある70代80代以上に特にリスクが高い疾患であることを認識することが大事だと思われる。
一方で、移動制限、外出制限で完全に封じ込めることはほぼ不可能。徹底した対策をとっているニュージーランドでさえ感染の再発と拡大があり、なんと輸入物品の冷蔵倉庫の物品からの感染が疑われたほど。この新型コロナを完全に押さえ込むことは不可能なのだ。
経済も4~6月GDPがマイナス27.8%という衝撃的数字が発表されたとおり、緊急事態宣言の再発令などあれば経済は致命的打撃になる。
したがって、緊急事態宣言を云々する前に、この新型コロナとの戦いの原則に立ち返るべき。その原則とは、この新型コロナとの戦いは、ドイツのメルケル首相が3月に国民に呼びかけたように高齢者・持病のある方などリスクある方を守る戦いであり、そのために医療システムを守る戦いであるということ。新規感染者の数に一喜一憂する戦いではないのだ。
そこで私が加藤厚労大臣に提案したのは次の4つ。
・一つ目は重症者用の医療施設を各都道府県に最低一か所、大規模都道府県には2か所以上設ける。
・一番大事なのはPCR検査ではなくて発熱など軽症段階で医療アクセスが容易にできるようになること。これができないから勝武士さんの悲劇なども生まれている。それが相変わらず改善されていない。だから発熱専門外来を各市町村に設けるとか、あるいは各医療機関で工夫して受け入れてもらえるように厚労省が積極的に動くべき。
・高齢者に対する感染防止対策が死者を減らすためには一番肝要なのだから、これについてモデル施設を設けるなどして積極的に国がリードいく。
・最後に、開業医の方からよくある要望だが、今の2類相当という扱いが大変すぎるから5類に下げてくれという話。そこの検討とともに開業医の方の負担、例えば保健所への報告を簡易化するなどして、できるだけハードルを下げて一般の開業医の方が診ていただけるようにする。
加藤厚労大臣
・まず重症者医療施設の話がありました。これは私ども6月19日に医療提供制のサービスについて重症者用の病床や発熱者等に対する外来検査を含め人口規模や地域の感染状況に応じて医療提供体制の整備を進めていただいているところでございます。地域によっては単独で作れない地域もありますから、そこは地域地域に応じて、ただ、その重症者用の病床という概念で取り組んでいただいているというふうに承知しております。
・それから、発熱外来の関係については、いわゆる帰国者接触者外来でありますけれども、現在3694施設ございまして、その内地域外来検査センターとも逐次設置をしていただいております。加えて、今契約等を簡素化する等させていただくことによって、医療機関が積極的にこうした対応をとっていただく。さらにこれからインフルエンザの流行期がございますから、それをすればもっと手厚い対応が必要になってくるというふうに認識をしております。
・それから、高齢者施設等への対応でありますけれども、これはまさしく仰るとおりでありまして、そうした介護施設、あるいは療養型の病院等における感染防止がしっかり図っていけるよう、自主点検、シュミレーションあるいは感染対策マニュアル作成等々の実施、さらには医療機関、薬局、介護施設等における感染拡大防止対策に対する費用助成、こういった施策も行わせていただいて、一番大事な守るべきところ、まさに高齢者やあるいは基礎疾患がある方が多い医療施設、ここにおいてクラスターが発生しないように対応していくことが大変重要だと思っております。
・最後に感染症の指定の話がございましたけれども、これは今の指定感染症の中において取りうべき措置が決められているわけであります。入院措置等々となります。これはやはり現時点では私どもは必要だというふうに考えておりますが、これまでの事例でいえばSARS、MARS等においては状況を踏まえながら随時感染症の指定ランクを変えてきたという実態もあります。ただ、重要なことを今、委員ご指摘がありましたように、医療機関から報告等をいかに簡素化するかということにおいてはハーシス等も利用いただいてですね、IC等を使うことによって、できるだけそうした負担の軽減も併せて図っていきたいというふうに思います。
加藤大臣の答弁を聞いて、少し安心したところもある。マスコミや維新以外の野党が批判するのとは裏腹に方向性が間違ってはいない。PCR検査だけやってればいいと煽る質の低いテレビ局と同レベルの野党とは一線が画されているからだ。
しかし、であればこそ、もっときちんと今の正しい日本における新型コロナウイルスという疾患の姿を堂々と国民に示すべき。
安倍首相が事実上不在の今、加藤厚労大臣がその職責を果たすことを期待したい。