宮下恵茉(2023)『9時半までのシンデレラ』講談社
母に怒られないように、いいこで生きてきた莉子。
じぶんらしさをもてず、学校でも、こころから友だちとおもえるひとと出会えずにいた。
塾に通うことになったときも、クラスメイトがいないところを選んだ。
ある日の塾帰り、目を引く女の子を見かける。
すぐに帰らなければ、母からとがめられる、という考えがよぎるも、おもわず追いかけずにはいられなかった。
女の子が行きついたのは、パレット広場だった。
その広場には、莉子の母から近づいてはいけない、と言われそうな子どもたちが集まっていた。
莉子が追いかけてきた女の子は、実は莉子のクラスメイトだった。
澪と名乗ったその女の子は、学校に来ていないのだった。
澪は学校に行かず、図書館でじぶんが興味がある本を読んで毎日すごしていた。
莉子は、どんどん澪にひかれていく。
塾の帰りに必ずパレット広場に寄り、澪と話すようになった。澪がいるかもしれない、とおもい、図書館にも行くようになった。
莉子と澪はすこしずつ仲良くなっていく。
しかし、莉子は母とうまくいっていないことを澪には話さなかった。澪も、じぶんの家庭のことは莉子に話すことはなかった。
そして、とうとう母に塾帰りの寄り道がばれてしまう。
母とぶつかる莉子は、お金持ちで自由な澪に、じぶんのきもちはわからない、と澪とも向き合えなくなってしまう。
しかし、学校に行かず、夜中にパレット広場へ出てくる澪も、決してただのびのび生活していたわけではなかった。
傷を抱えた少女たちが、それでも生きていこうと手を取り合う物語。