Mouthwashingを吐き出せた男。
・革命的デンタルケアゲーム
Mouthwashing、最悪で最高なゲームでした。
最後の有人宇宙貨物船の最期が、人間関係よる最悪な状況の積み重なりによるものというのも皮肉たっぷりで大好き。
・ジミーという男
とにかくこのゲームといえば主人公であるジミーに尽きます。
一周目の中盤からあれ…?こいつ…?となり、その後二周目を始めると
初っ端からエンジン全開で飛ばしてくれていることがわかる。
元々親交があってジミーをポニー運送に誘ったカーリーですら
ジミーには全幅の信頼を寄せることの出来ない部分があったんでしょうね。
良かれと思って通達書の内容を教えたにも関わらず、皆を扇動しつつ悪態を付いたり、事あるごとに船長という立場を羨望されて憎まれ口を叩かれ…
いや…まぁ確かに共同バースデーパーティの真っただ中に解雇通知をお披露目するカーリーもなかなかですが…
・目を逸らさず責任を果たす
新船長として己の中に終始責任を果たせというミッションが芽生えるジミーですが、その責任の果たし方が最高にクソで最高。
目を逸らすと失敗となるミニゲームの途中に、ダイスケの死を表しているであろう花や責任と書かれた真っ赤な紙があるが、目を逸らさないまま後ろに歩いていけばオッケー!クリア!責任果たした!は酷すぎる…
それでいてアーニャに対する大きな責任は果たすつもりがないどころか
終盤にクルーの社員証が所狭しと貼られている通路を進むパートでも
アーニャの社員証だけは隠れて見えないという徹底した逃避っぷり。
それとあんなことしておいた相手との精神鑑定でアニメ絵の馬に欲情なんて答えるのも、自身の精神に問題アリと診断されるのを恐れ、精神鑑定自体を有耶無耶にして逃げようとしての発言だとしたら恐ろしい。
・誰が殺したダイスケくん
ダイスケのことを忌々しい日差しみたいな役立たずと評するスウォンジーのセンスは素晴らしいと思う。というか全体的にスウォンジーの台詞が良い。
ただ気になるのはスウォンジーが斧でジミーに襲い掛かってきた場面。
ダイスケを楽にしてあげたあとのスウォンジーが、どういった流れでジミーに襲い掛かってきたのかが描写されていないので、実はダイスケを殺したのはジミーで、それに激昂したスウォンジーが襲ってきた…みたいな考察も結構あるみたいですね。
自分もジミーの妄想による都合の良い改変自体はあったと思います。
ただダイスケを手に掛けたのはスウォンジーで、ジミーに襲い掛かる部分が妄想なんじゃないかと妄想しています。
目の前でダイスケを殺されたジミーは、次は自分なのではないかと恐れて
コックピットからロープと鉄パイプを持ち出してスウォンジーを無力化。
この自身を守るための行動を、ロープと鉄パイプでバリケードを固めた…
という風に改変してしまったと考えたら少しスッキリしました。
・カーリーへの執着
カーリーはもはやモノ言えぬ証人と化しているのに、事態が悪化するほど
ジミーの中のカーリーが肥大化していくかのような演出がGood…
そんなカーリーの脚を切断したのは、頂点に立ちセメントで足元を固めているカーリーを少しでも低いところに引き摺り下ろしたいという気持ちがあったからかも知れません。あのジミーなら物理的に低くする。
しかし通達書の件や、ジミーのアーニャへのセクハラ精神鑑定に対するなあなあさを見るに、カーリーも決して完璧な人間ではなさそうなんですよね。
なのにそういった部分が見えずにカーリーをどんどん高いところに置いて
執着し、いざ代理船長になったら取り合えずカーリーの真似をして
俺がなんとかする!と見栄を切るものの何も出来ない男それがジミー。
インベントリのからっぽもジミー自身を表してるんじゃないですかね…
その結果、自分とカーリー以外いなくなった状況でどうするのかと思ったら
イマジナリーカーリーに今回の件の罪は被るよ…と言わせる始末。
しかもちゃっかり二人で起こした事故ということにし、謝罪まで脳内で済ませるジミーの徹底っぷりには参るね…。
・口を漱げど汚名は雪げず
ジミーの最期も素晴らしく後味の悪いものでしたね。
さんざん代理船長として暴れまわった挙句、最後の最後でカーリーに
船長の座を押し付け、船長は船と心中しろと言わんばかりに冷凍ポッドに押し込んで自害してしまいましたとさ…
結局ジミーは代理船長としてカーリーの真似をして責任を果たすと言って
なんでもかんでも口に含んだもののそれらを飲み込むこともせず、
誰もいないところで吐き出してスッキリして船長ごっこを辞めたんですね。
それこそこの糖分の多いマウスウォッシュのように殺菌効果なんてなくて
なんとなくスッキリした気分だけ味わっていたのがジミーなんだなと。
助かるかどうかも分からない冷凍ポッドにカーリーを押し込んで
これで責任は果たした!と思い込んでそうなのも実にジミーらしいです。
終わってみれば高評価も頷けるクソ素晴らしいゲームでした。
時系列が頻繁に切り替わる作品にありがちな、切り替わる振れ幅が大きすぎてストレスになるなんていうこともなく、丁度続きが気になる見せ方であったり、あの場面にこう繋がるのか!という気持ちよさがありました。
キャラクターもそれぞれ直接的な性格の描写が少ないのに、台詞や立ち振る舞いで個性がちゃんと出ていてみんな好きです。ジミーすら好きです。
今夜はコンクールFを一杯キメて余韻に浸ります。
このゲームで唯一口の中を綺麗さっぱり出来た男、ジミーの苦しみを祈る。