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おじさん、どぶろっくを逆恨む、の巻

2021年12月17日(金)、これは昨日の話。

長い間、いびきがひどいと家族から顰蹙(←書けない漢字その1)をかっていたので、先月、「睡眠外来」に行った。

診察の結果、「自宅」でいびき改善専用の「マシーン」(←マシーンって書きたいだけ)を使って治療していくことになり、半月間、使ってみた。

半月使ってみた結果を検証するための再受診が昨日だった。このクリニックには、2度目の通院ということになる。

クリニックに着いて、しばらく呼ばれるのを待っていると、奥から「青山さーん」と、看護師さん(初対面)からお声がかかった。

前回、初通院した際は、最初からお医者さんの診察だったので、何かなぁ、と思って呼ばれた部屋に行くと、妙齢の看護師さんが、「体重と腹囲、首の太さを測りまーす」と言う。このとき、その小部屋に、その看護師さんと俺の二人だけ。

いびきの改善と「体重や腹囲」が関係するんだ、へー、と思いながら、「はい!」と素直に指示に従って体重計に乗る。このとき、服は全部着たまま。

「はい、じゃ、今度は、腹囲測りますねー。へその位置、自分の指で押さえてくださーい」と言われ、臍(←書けない漢字その2)を服の上から指で押さえていると、看護師さんが良い匂いを振り撒きながら、両手で俺をハグするようにしてメジャーを回してきた。

「ヤバい…これはヤバい」

鼻をくすぐるこの香り…。

俺は彼女にハグし返したくなる衝動を必死に抑えながら、
「今、ハグし返したら、即死だぞ!」という思いと、
「海外生活長かったこと(全然ウソだけど)にして『思わずハグし返しちゃいました、文化の違いですね、テヘペロ』ならギリギリ受け入れてもらえるのでは?」
という思いを頭の中で戦わせていた。
その間、約2秒。

なんとか、ハグしたい衝動を抑え込み、「危なかった…俺よくやった」と一人心の中で安堵して小部屋を出た。
背中に「じゃ、先生に呼ばれるまでロビーでお待ちくださーい」との看護師さんの声を聞きながら。

大人しくロビーに戻ると、数十秒して、すぐに「青山さぁん」と、また、その看護師さんの甘い声。
俺は「あれ? 次はお医者さんじゃないの?」と思いつつ、素直に、そしていそいそと、例の『看護師さんの小部屋』に足早に向かった…。

看護師さんが「前回の来院の際、腹囲を測ってなかったみたいなので、もう一度測りまーす」と言う。

俺は、いや、前回(半月前)測っていようがいまいが、さっきと今とで、腹囲なんて変わらないでしょ!と、心の中で突っ込んだ、が、

看護師さんの、
「今度は、上着を脱いでじかに測りまーす」
の言葉に全てを察した。

「ははーん、そういうことね。」
と心の中でつぶやいた。

数十秒間のうちに腹囲を2回も測る、しかも、理由が「前回測ってないから」って、全然理由にならない理由。
つまり、そこに真の(別の)理由があるのである。

賢明な読者諸兄であればお分かりであろう。

彼女は惚れてしまったのである、俺に。

「しかたねーなー」と思いながら、シャツを脱ぎ、心なしか、ない腹筋に力を込めて彼女と対峙した。見て、俺の腹筋を、と思いながら。

BGMは、もちろん、どぶろっくの「もしかしてだけどー」である。

もしかしてだけど、もしかしてだけど、腹囲を測る相手(つまり俺)に惚れちゃったんじゃないのー?である。

ま、仕方ないよね。このシチュエーション。
誰も、誰一人として、このたった数十秒間で2回も腹囲を測る合理的な理由など見出せないのだから。

惚れた腫れた、しかないのよ、もし理由を捻り出すとしたら。

ということで、晴れて、メジャーを回されたらハグ仕返して、耳元で「LINE教えて」ってささやくだけの状況になりました。


そこに、そこに、です!


さっき、受付で俺の問診票を受け付けた受付嬢がノックもなにもなく、ずかずか入ってきて、
「青山さーん、問診票ここに置きますねー」と。

コンマ数秒のシーンだったが、俺は看護師さんに回しかけた両手を高らかに上に上げ、「はーい」と従順に答えた。受付嬢には、俺がたんに、裸の腰周りを測りやすいようにした行為に見えただろう。

その時の看護師の苦虫を噛み潰したような(ように見える)顔が忘れられない。ひとときのロマンスを演出しようとして、全く予期しない角度から邪魔が入ったのだから当然だろう。

かくして、昼下がりのクリニックで起きかけた『大人の間違い』は、起こらずじまい、で終わった。

世の中には、「合意したんだと思ってた」とか「相手もOKという意思表示をしていた」との「虚しい」言葉を残して「痴漢」もしくは「暴行犯」として罰せられる同輩が無数にいる。
哀しい…、とても哀しい。

いいですか?

誰が、「はい!ハグし返してください。抱きしめてくださーい、おじさん!」って言ったのよ?

冷静になって考えてみようよ、ご同輩。
どぶろっくに踊らされてはいけないのよ。
社会的に抹殺されるんだから。

俺はあの受付嬢のヘルプに助けられて、今があります。あれが無かったら、今頃、「留置」かもしれず、スマホも取り上げられてこんな文章を書けてなかったかもしれない。

人生、なにが決定的な救いになるか分からない。

ひとつだけ言えるとしたら、「もしかしてだけどー」は、「もしかしなくても、妙齢で初対面のお相手がお前に惚れてる可能性は、ナイ!」である。そう自分に言い聞かせて、今日も、なにもない無風の1日を過ごしている。

おわり


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