シン・俳句レッスン138
八月
八月は戦争月間と言われるように、そういう特集が多い季節なのかな?
八月は葉月だと知ったのは今朝の一句から。
これはリズムもいいと思うし、内容もバッチリだと思う。「木阿弥」は「元の木阿弥」という諺があって、その原語の意味は木阿弥という兵隊が死んだ武将の影武者になったけど、成人したので元の自分に戻ったということだという。「木阿弥」から連想される木と葉は縁語であり、八月は葉月で寝返るというのは、寝て過ごすというような、そうしているうちに九月の「夜長月」になったという句である。
蛇笏が似たような句を作っていた。これも季重なりだけどな。「葉月過ぎるか」だから「盆の月」の方が主なのか。「ねむる」というのは「死」も意味しているのかもしれない。しかし、これは写生句ではなく観念の句だ。
蛇笏は最近学びが多いな。
現代俳句
『現代俳句 2024年8月号』から「花鳥諷詠と前衛」。昨日の続きだけど、俳句史。「三協会統合論って何?」
現代俳句協会は賃金(原稿料)の問題から始まった。組合なんだな。初めて知った。一句百円(米10kg)だった。今だと4千円ぐらい。
最初は石田波郷や西東三鬼など36名は新興俳句も伝統俳句も一緒だった。しかし戦後の前衛派の金子兜太や高柳重信は入れてもらえなかった。
その後若い人が大量に入ってきて世代間の対立が生まれる。中村草田男の金子兜太憎し。
政治的分裂が起きる。ここから文壇史になっていく。そもそも俳句教会が3つあったというのが驚きだった。現代俳句協会と伝統俳句協会と俳人協会があって、俳人協会は花鳥諷詠は主張してないが、伝統俳句協会はもろ保守派で政治力もあったという。
伝統俳句協会は「ホトトギス」系なんだな。政治力が強い。
現代俳句協会に加わったのは発表する媒体が欲しかったのと句会に参加してみたいというのがあったから、今のところ現代俳句協会の理念には沿っている気がする。ただ伝統俳句協会といっしょに出来るものなのか?は疑問だ。高齢化問題と資金問題ということだった。こういう資金は行政から出してもらうべきだと思うが行政が保守的になると金と共に口も出してくるからな。
現代俳句協会「俳句入門」
「花鳥諷詠」がアヴァンギャルド(前衛)だと言っているのは、そこに象徴やシュールレアリスムの要素があるからだろう。それが極まると難解俳句とされるので、一般ピープルの目指す道(わかりやすさ)が欲しいというわけのようだ(俵万智系の口語短歌の流れとか、夏井いつきの俳句道場的な運動か)。
百人一句
やっと五十句だけど重なっている人がいるかも。意外に一人一句は難しかった。過去レッスンを調べて出てきた句。
41 木がらしや目刺にのこる海のいろ 芥川竜之介
38「馬の目に雪ふり湾をひたぬらす 佐藤鬼房」に似ているけど、芥川のほうが最初に好きになった。目刺と海と木がらしのあやういバランスの世界。
42 平凡に咲ける朝顔の花を愛す 日野草城
日野草城は「ミヤコホテル」で新婚初夜の句を読んだ人。平凡な句だけどその凡庸を通り越した俳人という感じか。誰もやらなかったことをするのは勇気があるし、凄いことだ。
43 煙突にのぞかれて日々死にきれず 林田紀音夫
林田紀音夫は「煙突」の句を多く作っていた。戦後を代表する建物?かもしれない。星野高士が特選にしたという客観写生。それよりも俳諧性だよな。俳諧性がない俳句は駄目だと思う。
44 菫程な小さき人に生れたし 夏目漱石
漱石の俳句はいまいち芥川より響いて来ないと思ってしまうのだがこれは俳諧味があるかな。
45 遠火事の玻璃にひとすじ鳥の糞(まり) 相子智恵
「玻璃」はガラス。火事と鳥の糞を同時みている。これ無季俳句かな。NHK俳句で。この人は若い人だった。
46 外に出よ触るるばかりの春の月 中村汀女
星野立子と同時期に出てきた4Tだった。昭和二十一年の作だから戦後だった。
47 山上憶良を鹿の顔に見き 後藤夜半
ホトトギス系の人だがこのユーモアがいい。そう言われるとなんとなく、憶良って鹿顔だよなとか。猪顔の人麻呂とか、いろいろ想像膨らむ。
48 蟷螂の斧をしづかにしづかに振る 山口青邨
これも写生よりイメージの句だと思う。「しづかに」を重ねることで見えない二刃目があるような必殺技のように感じる。螳螂拳。お前の首は飛んでいるとか。
49 片眉をちよとつり上げ蜜柑むく 竹田小時
竹田小時は芸者俳人であり、これは男を見るときの観察眼(写生句)と言えるかも。
50 菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか 櫂未知子
逆に櫂未知子は体育会系なのか?有季定型ではない生徒は見捨てられるような。
NHK俳句
比喩は俳句だけじゃなく作文の基本だけど、けっこう難しい。それはものの本質をコトバに出来ないから比喩に頼ることになり、基本的にズレているんだけど、比喩がバッチリ決まるということは共感を得るということなのか?比喩は基本テクニックだと思うのだが。
佐藤信夫『レトリック感覚』とかいい本だった。
題詠。「プール」プールに纏わる泳ぐとかオリンピックというような類想が多いという。「プール」という入れ物そのものを詠む。
これが上手かった。