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シン・俳句レッスン154
秋の雨(秋の長雨)
今日も雨予報。秋雨前線とか。十月は晴れの得意日じゃなかったのか?季節がズレているからだろうか?もともと特異日でもなかった(漢字も違った。そしてそれは10/10に言われたことだった)。
こういうときはジャズですね。「降っても晴れても」という名曲があった。
秋の雨 しづかに午前 おはりけり 日野草城
何もしなで一日が終わる予感が。
気まぐれな降っても晴れても秋の雨 宿仮
慣用句は駄目なんだ。
気まぐれな別れたりくっついたり秋の雨 宿仮
これも慣用句かな。対句表現でいいんだな
気まぐれな「薔薇と死」をきく秋の雨 宿仮
「薔薇と死」はキース・ジャレット『デス&フラワー』できくは菊の掛詞。
現代俳句
今日は雑文。現代俳句はweb版の方が充実していた。web版は無料で会員以外でも読めるのだった。前はパスワードを設けて会員意外に読めないようにしていたのだが。
現代俳句評論賞特集も会報誌では受賞作一作しか出てないのだが佳作作品も掲載されている。石川夏山氏はネット句会の仲間だった。今月の句会でも特選で選んだのだが、それほど支持を得られなかった。異端の人なのかもしれない。石原吉郎をテーマにするのも異端的なものを感じる(詩人としては有名だが俳人でもあったのだ。詩と俳句の境界を超えて論じている)。選評に自分の言葉でなく石原吉郎の言葉や他者の言葉が多いとあったが、石原吉郎の俳句を読んでみたいと思わせたことで、この評論は価値があるのだ。それまで石原吉郎の俳句どころか詩人としてもそれほど一般的には有名ではないのだから(詩の世界では超有名だ)。石原吉郎の特異性はシベリア抑留者として言葉を失ったあとに詩を書いた人だった。日本のパウル・ツェランとも言える。
その言葉の回復に詩よりも俳句の定型が効果があったということだ。これは俳句の定型とは何か?を考えるヒントになるかもしれない。そういうところまで読んでいるのか?ありきたりな俳人を持ってくればいいというもんでもないだろうと思うのであった。
囚徒われライラックより十歩隔つ 石原吉郎
収容所時代の俳句だが、「囚徒われ」というのは季語に囚われた俳人かもしれない。「ライラック」という花が季語代わりで(当時は季語だったのか?「リラ冷え」が季語として使われたのが1960年なのだ)。そう「十歩隔つ」の距離感なのかもしれない。石原吉郎が前衛俳句や境涯俳句に惹かれたのはわかるような気がする。また俳人として認知されないのも。
石川夏山「詩人石原吉郎と俳句 ‐実存と定型‐」はかなり読み応えがある。
雑文としては、他に「鎌倉吟行会」のレポートが吟行の様子とか伺えて面白い(句会もあった)。動画もあった。
そんな感じ。次回は句評をやりたい。
大峯あきら
なんとなくこの人は伝統俳句系のような気がする。
炎天の富士となりつつありしかな 大峯あきら
大景を一つ決めそこに季語と対峙させる、余分なことばはない。文語「ありしかな」は富士が「なりつつ」と生成しているようにあるということだ。「かな」は詠嘆。
水餅やひのきの中も月はさす 大峯あきら
「水餅」はカビが生えないように都外に水に漬けたのか?その木臼(ひのき)の中に月が浮かぶのだ。水面に月、水中に餅。丸餅だろうか?日本的な風俗と季節感を捉えた名句。
鳥飛んで王座を遺す山の秋 大峯あきら
「鳥」は象徴で、死者を運ぶというような意味も秋の山が寝床だという意味もあるのだろう。王座とあるから古代から崇められいる王の山(墓)だ。そこはすでに秋という錦の世界という雅さ。この人は雅の世界で俗がないな。
岡田日郎
山俳句の人かな。
雪溪の白光見ゆる晴るる夜は 岡田日郎
対句表現なのか?下五の夜が唐突。
月光を重しとこぼす芭蕉ども 岡田日郎
この人月光の句が多い。「月光仮面」か?山登りを単独者の修行僧のように捉えているのだと思う。だから芭蕉の俳諧は軽いのだ。
仏法僧岩山更けて月のぞく 岡田日郎
『仏法僧」は鳥だがここでは狭い意味で使われいる。森の中で夜間「ブッ・ポウ・ソウ」と聞こえ、仏・法・僧の三宝を象徴するということか(ウィキペディア調べ)?もう一つ飛躍が欲しいような。
加藤郁乎
加藤郁乎は俳諧の俳人。俳句は表現であり、その中に技法(テクニック)も含まれるとして江戸俳句を研究する。俳諧(徘徊)性。それが『球躰感覚』という歌集だ。高柳重信の方法論(俳句はなぜ一行詩でなければならないのか?)の後にいや、一行詩なのだがそれは巡回しているのよ、と言ってみせたかとか。その手法をとくとご覧あれ。
六月や鶴いまはなし鶴を折る 加藤郁乎
シジフォスの手にだんまりの囀りや 加藤郁乎
啄木鳥告げる 一二音階の無電… 加藤郁乎