「会社がつぶれるとき」とはどんなことが起きたときか ~ 経営の優先順位
IBMで働いていた2000年代初め、社内であったコンプライアンス研修に参加した時のこと。当時は雪印などのコンプライアンス問題が世間を騒がせていたこともあって、研修講師(社員)が「コンプライアンスが守られないと会社はつぶれるんです」と息巻いて話をしていました。それに対して、私はかなり冷ややかで、もちろんコンプライアンスは大事だけれど、会社がつぶれる、というところにはかなり距離があるよね、と思ったものです。
会社がつぶれるのは、一義的には資金繰りが回らなくなった瞬間です。資金繰りができている限り、会社はつぶれません。極端な言い方をすれば、コンプライアンスで大問題を起こそうが、巨大なスポンサーがついていれば、資金繰りは回り、会社がつぶれることはありません。(経営陣はお引き取りいただくことなるかも知れませんが。)
逆にいくらコンプライアンスを遵守していても、資金繰りがつかなくなれば会社はアウトです。もちろん、コンプライアンス遵守の姿勢が問われ、収益性や事業の継続性が大きく揺らぐ、ということはありますし、スポンサー企業としてもコンプライアンスが守れない会社にどこまで投資できるか、とう点もあります。だからコンプライアンスと「会社がつぶれる」という現象の間に距離はありますが、全く無関係というわけでもないです。もちろん程度問題はあって、即死となるコンプライアンス問題もあれば、立て直しの時間的猶予のできるコンプライアンス問題もあるわけですが、コンプライアンス研修って多くの場合、この程度問題を問わずに、コンプライアンスが大事、と判で押したようにいうことが多い気がします。
これを踏まえて、私が思っている経営の優先順位です。
重い罪に問われる犯罪行為をしない。会社としても、個人としても立て直しが極めて難しくなり、スポンサーも見つけにくくなります。
資金繰りを確保する。とはいいながら、昔と違い手形取引が少なくなっているので、決済できなくて銀行取引停止、事実上の倒産、というような話はなくなってはいます。
ビジネスモデルを確立し、一定の利益を確保できる目処をつける。こういったものがあれば、スポンサーを探したり、金融機関からの融資を仰ぐことは十分可能になります。ネット系のベンチャーなどの視点では、利益よりユーザー基盤の広がりだったりすることもあるかも知れませんが、価値をつけられる何かを確立する、という意味では似たものではあります。ただ、利益がこれくらい出る、という計算が成り立つ状況の方がスポンサー探しも容易なわけで。
社員や取引先がこの事業を続けていくことにより、利益が得られると思える状況を維持する。
3.と4.はあえて順番をつけていますが、1.や2.ほど明確な優先度の高さの違いではないです。どっちも大事だし、3.の確立のためには4.も重要になってくると思います。
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